新しい糖尿病治療薬から私たちが学んだこと 寺内康夫教授
2014-04-19 08:41
川村内科診療所
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2014年4月7日 横浜ベイホテル東急
演題「新しい糖尿病治療薬から私たちが学んだこと」
演者:横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授 寺内康夫先生
内容及び補足「
糖尿病という疾患は、発病する10年以上前から膵β細胞機能が低下し、発病の数年前からインスリンの過剰分泌においても対応しきれず、食後血糖値の上昇がみられ、ついに空腹時血糖値も上昇して、発病となり、その後も徐々にインスリンの分泌脳が低下してくる進行性の疾患である
。
糖尿病発症時には膵臓のβ細胞機能は50%低下しており、食事療法、薬物療法を行っても、β細胞の機能は低下し続けていることが問題である。
そればかりでなく、
UKPDSで示されたこと
は、どのような治療を行っていても、全体としては糖代謝が徐々に悪化してくるが非常に問題である。
グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール:オレンジ色)、Rosiglitazon(日本未発売:青色)、メトホルミン(緑色)の単剤投与においては血糖値もHBA1cも徐々に増加してくる
。
そうはいっても、
血糖のコントロールにより大血管障害は9%低下し、心筋梗塞は15%減少させることができ
る。
しかし、やみくもに
血糖を厳格に下げることが良いかというと、そうではない結果が報告
されてきた。
通常の糖尿病治療と厳格な血糖コントロールの重篤な低血糖発作を比較してみると約二倍多いことがわかる。
重篤な低血糖発作症例の死亡率も約二倍高値である。
重症低血糖の発生頻度は治療開始当初においては差がないが、一年を過ぎるあたりから厳格な血糖コントロール群において顕著に増加してくる。
重篤な低血糖が起きやすいのは、高齢患者、糖尿病の治療歴が長い患者、腎機能悪化患者、やせている人、認知機能低下患者、2種類以上の血糖降下薬内服患者、喫煙歴、細小血管障害患者である。
経過観察中において2125例中重症低血糖発作を起こした87例において、平均1.56年で大血管および細小血管障害のイベントが発生した。死亡までの期間は重症低血糖発作後平均1.05年の経過であった。
肥満者では脂肪細胞の肥大を認め、肥大した脂肪細胞からはTNFα、レジスチンなどのサイトカインや遊離脂肪酸(FFA)が産生される。
このうちTNFα、レジスチン、FFAは骨格筋や肝臓でインスリンの情報伝達を障害し、院スチン抵抗性を惹起する。
インスリン抵抗性改善薬のチアゾリジン誘導体はPPARγを介して肥大脂肪細胞のアポトーシスと前駆脂肪細胞から小型脂肪細胞への分化を誘導しインスリン抵抗性を改善する。
小型脂肪細胞はインスリン感受性ホルモンを分泌してインスリン感受性をよくしている。脂肪細胞ができない状態ではインスリン感受性ホルモンの欠乏によりインスリン抵抗性が生じるし、脂肪細胞が肥大するとアディポネクチンの分泌が低下し、レプチン抵抗性が惹起され、インスリン感受性ホルモンの作用が低下する。
一方肥大した脂肪細胞からはインスリン抵抗性惹起分子の過剰分泌が生じ、その結果肥大した脂肪細胞はインスリン抵抗性を惹起する。この状態に、チアゾリジン誘導体を投与すると脂肪細胞の分化、小型化が促進され、再びインスリン感受性ホルモンとインスリン抵抗性惹起分子のバランスが逆転すると考えられる。問題は、この方法では肥満を抑制することができないことである。
インスリン、チアゾリジン誘導体、アカルボース、GLP-1作動薬、DPP-?阻害薬で治療効果を見てみると、インスリンとチアゾリジン受容体では体重の増加があり、GLP-1作動薬では体重減少が認められる。副作用としての低血糖はチアゾリジン誘導体とDPP-?阻害薬でみられなかった。
新薬であるSGLT2阻害薬の効果は近位尿細管でSGLT2により再吸収していた糖をブロックすることにより、糖を体外に排泄して血糖値を低下させるものである。SGLT阻害薬作成当初においては、SGLT2はそのほとんどが腎臓に分布しているが、SGLT1は腎臓以外にも小腸や心臓、気管にも存在するため、小腸への作用により下痢の副作用が高頻度に見られていた。腎臓に特異的に発現しているSGLT2阻害薬を作製することにより、副作用の下痢が著減した。
尿糖排泄を増加させるため、多尿・頻尿・体液量の減少がきたされる可能性があり、夏場においては適度な水分補給が必要となる。
また、尿糖排泄量が増えるため尿路感染や世紀感染を引き起こす可能性が高く、観察を十分に行う必要がある。
尿糖排泄が亢進することにより脂質代謝が亢進する可能性があり、血糖値が良港にコントロールされていてもケトン体が増加することがあり、インスリンの作用不足によるケトン体の増加と区別する必要がある。
単剤投与においての低血糖の可能性は高くないが、SU薬との併用やインスリン製剤の併用で、低血糖リスクが増大する可能性があり、投与薬剤のこまめな調節が必要となる。
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