糖尿病の動脈硬化予防戦略 千葉大学横手幸太郎教授
2013-12-19 09:20
川村内科診療所
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2013年12月12日 横浜グランドインターコンチネンタルホテル
演題「糖尿病の動脈硬化予防戦略」
演者:千葉大学大学院医学研究院 細胞治療内科学教授 横手幸太郎先生
内容及び補足(含質疑応答)「(遅れて参加したため、講義の途中からの記録になります)
下記に脂質代謝の流れを示します。食事を摂取した後、胃で消化され、小腸に運ばれた脂質は、消化管上皮細胞から吸収され、カイロミクロン(CM)の形で血液中に放出されます。血管内皮などに存在している脂肪分解酵素であるLipoprotein Lipase(LPL)により中性脂肪が分解され、粒子はどんどん小さくなっていき粒子膜にたるみができ、その膜がApoA1を含んだまま板状の二重膜となったnacent HDL粒子とカイロミクロン(CM)レムナントに分離します。このCMレムナントは肝臓にあるApoE受容体やLDL受容体を介して肝臓に取りこまれて代謝されますが、過剰にあると、血管壁内に浸透し、そこに存在するマクロファージのApoB48受容体を介して取りこまれ、泡沫化したものが動脈硬化巣となります。
空腹時においては、肝臓から各臓器へのエネルギー補給のため、VLDL粒子として血液中に放出されます。LPLで中性脂肪が代謝されながら、いろいろな臓器にエネルギーを配給し、その燃えカスがLDL粒子となります。一部分はより動脈硬化惹起性の高いVLDLレムナントやIDLとして動脈壁内に入り込み、動脈硬化巣となります。nacent HDLの様な、板状の粒子は、動脈硬化層から脂質を引き抜く働きがあり、抗動脈硬化的に働きます。

従って、動脈硬化惹起性の脂質はLDL粒子だけでなく、レムナントも含まれるためLDL−C値で判断するよりも、HDL-C以外のコレステロール値で考えたほうが良いという理論があり、2012年の動脈硬化性疾患ガイドラインに取り入れられている。概してLDL-C値に30mg/dlを加えた値が管理目標値として設定されている。利点はレムナントに含まれるコレステロール値も含まれている点と食事による影響がほとんどない点である。

慢性腎臓病CKDの患者さんにアトロバスタチンを投与して蛋白尿が減少したという報告がある。

以前は腎の糸球体の研究はメサンギウムを中心に行われていたが、近年ポドサイトにも注目が集まっている。尿中に排泄されるポドサイト数が糸球体疾患の重症度を反映することが明らかになりつつある。
糸球体は、内皮細胞、メサンギウム細胞および糸球体上皮細胞からなる。この糸球体上皮細胞(ポドサイト)は糸球体基底膜を外側から覆いかぶさるように存在し、下記図1aのように走査電子顕微鏡像では、糸球体上皮細胞体から延びる1次突起とさらに細かくその先に出る二次突起がある。二次突起の末端にある足突起は常に別の細胞から出た突起と隣同士絡み合う様な形態をとり、図1bのように足突起は20-60nmの間隙でスリット膜を形成する。

このスリット膜にいろいろな蛋白が発現しており、このスリット膜の機能不全が蛋白尿の出現に深く関与していることが次第に判明してきた

参:蛋白尿発症メカニズムの解明

ロスバスタチン2.5?投与例と、アトロバスタチン10?投与例で尿中のポドサイトの変化を見たところロスバスタチンではほとんど変化がなかったが、アトロバスタチン投与例では13例中11例でポドサイトの尿中排泄低下が認められた。
また、近年話題になっているのが、スタチン投与かにおいての糖尿病の悪化や新規糖尿病発症の問題がある。
4年間で9%DMの頻度が増えたという解析結果
PROVIT研究以外は、糖尿病発症が増えているデータが多い。

今年発表になった日本人の耐糖能障害症例におけるPitabastatin投与においては糖尿病発症を18%低下したことが示されており、薬剤間で差がある可能性がある。

LCAT欠損症例においては、HDL−Cが非常に低値となる。そのため各種臓器にコレステロールが沈着し、白内障や腎不全などの多臓器障害が出現してくる。一般的に行ってHDL-Cが10以下であることは非常に少なく、その状況において蛋白尿が認められると、LCAT欠損症の可能性が非常に高くなってくるので、是非紹介してほしい。
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