2013年10月11日 ホテルキャメロットジャパン
演題「夜間頻尿」
演者:聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院主任医長 堤 久先生
内容及び補足(含質疑応答)「夜間、排尿のために起きなければならない症状で日常生活において支障が出ているものを夜間頻尿という。排尿に関わる症状のうち最も頻度の多いもので、40歳以上の男女で、約4,500万人が夜間1回以上排尿のために起きているといわれ、加齢とともに頻度が高くなる。
日排尿機能会誌 14:1-12, 2003
原因としては、多尿(夜間多尿)、膀胱容量の減少、睡眠障害に大きく分けられる。
一回の排尿量は150〜200ml以上と量があり、夜間での尿量が一日の総量の1/3以上になる状態で、基礎疾患としては、高血圧、心不全、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群がある。
膀胱容量の減少は、過活動膀胱や前立腺炎、膀胱炎などがある。過活動膀胱の基礎疾患としては、脳卒中、パーキンソン病、前立腺肥大などがある。
詳しく見てみると以下のようになる。
*多尿・夜間多尿
? 水利尿(尿比重<1.005、尿浸透圧<150mOsm/L):水分過剰摂取
心因性多尿、
アルコール、カフェイン
心不全、肝不全、低アルブミン血症
輸血過多
薬剤性(抗コリン、クロルプロマジン、チオリダジン)
症候性多飲症(脳腫瘍、脳炎後)
? 水利尿(尿比重<1.005、尿浸透圧<150mOsm/L):水分再吸収障害
中枢性尿崩症(続発性:脳腫瘍、頭部外傷、ギランバレー症候群、加齢によるADH分泌変動パターンの変調など)
腎性尿崩症(続発性:慢性腎盂腎炎、慢性間質性腎炎、水腎症、アミトイドーシス、多発性骨髄腫、鎌状赤血球症、サルコイドーシス、多発性のう胞腎、シェーグレン症候群、低カリウム血症、高カルシウム血症、薬剤性)
妊娠に伴う尿崩症(ADH分解酵素産生)
? 浸透圧利尿(尿比重≧1.008、尿浸透圧≧250mOsm/L)
電解質利尿(利尿剤投与、生理食塩水高負荷、急性腎不全の利尿期など)
非電解質利尿(マンニトール、グリセオール、造影剤、グルコース、高尿素血症、高血糖)
? 高血圧に伴う夜間多尿:高血圧によるカテコラミン高値が夜間減少し、腎血管艇庫が低下したことによる腎血流量増加から利尿状態となる)
*膀胱蓄尿障害
? 前立腺肥大症(前立腺肥大症に伴う過活動膀胱および残尿増加による有効膀胱容積の減少によるとされている)
? 過活動膀胱
? 間質性膀胱炎(現在は膀胱痛症候群としてまとめて考えられているが、昼夜問わず頻尿となる)
*睡眠障害(夜間頻尿と睡眠障害は相関する)
? 不眠症(身体疾患、薬物、心理的、環境的要因)
? うつ病
? 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
? 周期性四肢運動障害
? むずむず脚症候群
? アルツハイマー病
? パーキンソン病
診断のために、問診票を活用し、排尿日誌をつけてもらっている。
前立腺肥大症に関する質問票としてIPSS・QOLスコアがある。
過活動膀胱の問診票としては、OBSSがあり、自分は合計点ではなく、それぞれの点数を2-3-3-1といった四連の数字で表記して利用している。
過活動膀胱の診断をする前に男性の場合には前立腺肥大を除外する必要がある。
前立腺は加齢とともに肥大してくる。
前立腺肥大を疑った場合には、下記の診断アルゴリズムに従って診断し、治療を行うことになる。
治療薬としては以下のものがあり、
それぞれに特徴がある。
また、排尿日誌を利用することにより、その人の状態の把握や病因の推理に役立る。
上記症例においては、夜間の排尿が1350/(1600+1350)=0.458と45%以上あり、一回の尿量も200ml以上もあり、夜間多尿が夜間頻尿の原因であることがわかる。
抗利尿ホルモンの分泌低下による場合もあるが、こういった症例のほとんどが水分の過剰摂取が原因となっている。夜間の脱水による脳梗塞予防のためにと、水分の過剰摂取をされている方がかなり多くいる。いろいろと調べてみると、水分をより多くとったことによる
血液粘度の変化はないという論文はあったが、血液粘度の低下を来すという報告はなかった。
脱水予防のための水分摂取は必要であるが、過剰な水分摂取は快眠を妨げるばかりでなく、眠たい状況下でのトイレまでの移動が必要となってくるため、転倒する機会が増え、寝たきりになる危険性が増加するので、避けるべきである。
夜間頻尿診療ガイドラインが日本排尿機能学会から出版されているので参考にされたい。