2014年8月21日 院内説明会
演題「65歳以上の肺炎予防のために プレベナー13」
演者:ファイザーMRさん
内容及び補足「
日本人の死因別に見た死亡率の年次推移において肺炎が脳血管疾患を抜いて第三位になってきた。
特に高齢者における死亡原因としては、肺炎は重要な疾患である。
脳血管疾患などで寝たきりになると死亡原因の1〜2位に上昇してくる。
そういった基礎疾患がない、市中肺炎においても、年齢別入院受療率を見てみると海外のデータではあるが、65歳を超えると急激に増加してくる。
その市中肺炎における原因微生物を見てみると、倉敷中央病院のデータであるが、1/3近くが肺炎球菌による肺炎である。
この肺炎球菌による感染症を年齢別に見てみると、幼少期と高齢者において頻度が多いことが大きな問題である。
この肺炎球菌を顕微鏡で見てみるとメチレンブルーで濃青色に染まる菌体の外側にハローを形成している莢膜があり、菌を攻撃する多核白血球の貪食作用に強い抵抗性を発揮する。
この部分を拡大してみてみると下図のようになる。
この莢膜は血清学的に93のタイプが報告されていて、この莢膜の存在が、菌を攻撃する初期の反応のひとつである補体の菌への付着が阻害されるため、ヒト多核白血球の貪食作用に抵抗性を示し、肺炎球菌感染症が短時間のうちに重症化する原因のひとつと考えられている。
この莢膜型は21のグループに属する68種類と、25の単一型の計93型に分類される。
この莢膜の型が抗原となり、免疫が獲得される。ある莢膜型の肺炎球菌に感染した後は、同じ型の菌には感染し辛くなるが、他の莢膜型の菌には免疫が獲得されていないので、感染防御には役立たない。したがって、あらかじめ多くの莢膜型の肺炎球菌に対する免疫力を高めておくとこが必要であり、その目的のために肺炎球菌ワクチンが開発された。
現在日本で使用可能なものはプレベナーとニューモバックスがある。
この両製品の違いは、まずカバーできる菌の種類が異なることが挙げられる。
今までプレベナー(PCV)13の発売まではプレベナー(PCV)7が使用されていて、小児のみに使用されていた。小児でのデータしか現時点ではないが、予防できる菌種は流行しなくなるため、流行る菌株は年毎に変化してくるが、PCV7のカバー率は75.4%から71.8%と変化している。PCV13だと約90%が88.0%へと変化している。
一方ニューモバックス(PPV23)の方は、逆に小児での使用が許可されていないため、成人でのデータとなるが、85.4%のカバー率が82.7%に変化している。
その他の違いとしては、PPV23は肺炎球菌の莢膜のポリサッカライド(多糖体)を生成したものであり、蛋白質を抗原としていないので、T細胞による免疫は活性化せず、メモリーB細胞を誘導できないので、肺炎球菌感染が起こっても、免疫力が強化されるブースター効果がみられないので、抗体価が低下してくる5年後には、再接種が必要となる。
その他、効果としても、肺炎球菌の鼻やのどの粘膜への定着を阻害する効果が得られず、上気道炎、中耳炎、副鼻腔炎などの予防効果が期待できないし、予防効果はないと言っている専門家もいる。
一方PCV13は多糖体に蛋白質を人工的に結合して作ったもので、ブースター効果が理論上期待できし、PCV13がカバーしている肺炎球菌の型の鼻や咽頭粘膜への定着を阻害し、上気道炎や中耳炎、副鼻腔炎の発症を予防する効果もあると考えられている。
http://strep.umin.jp/pneumococcus/
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/pneumococci1.html
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0891552012001274
肺炎球菌の感染を考えてみよう。人間の体の皮膚や粘膜には種々の菌が存在している。ただ菌が存在しているのみで感染症を発症することは通常はない。保育園児の上咽頭には20〜40%、成人で10%程度肺炎球菌が常在しているといわれている。
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM1311_01.pdf
健常な上道上皮には、異物が存在すると粘液を分泌したり線毛上皮の動きで気道上部に排出する機能がある。RSV、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルスといった、上気道に感染しやすいウイルスの感染により線毛上皮が損傷を受けると、病原性を持つ菌が定着・増殖する。その菌がその部分から組織に侵入すると、上気道炎、下気道へ落下すると気管支炎や肺炎、耳管を通じて中耳へ侵入すると急性中耳炎などを引き起こす。時に血液中へ侵入すれば、菌血症・敗血症、髄液中へ侵入すれば化膿性髄膜炎となる。
肺炎球菌感染の頻度を見てみると小児と成人では異なり、小児では化膿性髄膜炎や敗血症が多く、成人例では肺炎が多いが、それでもほかの菌とは異なり、灰血症や化膿性髄膜炎の頻度が結構ある。
予後については、小児は良く、成人例においては死亡例が22%を超え、後遺症を認める人も含めると30%にもなる。
予後の差を作っている一番大きな要素は基礎疾患の有無である。
それでは、成人の場合どう言った基礎疾患が認められるのであろうか?腫瘍を認めてその治療を受けられている人、糖尿病患者、心疾患患者、肝胆膵疾患、脳血管障害が高頻度である。
死亡例は入院当初が多く、中央値は2日であり、より重篤化している人が少なくないことがわかる。
有効な抗生剤が効果を示すと菌が溶解したり(図B,C)、変形(図D)してくる。
ワクチン接種の効果を確認する方法として小児においては、特異的な抗体価が上昇したかどうかで判定するが、高齢者においては、抗体価がある程度あっても、白血球による殺菌作用が低下していれば、感染症が発症してしまうので、補体系の活性を含めた評価が重要である。そこでよくつかわれる評価法としてオプソニン化貪食活性(OPA)がある。
PCV13が高齢者に使用されるようになる基礎試験として、OPAを評価方法としてPPV23との比較試験が行われた。
日本人の65歳以上で摂取一か月後における12の共通血清型でPPV23との比較で非劣性(ほとんどが優位な結果)が示された。
副作用の観点からも局所の反応は、PCV13のほうがPPV23よりも強かった(免疫獲得能が強い?)が、全身反応では有意な差を認めなかった。
また肺炎球菌ワクチン未接種者を対象とした3〜4年間隔での逐次節酒の比較試験も行われ、非劣性が示された。
http://strep.umin.jp/pneumococcus/index.html
http://kanri.nkdesk.com/hifuka/yougo10.php
http://www.kansensho.or.jp/guidelines/pdf/pneumococcus_vaccine.pdf