心房細動治療を再考する 清水渉教授
2013-11-05 09:13
川村内科診療所
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2013年10月29日 ホテルキャメロットジャパン
演題「心房細動治療を再考する −β遮断薬のエビデンスと意義−」
演者:日本医科大学内科学主任教授 清水渉先生
内容及び補足(含質疑応答)「心房細動は年齢とともに上昇し、70歳代には男性では3%を超し、2030年には患者数が100万人を超えると推計されている。

一般的には心房細動と診断された時は発作性であり、一週間以内に治療抵抗性となり、その後1年以内に持続性となると言われている。

心房細動治療の主流は洞調律に戻すRhythm controlと心拍数をコントロールするRate controlに分けられる。前者は主に?群や?群の抗不整脈薬が使用され、後者はβブロッカーやジギタリスが投与される。2002年に発表されたAFFIRM試験で両者において有意な統計上の差はなく、しかもレートコントロールの方がやや良い結果となったこともあり、治療の主流は、それ以降レートコントロールとなった。

2011年に発表された日本人の臨床研究J-Rhythm Registryでも、7937名の心房細動患者で同様の結果であった。

ヨーロッパ心臓病学会の2010年のガイドラインでは、心疾患があるかないかで治療方針を分けている。

高齢者の治療においては、以下の図のような薬剤を推奨している


pAFの場合には日中運動時に起こる交感神経緊張型の場合にはβ遮断薬やピュアなNaチャンネル遮断薬であるピルジカイニド、プロバフェノン、フレカイニドを、夜間安静時や食後に起こる副交感神経緊張型には抗コリン作用のあるシベンゾリン、ジソピラニド、リスモダンなどが勧められている。
2008年の日本循環器病学会が出した心房細動の薬物治療ガイドラインにおいてWPW症候群においての治療が以下のように分類されている。

レートコントロールの継続性は治療薬の種類によって異なり、βブロッカーが良好である。
心拍数の治療目標を決める試験結果が2010年に発表された。安静時80/分未満で、中等度の運動時で110/分未満を目標にした厳格群と安静時110/分未満を目標にした緩徐群で比較した試験である。両群間で有意な差がなかったが、緩徐群においても心拍数は85前後にコントロールされており、しかも緩徐群は単剤での治療が65%であるのに対し厳格群は68%以上の症例において複数の薬剤が使われていたことを考えると、β遮断薬単剤で心拍数を80前後にコントロールすることが治療の目安としてもよいであろう。

Rateコントロールでのジゴキシンとβブロッカーの違いは、βブロッカーの方が心拍数が低下しやすいこと、運動時においてジゴキシンは心拍数の上昇を抑えることができないが、βブロッカーは運動時においても心拍数の上昇を抑えることができる点である。

カナダにおいてレートコントロール薬剤の主流は2000年以降βブロッカーの方が使用されるようになってきている。

日本において心房細動に使用することができるメインテートとアーチストの比較試験がいくつか報告されている。
217例の心不全患者にメインテートとアーチストを投与した臨床研究がある。全体ではメインテート群で心拍数は−27.9拍/分、BNPは−50.3、アーチスト群心拍数は−17.4拍/分、BNPは−42.3、心房細動合併例83例では、メインテート群で心拍数は−38.5/分、BNPは−69.0、アーチスト群心拍数は−27.2拍/分、BNPは−41.5であり、これらのβブロッカー投与中の心房細動除細動率がメインテート群(43例)で40%、アーチスト群(40例)で16%とメインテート群の方が良いように思われた。
(スライドには引用文献としてCirc. J. 2010 74 1127-1134となっておりましたが、この文件は糖尿病患者さんにメインテートとアーチストを投与した比較試験で別のものと思われます。)
冠動脈バイパス術後の心房細動の治療において、メインテートの方が血圧には変動を与えず、心拍数が有意に減少していたと報告されている。」
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