超高齢化社会日本に求められる抗凝固療法 長谷川泰弘教授
2014-04-21 08:52
川村内科診療所
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2014年4月15日 横浜市健康福祉総合センター
演題「超高齢化社会日本に求められる抗凝固療法」
演者:聖マリアンナ医科大学神経内科教授 長谷川泰弘先生
内容及び補足「
脳梗塞の原因を見てみると、アテローム血栓性脳梗塞が33.9%、ラクナ梗塞が31.9%、心原性脳塞栓が27.0%である。

今までの脳梗塞に対する治療のデータをまとめてみると以下のようになる。

抗血栓薬使用による頭蓋内出血は0.2〜0.3%/年であり、ワルファリンによる抗凝固療法では0.3〜1.2%/年である。また非心原性脳梗塞の再発予防としての抗凝固療法では、心房細動由来の心原性脳塞栓症の場合と比較して脳出血の危険性が19倍高く、非アスピリン性NSAIDsの使用は脳出血の発症に影響しないと報告されている。
また、脳塞栓症の早期再発予防としてアスピリンを用いると、無症候性を含む脳出血が14.2%に生じ、症候性脳出血は1.8%である。
抗凝固療法中の脳出血発症に対する危険因子は、高血圧、抗凝固療法導入後早期INR高値、脳アミロイドアンギオパチーの存在である。
75歳以上の高齢心房患者でも60歳代と比較して抗凝固療法による脳出血の発症に差はない。
抗凝固療法中及び血栓溶解療法で脳出血を合併した例の急性期死亡率はそれぞれ43〜54%、33〜60%と高率である。抗血小板療法も脳出血急性期の死亡や血腫増大に寄与すると報告されている。
アスピリンとワルファリンの併用では脳出血の発症がワルファリン単独に比較して2.6〜3.0倍に増加する。抗血栓療法中の脳出血は、発症率は高くないもののしばしば致命的であることから、血圧を厳格にコントロールし、アスピリンとワルファリンの併用や、虚血性脳血管障害の予防としてのアスピリンとクロピドグレル併用には、十分な適応の検討が必要である、とされている。

明らかな脳卒中の既往がない65歳以上の高齢者をMRIで追跡したCardiovascular Heart Studyでは、平均4年の追跡で無症候性脳梗塞群では1.87%/年と無症候性脳梗塞がない群の0.95%/年よりも高頻度に脳卒中は発症した。
無症候性脳梗塞群では血小板機能が対照群に比し明らかに亢進が認められている。
健常人を含む52251名のメタアナリシスの抗血小板薬であるアスピリンの75〜650?/日の投与での予防効果は心筋梗塞では認められたが、脳卒中で間有意な効果は認められなかった。Cerebrovasc Dis 2007;24:202-209
リスク層別解析では、アスピリンは明らかな心血管疾患を有する高リスク群では脳卒中を有意に抑制したが、逆に低リスク群ではむしろ脳卒中を増加させる傾向にあった。一方、脳出血に対しては、一次予防、二次予防ともに軽度ながら有意に増加させた(相対危険度1.35)。したがって、脳卒中発症予防を目的とするアスピリン投与は、基盤にあるアテローム硬化症などの危険因子を十分勘案した上で行うべきであり、アスピリンを投与する場合でも75〜81mg/日が望ましいと結論している。
また2013年に発表された報告によると、抗血小板剤の併用投与の有用性はなく、出血のリスクが増大することが示されている。

脳血管障害患者の治療を大雑把にまとめると、病型をまず把握し、
? 非心臓原性の場合には、抗血小板剤の投与を、
? 心原性:抗凝固療法を選択するべきである。
しかも、単剤投与が原則となる。非心原性脳梗塞の患者でも、心房細動があれば、抗凝固療法を選択する、ということになる。

高齢者においては抗凝固療法をゆるめに設定して治療されている状況がしばしば認められる。
抗凝固療法の指針として提出されたCHADS2スコアに従って治療が行われていることが多い。


CHADS2スコア別に見たワルファリンのClinical BenefitはCHADS2スコアが高いほど大きいが、社会全体から見た場合は別の視点が必要である。

AHA/ASAのガイドラインで虚血性脳卒中の一次予防について下表が掲載されている。
高血圧患者のPopulation-attribute Riskは高齢になるとほぼゼロになってしまうが、非弁膜症性心房細動のそれは高齢になるほど著しい増加を示している。
つまり、高齢者ほどしっかりとした抗凝固療法が有用であるということになる。

脳梗塞の発症数は、徐々に減少してきているが、80歳以上を見てみると、逆に増加している。




日本における高齢化は急激であり、今後20年間の変化でも80歳以上の高齢者人口の増加が著しく、脳梗塞治療においても、この80歳以上の高齢者の治療が重要となってくる。


AsprinとApixabanの効果を比較したAVERROES試験では、Apixabanのほうがよく、出血の副作用の頻度には差がなかった。


WarfarinとApixabanの比較したARISTOTLE試験では、脳卒中の予防効果も出血の副作用においてもApixabanのほうが勝っていた。


そのほかの試験でも、Warfarinと同等、有意性が示されているが、注意しておかなければいけないことは、これらの対象者はワルファリンの投与が良いと考えられる人たちのデータでしかないということである。

まとめると、
混ぜるな、しっかりした高圧治療を。
80歳以上の二次予防が重要。
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