2013年10月16日 ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル
演題「腎機能障害を有する糖尿病患者の血糖管理」
演者:東海大学医学部内科学系腎臓内分泌代謝学講師 豊田雅夫先生
内容及び補足(含質疑応答)「慢性腎臓病(CKD)があると心血管イベントの頻度は上昇する。
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参:
CKD診療ガイド2012
心不全患者においても腎機能が悪いほど予後が悪い。
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近年心血管障害、CKD、貧血がそれぞれの病態を悪化させているという心腎連関が大きく取り上げられるようになってきた。その病態には体液量の調節障害、血管内皮細胞障害による動脈硬化の進展、貧血が増悪因子として関連しあっていることがわかってきており、それぞれを改善することにより、他の病態の悪化も防ぐことができうる。
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また、末期腎不全になってくると投与できる薬剤も限られてくるので、治療法も限定されてくる。
また、末期腎不全になってくると貧血が進行してくるため、糖尿病のコントロール指標であるHBA1cの値の信頼性が低下してくる。
糖尿病のコントロール指標としては、HBA1c(貧血のためHB値の低下があること、造血剤のエリスロポイエチンの影響があること)、1,5-AG(尿量の減少により排泄が低下してくること)、GA(グリコアルブミン:アルブミン尿が生じることがあり、アルブミン代謝が亢進していて、ネフローゼの状態ではあてにならない)があるが()内に記載した問題点があるが、これらのモノの中ではGAがより良い指標だと考えられる。
Clin Endocrinol (Oxf). 2008 Oct;69(4):556-61
治療薬剤も末期腎不全があると使用できない薬剤が少なくなく、インスリンの使用によっても低血糖の発症頻度が上昇してくるので、投与量の調節が難しくなってくる。その点GLP-1アナログは、インスリンよりも低血糖発作が生じにくく使いやすい。
GLP1作動薬は細胞内のcAMPレベルを高めてSU薬とは異なる経路で膵β細胞からのインスリン分泌を促し、膵β細胞のアポトーシスを抑制し、β細胞数を増やす基礎研究データもあります。その他に、胃内容物排泄遅延作用と中枢における食欲抑制作用もあり、体重増加を起こしにくい薬剤でもある。