食事摂取面の比較をしてみると、大正時代に比べると、昭和初年は穀物類、イモ類の消費量の減少と、果実、牛乳、乳製品、肉類、魚介類、油・油脂、砂糖の増加があった。1960年代には各種食品が増加し、1970年代に入り、動物性食品が全体的に急増、果物も野菜も増加し、基準的な栄養素摂取レベルに達した。
http://www.hosp.mie-u.ac.jp/epidemiology/_src/1434/AokiVol3_pc.pdf
こういった栄養学的な変遷とはかかわらず、日本人の栄養失調は戦中・戦後の食事事情の悪化あるものの、江戸時代や明治期の人が体格的には低身長ではあったものの、非健康であったとか、低栄養であった、体力・持久力不足であったかというとそういったことはなく、身体を動かしていない現代の方が、逆に悪化していると考えられる。
最低限の蛋白摂取量が維持され、摂取総カロリーが維持されていれば、筋肉量や筋力の低下は来ないといえる。
平成29年の国民健康・栄養調査結果を年齢別に蛋白質摂取源を見てみると、若年者では肉類が多いが、高齢者では魚介類が多い。蛋白摂取量も80歳未満では70gを超えているし、80歳以上でも65gとそれなりに取っている。
栄養素等摂取量の状況 エネルギー、たんぱく質、脂質及び炭水化物摂取量の平均値 (20歳以上、性・年齢階級別) 第1部
1876〜1905(明治9〜38)年にかけて日本に滞在していたドイツの内科医であるエルウィン・フォン・ベルツは、菜食者と肉食者のどちらが持久運動に優れているかを調べるために、22歳と25歳の俥夫を選び人力車を引かせる「人力車の俥夫の走力実験」を行った。
最初は、白米、イモ、大麦、粟などといった日本古来からの食べ物で、脂肪と蛋白質は少ないが、デンプンの量はかなり多いものであった。この条件下で80?のベルツが乗った人力車を毎日40km三週間にわたって引かせ、3週間後に2人の体重を測った。1人は体重の増減が無く、もう1人は半ポンド増えていた。そして次に、2人に牛肉を与え、デンプンの量を減らして引かせてみたところ、3日後には、非常に疲れが出て肉食では走れないから肉の量を減らしてくれるように頼まれ、穀類食の量が増えたところ再び元気になり実験後の体重は、1人は不変であり、1人は半ポンド減少していた。
また、ベルツは東京から日光まで110kmの路程を人力車で旅行したが、午後6時に東京を出発し、午前8時に日光に到着した。14時間の同定で馬を6度変えているが、俥夫はたった一人でこの人力車を引き、主に摂取していた食べ物は植物性のものであった。
また、ベルツは著書の中でアメリカの大学で行われた『肉食と耐久力』に関する実験結果を紹介している。
「腕を支える力」について、肉常食者は15人のうち2人しか15分以上腕をのばしたままの姿勢に耐えられなかったが、肉を食べない人の場合は32人中23人がこれに耐えられた。さらに時間を30分に延長すると、肉小食者は1人も耐えられず、肉を食べない人は15人も成功し、その内9人は1時間以上継続可能であり、1人は3時間を突破していた。
スクワットに関しても、肉常食者は300回以上できたものは非常に少なく、実験終了後録に歩くことが出来なかったが、肉を食べないものは、1800回もやることができ、実験終了後も疲れを見せないどころか、2400回を超えるものが数人おり、1人は5000回まで達していた。肉食をしない人たちは特別な運動の訓練もスポーツも何一つ体験したことのない一般人であったという。
https://www.daitouryu.com/syokuyou/contents/hajime/hajime10.html
カーボ・ローディング(Carbohydrate Loading):スポーツなどの場面で、運動エネルギーとなるグリコーゲンを通常より多く体に貯蔵するための運動量の調節および栄養摂取法
死亡は重さあたりにすると約2倍のエネルギー量を貯蔵できるが、即効的な利用に乏しく、多くのスポーツではエネルギー源として望ましくない。グリコーゲンはエネルギーとしての分解が容易で即効性があり、スポーツにおいては大変有効なエネルギー源であるが、貯蔵できるのは主に肝臓と骨格筋で、一般人ではわずかな量である。通常よりグリコーゲンを多く保持すると運動に必要なエネルギーの枯渇を起こしにくく、運動できる回数や運動時間を増大させることができる。マラソンや自転車ロードレース、スキーのクロスカントリーなどの高い持久運動を継続するスポーツでは、エネルギーを大量に消費する、ためグリコーゲンの貯蔵量は成績に大きな影響を及ぼす。
マラソンなどで、大会の数日前からトレーニングの強度を落とし、休日日も設けるなどして、十分に体力を回復させると大会で疲れが出にくくなり、練習を続けた場合に比べると驚くほど効成績になる場合がある。これは、休息によって、日ごろのトレーニングで傷んだ筋繊維が修復されるとともに、体内で枯渇気味になっていたグリコーゲンが十分に蓄積されるため、身体が本来の能力を発揮できるようになるからである。
体内に蓄積したグリコーゲンをほとんど消費し枯渇した場合、通常1日程度では十分に回復できず、3日程度は必要になるので、この間は著しいパワー・持久力不足となる。
低蛋白食事療法の原則
1. 体重をあまり考えない
2. 体重を変えずに蛋白質摂取量を減らす(肥満の人でない場合)
蛋白摂取制限量の基本的な位置づけ
70g:人並み
50g:明治以前の日本人の常食
40g:努力が必要、一定の効果がみられる
30g:強い決心が必要、しかし透析に至るまでの期間をかなり稼げる
Vit Kなどビタミンの補充を忘れずに行うことが必要。
よりタンパク制限を効果的にするために:リン含有量の少ない植物性蛋白を主体とした食事にする
参考文献: