胡瓜(きゅうり)もみを作られたことありますか?胡瓜を薄くスライスして、塩分(しお)を2gほど振りかけて、軽くもみ、15分ぐらい放置します。その後で絞ってみましょう。なんと水分が50-60mlほど搾り出せます。
つまり、細胞の外に塩分があると、細胞から水を引き出す力が強く、その引き出された水分が血管の中に移動すると考えてください。水分量が増えても血管は拡張して、血圧が上がらないように対応します。何とか拡張して血圧を上げないように保っている場合には、ストレス時や血圧を上げるホルモンが分泌された状況において血管が収縮した時に、通常の場合に比べて、より血圧が上昇することがわかっていただけると思います。(血管の中にある水分量が多いので圧の上昇が大きい。)医者の前では・病院では、緊張して血圧が上がるけれど、普段はこんなに血圧が高くない(白衣高血圧)、といわれる方もいますが、このような白衣高血圧といわれている人でも、長期間観ていると、1/3の人で血圧の治療が必要になってくるとの報告があります。それは、先ほど説明した状態の人たちと考えられます。また、同じ血圧値の人でも、塩分を多く取っている人に、血管の病気が多いとの報告もあり、塩分が多い人は何とか血圧が上がらないように保っていて、ストレス時には、かなりの血圧上昇があり、その上がった血圧が病気を引き起こしていると考えられます。塩分の摂取量が少なければ、この緊張下における血圧の上昇を引き起こす余分な(血管内の)水分の貯留が少なくなるので、緊張した時の血圧の上昇が少なくなる可能性があります。(当然緊張が強すぎれば、血圧はかなり上がってきます。)
それでは、どうすれば塩分(しお)の摂取量を減らせるのでしょうか?
濃い味が好きだ・塩っ辛いものが好きだと言われる方は、非常に多いのですが、本当に濃い味や塩っ辛いものがすきなのでしょうか?
例えば、大き目の刺身を食べているときを想像して下さい。刺身の表と裏に醤油をたっぷりつけて、噛み砕かないうちに飲み込んでいませんか?流し込んでいる部分は味わっていないので、その分を小分けにしてみましょう。大体1/3から1/4ぐらいの大きさになると思います。この小さな刺身が、一切れ一万円だった場合を考えてみてください。(すでにお金は払ってしまったもの・またはプレゼントされたものと考えてください。)さすがに、一万円の小さな一切れの刺身であれば、多くの人が醤油をつけずに、つけたとしても、ほんの少し醤油をつけて食べられるのではないでしょうか?つまり高い料理の場合には、普段とは食べ方を変えて、醤油や香辛料などをあまり・ほとんど使わずに、食材の味を味わって、食べると思います。食べ方を変えておいしく食べようとするということは、現在の食べ方は、味わって食べているとは言えないのではないでしょうか?つまり、食材の味を楽しんでいるのではなく、醤油や塩・香辛料の味を楽しんでいるのではないでしょうか?食材の味を楽しむような食べ方をしましょう。(ここで、実験をしていただきたいのです。先ほど話したように小さくきったお刺身を、醤油をたっぷりつけて、じっくり味わいながら、噛み続けてください。その後も同じように繰り返してください。のどが渇いても水を飲んだり、ほかのものも食べたりしないで、醤油の濃い味が、じっくり味わうとどういう状態になるかを実感してください。)
それでは何故、今まで塩っ辛いものが好きだと思っていたのでしょうか?濃い味のものや塩っ辛いものを食べている時の食べ方を想像して下さい。食べている時間がもったいないと考えることから、早く食べるようになり、一度にたくさん取り、良く噛まずに飲み込んで食べる食べ方になったように思われます。口の中に食べ物を多く入れても、唾液の分泌量はほとんど増えません。そうなると、噛んでいてもパサツイテいて、飲み込むか流し込んでしまいます。早く飲み込んでしまうと、舌と食べ物の接触時間が短く、唾液での消化もなく、薄い味だと味を感じるまもなく、食べ物が舌やのどを通り過ぎていきます。そこで、塩・醤油・唐辛子・胡椒などの香辛料の味に頼ることになるのです。今度は逆に、濃い味のものを食べた後に、薄い味のものを食べたときのことを考えてください。ほとんど味がわかりませんよね。つまり、この状況においては、味覚のセンサーの感度は振り切れている状態で、ほとんどが痛覚刺激と考えてよい状態です。痛いので、長時間口の中に置いておけないので、早く流し込んでしまい、舌と食べものの接触時間がより短くなり、味が良くわからずに、香辛料や塩・醤油をたくさん使う、といった悪循環に陥っているのです。
味わって食べるために、良く噛んで食べればいいのでしょうか?30回噛みましょう、ということを良く聞かれると思いますが、これはなかなか実行が困難です。というのは、飲み込むタイミングは、意識しないと、今までつちかわれた飲み込むタイミングで(噛む回数が少ないうちに)流し込むように、食べてしまいます。つまり、口に入れる量にかかわらず、ある一定の回数噛むと、飲み込むように、口からのどにかけての動きがセットされているからです。数を数えるなどの強制的な意識をもってこないと、気が付いたらすでに口の中にないといった状態になってしまうのです。『数』を数えれば確かに噛む回数は増えるのですが、数を数える方に意識がいくので、味を楽しむことが出来ず、美味しくないのです。これでは長期間にわたって続けていくことが困難です。それでは如何すれば良いのでしょうか?
一回に口に運ぶ量を減らすのです。つまり、一回口の中に入れる量を1/4にするだけで、自動的に4倍噛んだことになります。(また、一見4倍食べれるように思え、得した気分になりませんか?)ただ4倍噛んだだけでなく、つぶれた食べ物の中に唾液が入っていき、消化が進むと、消化酵素で消化された別の味も楽しむことが出来ます。おコメをじっくり噛んでいるとおいしくなることを経験されていますよね。アレです。最近味が変わるまで、おコメを噛んでいますか?一粒で二度美味しい食べ方が出来るのです。
また、高い料金を設定するだけで、ゆっくり味わって食べようと思われませんか?例えば、お茶碗一杯のご飯が一万円するときのことを考えてみてください。少しずつ口に入れ、唾液で消化され、味が変わるまで、良く噛んで、味わって食べる自分が見えてきませんか。"ゆっくり食べなければいけない"はストレスですが、高いものだと、"ゆっくり味わって食べよう"として時間がたち、口の中で消化が行われ、より美味しく食べられ、胃の負担も減り、少ない量で満腹感も出てくるので、食べ過ぎが予防できます。ここでも実験していただきたいのですが、いつも通りの量を口に入れ、何回噛めば味が良くなるかをまず確かめてください。次にいつもの1/4の量をいれ、今度は何回噛めば味が変わるかを確かめてください。
満腹感は、食べた量で出てくるのではなく、血糖値があがってくるまでの15-20分は、出てこないのです。(血糖が高すぎる糖尿病の人では、血糖の上昇率が相対的に低くなるため、満腹感が出にくいと考えられます。)
また、口に食べ物を入れたら、お箸を離しましょう。箸を持っていると、ついつい次の食べ物を取ってしまい、食べ物を取ったために口の中のものを自動的に飲み込むことになってしまいます。視点を換えて、味覚情報の処理の観点から、考えて見ましょう。口に入れてすぐ次の食べ物を取るためには、口に食べ物を入れた時点で、すでにほかの食べ物を、選んでいる必要があります。ということは、数種類の食べ物を見て、それらの食べ物の味覚情報を大脳に広げて、どれを食べようか取捨選択しており、その状況下において、口に入った食べ物の味覚情報が大脳に伝えられてきます。この時点で、複数の味覚情報があるのですが、どの情報が優先されるのでしょうか?どれを食べようかと選んでいるのですから、選ばれている食べ物の情報のほうが食べている食べ物の情報よりも優先されます。
音を聞いている時に、気になる音があると、意識的にその音に神経を集中させるので、その気になる音よりも大きな音でさえ、意識に上がってこなくなりますよね。人間の脳は、注目している情報を、クローズアップして、他の情報の感度が悪くなるように、自動的に処理をします。
従って、食べている時に他の食べ物を見ていると、舌の味覚の感度は低下します。素材の味を楽しんでおいしく食べるためには、食べているものを見て、舌の味と、目で楽しむ味覚を一致させるほうが良いのです。懐石料理みたいに一つ一つ食べ物が出てくる場合には、匂い(嗅覚)までも一致しているのです。だから、よりおいしく感じられるのです。
まとめますと、塩分が多くなるのは、一度に多く口に運び、噛まずに飲み込むようにして食べているからであり、塩分が少なくてすむようにするには、一回に口に運ぶ量をへらし、そのものの料金を高い値段に設定して、味わって食べないと損だと思い込み、すぐに次の料理を取らないよう、手からお箸を離して、食べているものを観て、口の中全体で食べているものの味を・食材の味を楽しもうとする食べ方をすることが、醤油や塩分・香辛料に頼らない理想的な食べ方です。