CADASIL 日本赤十字社医療センター 勝瀬一登 先生
2019-02-18 08:24
川村内科診療所
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第30回エニグマ症例検討会
 日本医科大学橘桜会館2階
2019年2月15日(金)
症例2 少量の飲酒中に全身痙攣発作を発症した47歳女性例
             日本赤十字社医療センター 神経内科 勝瀬一登 先生

【症例】47歳女性.【主訴】全身痙攣発作.
【現病歴】出生発達に異常なし.20歳頃より2カ月に1回,右前頭部の拍動性頭痛を自覚した.頭痛以外の症状はなかったが,43歳時に脳ドックで「隠れ脳梗塞」を指摘された.特に加療はされなかった.47歳時,新年会で少量の飲酒中,眼を見開き一点凝視したまま呼びかけに反応しないことが10分間続いた後,右脚から始まる全身痙攣発作が3分間続いた.その後自然頓挫し,受け答えははっきりしていたが,尿失禁に気づいた.救急搬送され神経内科コンサルトとなった.
【既往歴】てんかんの既往なし.動脈硬化のリスク因子なし.【嗜好】喫煙歴なし.機会飲酒のみ.
【家族歴】父:58歳時脳梗塞.69歳時死亡.母:75歳時脳梗塞,不整脈あり.79歳時死亡.兄:39歳時脳出血,40歳代に脳梗塞2回,その後易怒性を認め短期間で転職を繰り返した.48歳頃より認知症となり施設に入所.現在52歳.娘:片頭痛あり.現在20歳.

確定診断:CADASIL Cerebral Autosomal Dominant Arteriopathy with Subcortical Infarct and Leukoencephalopathy

CADACILの診断基準は以下の案が本邦においては提唱されている。

自然歴:50歳前後で脳梗塞を発症し、その後徐々に身体症状、認知機能障害が進行して死亡するとされ、ドイツの215家系411症例の検討では、脳梗塞の平均発症年齢が男性で50.7歳、女性で52.5歳、寝たきりとなるのが男性で62.1歳、女性で66.5歳、脂肪が男性64.6歳、女性707歳と報告された。

臨床的特徴:
1) 10〜30歳代で前兆を伴うあるいは伴わない片頭痛発作がみられる。
2) 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの脳卒中のリスクファクターを持たずに40〜50歳代と比較的若年でTIAやラクナ型脳梗塞発作を繰りかえす。
3) 60歳を過ぎることには次第に進行して仮性球麻痺や認知症症状を呈する。
4) 家族に類似症状(常染色体性優性遺伝)をみる。

日本人における症状の発現頻度は下記の表の割合である。

https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/052050303.pdf

MRI所見:FLAIR画像やT2強調画像で両側側頭極、外包、内側前頭極の高信号域を認める。特に側頭極の病変は特異性が高い。

https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/052050303.pdf
電顕:脳、骨格筋、皮膚の細小動脈の平滑筋基底膜層かその周辺にGOM(granular osmiophilic materials)を認める。
光顕:Notch3に対する免疫染色で1μm以下の顆粒状物質として染色される。
DNA解析:Notch3遺伝子変異を証明する。

GOMの沈着
https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051110945.pdf

治療法:自然歴から三段階に分けて考える必要がある。まずは脳梗塞の初回発作を予防する点である。脳梗塞発症には、喫煙などの生活習慣、高血圧合併が影響するので、これらの厳密な管理が求められる。
ついで脳梗塞の再発予防である。通常の抗血小板剤では再発の予防は困難であり、微小出血、症候性脳出血を合併することもあり、症例ごとに慎重に対応する必要がある。認知機能改善についてのドネぺジルの投与が試みられているが、Trail making testを用いた評価以外には有意な効果を認めていない。
片頭痛予防薬のうちカルシウム拮抗剤である塩酸ロメリジン(ミグシス錠)投与で脳血流の改善や脳梗塞再発抑制が可能である可能性を水野氏は唱えている。
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