2013年7月5日 けいゆう病院
演題「C型肝炎治療の現状と今後の展望~肝がん進展抑制と次世代の治療~」
演者:東京都医科歯科大学消化器内科大学院肝臓病態制御学講座教授 朝比奈靖浩先生
内容及び補足(含質疑応答)「2013年5月に日本肝臓学会から
C型肝炎治療ガイドラインが出された。
日本人の死亡統計で、肝癌は男性で第4位、女性で第5位であり、地域的には大阪などの西日本に多く東日本で少ない傾向にある(その中でも東京や神奈川などは多い)。
肝癌の原因としては、近年日本においては、C型肝炎が72.7%、B型肝炎が10.4%、NASH10.2%、アルコール性が5.5%といった割合になっている。アジアでは圧倒的にB型肝炎が多く、C型肝炎が多いのは、日本に特徴的であり、また、他の国に比べても、C型肝炎の患者さんの年齢分布がかなり高齢である。
しかし、近年若年者の間でも、新規のC型肝炎患者の発症が少なくない。
その原因として、国立感染症研究所のデーターでは、性交渉のみでなく、薬剤の静脈内投与(麻薬の注射)、カミソリ、ピアス、入れ墨などが原因として挙げられている。
治療薬も第一世代のプロテアーゼ阻害薬であるテラプレビルが2011年11月にゲノタイプ1型抗ウイルス量例に対して使用可能となり、テラプレビル+Peg-IFNα2b+リバビリンの三剤併用療法において、初回治療のSVR(Sustained virological response:治療終了後24 週で血中HCV RNA 感度以下)はテラプレビルが使われていなかった時の40~50%が70%にまで向上した。しかし、高度な貧血の進行や重篤な皮膚病変の出現など副作用も増加した。副作用が少ないと考えられている第二世代のプロテアーゼ阻害剤(TMC43514、MK700915、BI-201335)とPeg-IFN+リバビリンの併用療法やIFNなしでプロテアーゼ阻害剤/NS5A阻害剤の内服剤による抗ウイルス療法などの臨床試験が進んでいて、SVR率が80%以上との報告がなされている。治療の反応性や、副作用の出現率などを考慮すると次のような理治療のガイドラインとなる。
ウイルスが陰性化しても、GPTが高値例やαFPが6を超える症例においては肝癌の発症が見られるので、定期的な経過観察や治療による介入が望ましいと考えられる。逆にウイルスが排除できなくても、αFPやGPTが低値であれば、肝癌の発症率は低いので、そういった治療を行うことも一考である。」