2014年2月19日 ホテルキャメロットジャパン
演題「データから読み解く新規抗凝固薬の実臨床での可能性」
演者:横浜市立市民病院循環器内科科長 根岸耕二先生
内容と補足「循環器医としては、予後の悪い心原性脳塞栓症を予防することが重要である。特に心原性の原因で最も多い心房細動においては、多発梗塞、大梗塞が多くKnock-out型と言っている人もいるように、重症患者が多い。
その心房細動であるが、脈の乱れを今まで自覚したこともなく、指摘されたこともない人が多い。つまり、患者さんの自覚症状や自己申告に頼っていたのでは、予防ができない。糖尿病、高血圧、心不全などがある人においては、心房細動の発症・合併頻度が高いので、脈のセルフチェックを指導し、心房細動を見つけないと予防ができない。
数分の心房細動では通常脳梗塞は起こらないといわれている。
逆に心房性期外収縮が多かったり、上室性頻拍症のShort-runが起こったりすると心房細動になりやすいといわれており、就前と起床時に脈拍のチェックをしてもらうよう勧めている。
NOACの処方適応をどう考えるかだが、以下の症例には積極的に勧めている。
? INRの値が不安定な症例
? 甲状腺機能亢進症症例で特に内服薬の量の変更が多い症例
? 抗癌剤投与などが予定されていて、肝機能障害をきたす可能性の高い症例
? CHADS2スコアが1点以下で高齢者や慢性腎臓病症例
また、ワルファリンからNOACに変更したほうが良いと考えられる症例は、
? どうしても納豆を食べたい症例
? 消化管内視鏡などで頻回にワルファリン量の調節をする必要がある症例
? 抗血小板薬の併用投与が必要な症例
? INRが治療域にコントロールされていても出血がある症例
切り替える際の投与の変更の仕方であるが、基本的な考え方としてはINRが治療域でなくなってから変更が望ましい。
ワルファリンが少ない量(1.5?/日以下)でINRが治療域にある場合には、ワルファリンの効果が強い症例であり、凝固能が回復するのに時間がかかるので、2日間休薬の後、INRをチェックする。17.5〜2.75?なら1日休薬ののちチェックする。
INRが治療域よりも低地なら当日夜からNOACの内服を開始し、下限の値前後であれば翌朝から内服し、2.0以上なら、一日延ばすことを勧めている。
INR測定結果をその日のうちに得られない場合には、ワルファリン投与量が1.5?以下の場合には2日後の朝から、1.75〜3(未満)?の場合には1日休薬の後の夕方から、3?以上の場合には1日休薬後からが一つの目安と考えることができる。
エリキュースの投与量は、80歳以上、Cr 2.5?/dl以上、体重が60?未満の際には2.5?に減量するべきである。
最近では推算糸球体濾過量が、検査結果に自動的に記載されているが、この計算式には、体重が入っておらず、体重が少ない人においては、過小評価されがち(eGFRの計算値が同じ場合、体重が少ない人ではクレアチニンクリアランスはより悪化している)なので、注意が必要である。