2013年9月26日 崎陽軒本店
演題「脳梗塞と抗血栓療法」
演者:川崎医科大学附属病院脳卒中医学教授 木村和美先生
内容及び補足「脳卒中の原因部位を見てみるみると、脳動脈に問題がある場合、頸動脈に問題がある場合、大動脈に問題がある場合、心臓に原因がある場合、それ以外の血管に問題がある場合、血液凝固脳に問題がある場合などに分類できる。
脳の病型別にみてみると、
と大きく分けられる。大きな病変を形成しやすい心原性の脳梗塞を見てみると、
と原因疾患ごとに脳卒中の発生頻度は異なる。特に頻度が多い心房細動に注目してみると、年齢が上がるにつれ頻度が上昇してくる。
日本の久山町においても同様の傾向がみられる。
心房細動の原因疾患もいろいろある。
心房細動の危険因子をより細かく見てみると、
倉敷市で2007年に41436人の健康診断を実施した中で心房細動の心電図波形が見つかった人は667名で1.6%(男性2.4%、女性1.2%)で、2006年に心房細動がなかった30010名中278名(0.9%)に新たに心房細動が出現した。 高齢80歳以上(OR 1.57 P=0.001)、心疾患の既往(OR7.47 P<0.001)が影響した。
平成18年19年に脂肪細動を指摘された1164名の追跡調査を行った。5年後に279名の人がなくなっていた。実に24%にも上る。つまり5年生存率は76%ということになる。現在の癌の5年生存率は、胃癌で70%、大腸癌で73%、肺癌で40%、乳癌で90%ぐらいであるので、癌に匹敵する予後ということもできる。
死亡原因は、悪性腫瘍が24%、高血圧以外の心疾患が24%、脳梗塞が11%、脳梗塞以外の脳疾患が6%、肺炎が13%となっていた。
退院時に心房細動がなかった886例と心房細動が持続している2237例の5年後の死亡は14例(1.58%)対73例(3.26%)であり、カテーテルアブレーション治療などの治療で不整脈を元に戻すことも有用ある。洞調律に戻せなくても、NOACが次々と開発されていることもあり、患者さんに合った抗凝固療法を行っていく必要がある。
心房細動の抗凝固療法の適応を判断する目安としてCHADS2スコアがある。
このCHADS2スコア
心不全の患者さんの病態マーカの一つである
BNPを、脳卒中患者さんで測定してみると、心原性脳卒中で圧倒的に高値を示している。心房細動の患者さんが、心不全を合併して心腔内に血栓が生じ、その血栓が飛んで脳卒中を発症している可能性もある。
ワルファリン療法におけるPT-INR値であるが、1.59未満であれば脳梗塞や漸新世の塞栓症の発症を抑えることができていないというデータが多く、1.60以上を保つ必要があるが、2.6以上になると重篤な出血の合併症を来す。それ以上に大切なことは、ワルファリンを飲んで出血した人の血腫は時間とともに増大し、死亡に至る例が多いことである。2.00-2.59での出血合併症の頻度はそれほど多くはないが死亡率は50%を超える。それに対して、NOACでは出血の頻度は少なく、出血した際にも血腫の増大例をまだ見ていない。」