高齢者におけるC型肝炎治療の現状 中馬 誠 先生
2017-07-31 08:10
川村内科診療所
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2017年7月27日 
演題「高齢者におけるC型肝炎治療の現状」
演者:横浜市立大学附属市民総合医療センター 消化器病センター准教授 中馬 誠 先生
場所: 横浜ローズホテル
内容及び補足「
C型肝炎の疫学:
C型肝炎は、HCV感染後急性肝炎となり、その70〜80%が慢性化し、その内80%が肝硬変となり、年に7〜8%の人が肝細胞癌を発症する経過を取っていた。

治療を受けている人の推計は1200000万人と推計されている。
肝癌による死亡者数は2003年頃の年3万5千人をピークに、現在は年3万人前後にまで減少してきた。肝癌の原因疾患の第一は、依然C型肝炎ウイルスであるが、その頻度は減少してきており2011年に発表された九州地区の肝癌の調査では、68%にまで低下してきており、B型・C型以外のNASHに伴うものが増加してきている。

京都府立医大でも同様の傾向を認めており2013年までは肝癌の原因としてC型肝炎は60%出会ったら、それ以降は40%と低下しているが、非アルコール性脂肪肝NASHの割合が増加している。

http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/124/124-12/umemura12412.pdf

発癌に関して検討としてみると、65歳以上と65歳未満では、倍ぐらいの差があります。

肝臓の線維化が進んでいると発癌しやすくなるのがその一つの原因であると考えられています。
平成19年度に日本肝臓学会は「C型肝炎に起因する肝がん撲滅を目指して」の中で、肝癌が一年間に発生する率を下の表のように提示している。


現在日本は、おもに三種類のC型肝炎ウイルスが存在し、治療に対する反応性が異なるために、治療開始前にウイルスの種類を調べてから治療方針を決定する。

治療のための検査の流れは、C型肝炎の抗体と核酸を調べ、C型肝炎のために肝機能異常があるかないかで分けている。

しかし、先ほど述べたように、肝癌の発生頻度は肝臓の線維化により別れるので、肝機能異常があるかどうかで判断するよりは、線維化があるかどうか、あるとした場合、線維化の進行度を見る必要がある。
実際、肝政権をした患者で、肝機能と肝臓の組織変化の関係を見てみると、約2/3の症例に軽度の線維化が見られており、中等度を入れると7割弱の症例に線維化が見られている。

治療成績の方は、インターフェロンしかなかった1990年代に比較し、リバビリン併用により治療効果は、倍増し、ペグインターフェロンの開発によりさらに向上し、DAAの開発により、インターフェロンを使用しなくてもC型肝炎ウイルスを体内から排除できる時代になってきた。


しかも、治療効果判定は、以前は治療開始後半年の経過を診る必要があったが、DDA製剤の治療では、3ヵ月で治療効果の判定が可能となってきた。


現在First lineの治療薬は、Genotype1では4種類、
1. ソホスブビル+レジパスビル(ハーボニー) 12週治療
2. オムビタスビル+パリタプレビル/リトナビル(ブィキラックス) 12週治療
3. グラゾプレビル+エルバスビル(エレルサ+グラジナ) 12週治療
4. アスナプレビル+ダクラタスビル+ベクラブビル (ジメンシー) 12週治療
Genotype2では2種類
1. ソホスブビル+リバビリン(ソバルディ+コペガス or レベトール) 12週治療
2. オムビタスビル+パリタプレビル/リトナビル+リバビリン(ブィキラックス+レベトール) 16週治療

作用機序を見てみるとNS3/4A阻害剤、NS5A阻害剤、NS5B阻害剤がある。

各薬剤の主な副作用は、下図のようにそれぞれ特徴があり、患者さんの病態・合併症に応じて治療方法が選択できる時代になってきた。

個々に副作用を見ていくと1型適応のDDAではChild-Pugh Aの肝硬変も適応があるが、腎機能患者に対しては、ハーボニーが使用できず、ヴィラキックスは薬剤相互作用があるために合併症の多い高齢者では、いまいち使い勝手がよくない。その点エレルサ・グラジナは高齢者において使いやすい薬かもしれない。

最初に経口DAAとして認可されたアスナプレビル+ダクルインザは薬剤耐性変異を生じる可能性がありFirst lineから消えた。

ハーボニーはアメリカのデーターでは92%、日本では95%の奏効率と有効であるが、eGFR<30では腎機能障害患者では使えず、50未満の症例でも投与を控えることが望ましい。

ヴィキラックスは腎障害患者においても使用可能であるが、薬剤相互作用の薬が多く、高血圧患者においてカルシウム拮抗薬が投与されている場合にはARB等に変更してもらう必要がある。

その点エレルサ+グラジナは腎障害患者でも使用可能であり、薬剤相互作用薬は多くないが、脂質異常症患者において、スタチン系薬剤が投与されている場合には、薬剤の変更が必要となる。

治療歴の有る無しでも、男女でも薬剤耐性変異株においても奏効率は97%前後と有効性の高い薬剤である。

副作用においては、胃腸障害の他、肝機能障害がみられることがあり、定期的な肝機能チェックが必要である。

さらに注意してほしいのは、CKD患者においてHCV感染者の腎機能の推移は良くないので、腎機能低下のリスクとして要注意である。

しかし、ウイルス駆除に関する効果は、性別、年齢、治療の有無、透析のあるなし、CKDの有る無し、薬剤耐性変異の有る無しで違いはない。

2型に関してはリバビリンを併用する必要がある。

腎機能障害患者においては、eGFR≦50では使えない状況にある。

ここまでを小括すると次のようになる。


C型肝炎診療の今後の課題は、
ウイルス駆除後症例の診療方針として
1. 肝線維化は消褪するか?
2. 肝発癌抑止効果?
3. 生命予後改善効果?
ウイルス駆除後肝癌の対策として
1. 適切なスクリーニングは?
2. 肝発癌リスク因子は?
といった問題がある。

インターフェロン投与において、肝発癌抑止効果は0.35とされている。

http://www.cghjournal.org/article/S1542-3565(09)01085-4/pdf

ウイルス駆除後の肝発癌においてのリスク因子として、高齢、男性、線維化高度、糖尿病、AFP高値が挙げられており、これらのリスク因子を持つ症例においてはウイルス排除後も定期的な画像検査が必要である。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cncr.29528/pdf

特に高齢者においては肝発癌に注意が必要であるし、SVR後もAFP高値例においても、注意が必要である。


糖尿病における悪性疾患の合併では、膵癌も多いが、実数は肝癌が最多である。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008862#t=articleResults


高インスリン血症に伴う発がんの機序も徐々に解明されてきている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/109/4/109_4_544/_pdf

糖尿病患者の死亡原因としても肝癌死が多い。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1008862#t=articleResults
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