2013年8月26日 ローズホテル横浜
演題「循環器医からみた抗血栓療法」
演者:北里大学医学部循環器内科学 阿古潤哉 教授
内容及び補足「高齢者の問題は地方・農村地区と考えられやすいが、高齢者人口の増加という観点から見てみると、1位:埼玉、2位:東京、3位:神奈川、4位:千葉、5位大阪と都市部に集中している。地方においてはもともと高齢者が多く、増加率は小さい。
脳塞栓症を起こす原因疾患としては、心房細動、心不全が圧倒的に多い。
その中の心房細動は、年齢とともに直線的というよりも指数関数的に増加してくる。
心房細動による脳梗塞は大梗塞となることが多く病態も重症であることが多い。
従って、抗凝固療法の適応となるが、その指標としてCHADS2スコアが利用されている。このスコアは、スコアが0または1の症例が圧倒的に多く、それらの症例においての抗凝固療法の必要性の判断が困難であったために、CHA2DS2VAScスコアが新たに提唱された。
抗凝固療法の合併症として心配なのは脳出血であり、その点を考慮してつくられたスコアがHAS-BLEDスコアです。2点以下であれば出血のリスクが少ないという評価になる。
また心房細動が持続性の場合と発作性の場合における脳塞栓症の発症頻度は変わらないということがわかっており、発作性の患者さんにおいても抗凝固療法が必要である。
ワーファリンのコントロールの指標としてPT-INRがあり、一般的には2.0〜3.0に保つことが必要とされてきた。
しかし本邦においては70歳医所の高齢者ではINR<1.59では重症虚血による塞栓症が増加し、INR>2.6では重症出血が増えるのでINRが1.60〜2.59での間でコントロールするのが望ましいと考えられるようになった。
13.Yasaka M, et al.: Intern Med 2001; 40: 1183-1188
さらに、非弁膜性の心房細動患者にワーファリンとアスピリン+クルピドグレルの併用投与での効果を比べた試験であるがTTR(time in Therapeutic Rage)≧65%の群で認められていたワーファリンの有用性がTTR<65%になると消失することがわかり、わーらりんの投与量が治療域にコントロールされている時間が大切であることが示された。
Circulation, 2008 ; 118 : 2029〜2037
しかし、現実においては、ワーファリンの投与でTTRが60%以上に満たされている人たちは70歳未満では半数にも満たず、INRが緩く設定されている70歳以上でも77%に過ぎず、ワーファリンによる抗凝固療法においての大きな問題点となっている。
併用薬による血中濃度の変化や、食事との関係など、使い図来店が多くその改善を目指して開発された薬剤がここ数年使えるようになってきた。
それぞれの薬剤においていくつかの特徴があるが、服薬コンプライアンスの観点からは一日一回のものが望ましい。薬剤の血中モニタリングの方法が現時点では有効なものがなく、肝障害症例、腎障害症例における薬剤の減量などいくつかの問題点がある。ダビガトランは用量設定二種類において臨床試験が行われているため、減量についてのデータがあるが、その他の薬剤については情報がなく、むやみに減量して、塞栓症を起こす危険を侵すことは避けるべきであろう。併用薬座位においてはダビガトランが心房細動の心拍数下げるワソランと二より血中濃度が上昇することがあるため、減量する必要があり、併用投与初期3日間においてはダビガトラン服用をワソラン服用の2時間前にする必要がある。アピキサバンにおいてはヘルベッサーとの併用が問題であるが、臨床的にどうしても併用しなければならない場面はそう多くはないであろう。」