肺癌を見落とさないための胸部写真の読影 山田耕三先生
2013-10-21 18:55
川村内科診療所
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2013年10月19日 神奈川県保険医協会
演題「肺癌を見落とさないための胸部写真と胸部CTの読影」
演者:神奈川県立がんセンター呼吸器内科 山田耕三先生
内容及び補足(含質疑応答)「CT時代の胸部単純写真の役割は病変を見つけることと、病変を疑うことにあり、その次に精密な形態診断をCTに任せることに尽きる。
胸部単純写真における肺や以上の認識は次の5点に絞られる。
? 肺野血管の増加、減少
? 肺野血管影の腫大、最小化
? 肺野血管影の辺縁の不明瞭化
? 肺やX線透過性の減少、増加
? 正常構造以外の余分な陰影 びまん性、限局性
デジタル胸部写真における利点は、対象となる病変をできるだけ見やすく、発見しやすくするために表示条件を自由に変更できるのであるが、最適の画像処理は病変ごとに異なり、画像処理をすることにより、正常像も変化するので、処理画像のみで判断するのは危険である。
アナログの画像に比べ、デジタルでは淡い陰影が見えにくくなる点を考慮しておく必要がある。
正常構造を理解するために、若い男性の病気がない人のレントゲンを一枚絶えず見えるところにおいておくのがよい。以下の点を留意しておくと異常の判定がしやすくなる。
肺門の正常構造は、肺動脈、肺静脈、気管支が形成している。右下肺静脈は左房に入っていくような構造。
肺門の高さは左が肺動脈を乗り越えるため、1.5?高い。右の肺動脈の大きさは1.5?で肋骨の大きさとほぼ同じである。
主気管支が作る角度は右が25°、左が35°で、右主気管支の長さは15?、左主気管支の長さは45?で3倍長い。そのため、右肺は誤嚥性肺炎が多く、左肺は痰の排出が困難となり無気肺になり易い。
右の肺動脈の大きさは、上肺野が1とすると中下肺野は1.5~2倍の大きさになる。
横隔膜の高さは、肋骨影前方影で第6~7肋骨、後方影で第10~11肋骨に該当する。縦隔に線状の陰影が見えるが上肺野は後接合線、下方に前接合線、食道奇静脈陥凹、右傍気管支線(1-2mmの太さ)、傍脊椎線(下行大動脈左縁)などがみられる。肺がんの半分は常用に見られ、肺尖部、肋骨影、心陰影に重なるところが見落としやすいので、そのことを心に入れながら、小(肺尖部の陰影)、三(肺野の左右差比較)、J(左縦隔辺縁から下に降り、右縦隔辺縁)を観察する。
肺門部・縦隔部病変は、心縦隔陰影、気道、縦隔線、肺門構造に大きさや携帯、位置の変化がないかどうか、正常構造で説明できない陰影はないかどうかを確認しながら読影する。
肺癌の読影分類として野口分類がある。
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野口分類は野口が外科的に切除された2cm以下の小型の末梢型肺腺癌を病理組織学的に検討し,組織学的な増殖パターンから6型に分類したもので,予後と良く相関している。
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Type A  localizedbronchioloalveolar carcinoma(LBAC) 腫瘍内に線維化巣(-)
TypeB  肺胞構造の虚脱部分を伴うLBAC (線維化巣(+))
TypeC  活動性の線維芽細胞の増生部分を伴うLBAC
  A,B,Cは肺胞上皮を置換性に増殖していく。CT所見ではGGA(限局性すりガラス陰影)
  B,Cは画像上、充実生部分を持つ。spiculaもみられる。
Type D  充実破壊性に増殖する低分化腺癌
Type E  気管支への分化がみられる管状腺癌
Type F  圧排性,破壊性増殖を伴う乳頭状腺癌
  D、E,Fは肺胞上皮を非置換性に増殖していく。画像所見では充実性。notch, lobulation。
検討症例の3/4はAAHと同様に,基本的には既存の肺胞上皮を置換して増殖する腺癌,残余の1/4は肺胞上皮非置換性に破壊性増殖を示す腺癌であり,前者の腫瘍にはType A,Type B,Type Cが含まれ,後者の腫瘍にはType D,Type E,Type Fが含まれる。5年生存率は間質浸潤を欠くType A,Type Bは100%,間質への浸潤部分を認めるType Cは75%,一方,早期浸潤癌であるType D,Type E,Type Fは予後不良で,Type Dで52%。
病理標本との対比を確認したい方はこちらをご覧ください
参:Travis WD, et al. J Thorac Oncol 2011;6:244-85.
無気肺進行すると、病変が終息するので、典型的な像を認識していないと見落とす危険がある。また所見を拾った際には、無気肺に関連する肺病変を意識しておく必要がある。同じはい領域に繰り返す浸潤影、火炎状陰影、気管支拡張、粘液栓、癌規定化、縦隔・肺門・葉間線偏位の原因に肺癌がある可能性を念頭に置いておく必要がある。
胸部X線写真で肺がんの見落としを少なくするポイントは
? 正常構造で説明できない以上エイを拾い上げること
? 隠れた肺野に注意すること
? 肺尖部の構造に重なる病変に注意すること
? 淡い肺野結節を注意深く探すこと
? 無気肺および閉塞性二次変化に注意すること
そのために必要なことは
? 既存構造の変化をとらえる
心臓・縦隔意念の辺縁、気道、肺門構造、葉間線、横隔膜、肺野血管陰影
? 既存構造で説明できない異常影を探す
? 肺野の透過性の変化を捉える
? そのために、自分の頭の中に正常像のイメージを持つこと
? 微細な形態診断はCTで行うこと
である。
参:
Single Slice Helical CTによる肺癌CT検診の判定基準と経過観察ガイドライン2005年第1版
低線量CTによる肺がん検診のはい結節の判定基準と経過観察の考え方第3版
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