2014年4月10日 横浜医療モール コンパス薬局
演題「アルコール依存症治療薬 レグテクト」
演者:日本新薬MRさん
内容及び補足「
多量の長期飲酒によるアルコールの臓器障害はほぼすべての臓器に影響している。食道癌やアルコール性肝炎、肝硬変、膵炎ばかりでなく、様々な疾患の原因・増悪因子となっている。
そればかりでなく、妊娠中に多量に飲酒した母親から生まれた子どもにも影響がある。
1960年末にアルコールによる子供への影響が報告され、1973年に「胎児性アルコール症候群(Fetal Alcohol Syndrome = FAS)」 と名づけられた。
特徴的な顔貌(不明瞭な人中/薄い上唇/短い眼瞼裂など)や発育の遅れ、中枢神経の問題がみられる。FASに特徴的な願望がなくても、胎児期にアルコールにさらされたことによる中枢神経の問題(刺激への過反応・注意力の問題・変化への適応困難・学習障害・判断力の問題など、行動障害として現れる)を抱えた子どもたちの存在が注目され、胎児性アルコール・スペクトラム障害(Fetal Alcohol Spectrum Disorders =FASD)と呼ばれている。
重篤な疾患につながる長期的なリスクレベル別の純アルコール摂取量として下記の表のように言われている。次いでおもな酒類の換算目安も上げておく。
1日当たりの飲酒量と脂肪率の相対リスクを見てみると男性よりも女性でリスクが高いことがわかる。
国外の研究を含めアルコール摂取量と死亡率の関係をまとめてみると以下のようになる。
家族を巻き込んで問題となってくるのがアルコール依存症である。患者推計として80万人いるといわれているが、そのうちの5%にあたる4万人しか治療を受けていないことも問題である。
診断基準としては、飲酒に対する強烈な欲求、節酒の不能、離脱症状、耐性の増大、飲酒中心の生活、精神的肉体的問題が悪化しているにもかかわらず断酒しないという項目のうち3項目以上の該当で診断される。
アルコール依存症患者の身体的合併症として、慢性肝炎、糖尿病、高血圧などの心循環器障害、膵障害が高頻度に見られる。
アルコール依存症治療は段階的に導入期→解毒期→リハビリテーション前期→リハビリテーション後期に分けて対応しているのが現状である。
アルコール依存症患者の多くに精神疾患が合併しており、入院する患者の合併疾患は高頻度である。
家族の対応の仕方として推奨されている方法をいかに上げる。
今までアルコール依存症の治療に使われていたシアナマイド(一般名シアナミド)やノックビン(一般名ジスルフィラム)という抗酒剤はアルコールの代謝を止め、二日酔いの原因といわれているアセトアルデヒドを増やす薬であり、少量の飲酒でも直後に、顔面紅潮、血圧低下、心悸亢進、頭痛、悪心、嘔吐、めまい、呼吸困難などシアナミド・アルコール反応を起こさせる。一つ問題があるのは、服薬時にアルコールが入っているとこれらの反応が起こらないことである。
2010年5月に中枢神経系に作用しアルコール依存により更新したグルタミン酸作動性神経活動を抑制することで飲酒に対する欲求を抑制する薬剤レグテクトの発売が認可された。
国内で実施された臨床試験では、カウンセリングなどの精神療法や、自助グループへの参加などの心理社会的治療の補助として使用することにより、プラセボよりも断酒の正鵠率が有意に高いことが示されている。
経時的変化を図示すると以下のようになる。
副作用としては、下痢が比較的多くみられているがその原因はよくわかっていない。