2014年5月11日 ソラシティカンファレンスセンター
演題「ドライマウスとカンジダ症」
演者:鶴見大学歯学部付属病院 口腔機能診療科 ドライマウス外来 中川洋一 先生
内容及び補足「
鶴見大学歯学部附属病院のドライマウス外来に、年間約500人で、60歳代の女性が多くなっている。
ドライマウス外来には口腔乾燥感や口渇を訴えて来院されるが、全体7割は疼痛も訴え、来院者の約12%が口腔カンジダ症を発症していた。
診療の流れとしては、口腔乾燥への対応をし、カンジダ症の合併があれば、抗真菌薬の投与、齲歯や歯周病があれば、それらの治療を行うことになる。
ドライマウスの口の中の変化を以下に示す。
1.舌の乾燥
2.発赤:唾液の減少により口腔細菌の種類が変化することによる。
3.舌乳頭萎縮と平滑舌
4.口角びらん:口唇の乾燥で起こることが多いが、口腔カンジダ症の一症状としても出現する。
5.虫歯:唾液の減少で起こり易くなる。歯根部の露出および茶色く虫歯になる。この状態は根面齲蝕と呼ばれる。
6.カンジダ症:カンジダ菌は口腔内常在菌であり、普通の人の口の中にもいるが組織内に侵入することはないが、乾燥した状態が持続すると粘膜上皮の抵抗力が減少し、カンジダ菌が上皮内に侵入し、炎症を起こし、カンジダ症となる。
唾液分泌量の低下とともに口腔内カンジダの陽性率が上昇し、カンジダ静菌数も増加してくる。唾液の分泌した状態でもシェーグレン症候群の方がカンジダ静菌数の増加がみられる。
口腔カンジダ症の診断において重要なことは、通常の健康状態においては、カンジダ症が発症することはないので、その患者さんがどのようなハイリスクで状態であるかをまず念頭に置く。
確定診断のための検査には以下の2種類がある。
・培養による真菌学的検査(口腔の病変部を擦過した検体をカンジダ検出用分離培地に塗抹して、一定温度で培養を行いカンジダの有無を観察)
・鏡検による病理組織学的診断(口腔の病変部を擦過した検体の塗抹標本を作製し、顕微鏡で菌糸(仮性菌糸)の有無を観察)
培養では菌種の同定ができ、ある程度定量的な評価が可能だが、口腔内常在菌との区別はできず、結果判定まで2〜3 日かかるので、臨床上では少し問題がある。逆に、鏡検では、現在活動している菌糸状態にあるかどうかを迅速に確認できるので有用である。
口腔カンジダ症の主な原因菌であるCandida albicansは通常酵母型で存在し、菌糸型になり菌糸(仮性菌糸)を伸ばすことにより病原性を発揮する。
カンジダ症の原因菌で最も多いのはアルビカンスで、それに続いて、グラブラータやトロピカリスが検出される。
※1 山本哲也 口腔カンジダ症の病態とその制御 臨床病理58(10)1027−1034 2010
● 口腔カンジダ症は経過および症状の相違により4型に分けられる。
急性偽膜性カンジダ症:はじめは頬、口蓋、口唇あるいは舌の粘膜に白い苔状物が散在性もしくは孤立性に現れる。白苔は易剥離性で剥離後の粘膜びらん面は発赤し出血をきたしやすく、摂食時に痛みがある。放置するとこの白苔は剥離しにくくなる。
● 急性萎縮性カンジダ症:抗生物質の長期使用による菌交代現象の結果として生じるもの。急性偽膜性カンジダ症の偽膜が除去されるとこの病型になる。自発痛も強い。
● 慢性肥厚性カンジダ症:急性偽膜性カンジダ症からの移行が多い。白い偽膜は厚くなり、粘膜上皮に固着して、粘膜上皮層の肥厚と角化が亢進する。
● 慢性萎縮性(紅斑性)カンジダ症:慢性萎縮性(紅斑性)カンジダ症は、義菌性 口内炎とも呼ばれ、通常は口蓋粘膜の総義歯接触面に生じる。多くは無症状であるが、時に患部の浮腫や疼 痛を訴える。
治療としては抗真菌剤の全身投与と局所投与が主であるが、慢性肥厚性カンジダ症は長期間を要することが多く、限局性の症病変の場合には外科的切除を行うことがある。
治療薬としては
1. ポリエン系抗生物質(ナイスタチンやアムホテリシンBなど)
2. グリセオフルビン(フルビスタチン)
3. アゾール系抗生物質(ミコナゾール、クロトリマゾール、フルコナゾールなど)
がある。
Holbrookらの報告では95例の口腔カンジダ症の56%が1ヶ月以内に治癒したが、慢性肥厚性カンジダ症や内分泌疾患のある患者では1年以上の長期を要したとしている。
参考HP
http://www.oralstudio.net/
http://www.showayakuhinkako.co.jp/candida/OralDiagApp_No3.pdf
http://www.chukai.ne.jp/~myaon80/mu4-caseC21candidat.htm