診療に役立つ腹部エコー検査の使い方 金田智先生
2014-06-14 16:42
川村内科診療所
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2014年6月11日 けいゆう病院 大会議室
演題「診療に役立つ腹部エコー検査の使い方」
演者:東京都済生会中央病院 放射線科部長 金田智先生
内容及び補足「
超音波検査のメリット
胆嚢:胆石はCT検査では2/3ぐらいしか描出できない。石灰成分がないと映らない。胆嚢癌エコーで疑われる症例でも、CTでは、異常所見が写らず、MRIで腺筋症が疑われる所見しか描出できない症例もある。
肝臓:DM患者のScreening目的で行われたエコー検査で3?大の辺縁隊がある腫瘤が描出されHCCが強く疑われる症例でも、単純CTでは病変が描出できず、造影CT検査でも、肝血管腫が疑われる像としてとらえられることもある。この症例においては、動脈相が撮られていれば、肝癌疑いという所見として認識できるので、ただ単に造影CTをやったから見落としがないと考えないで、どういった疾患を疑って検査しているかを、放射線医師伝え、適切な撮影法を行う必要がある。
膵臓:膵臓も単純CTでは膵頭部の2.5?大の腫瘤性病変の描出ができないこともあり、慢性膵炎との診断となることもある。MRCPで膵臓を詳しく見ることも可能ではあるが、MRIは石灰化が描出できないため、膵管拡張の像しか描出できず、CTやエコーで膵石を確認することが必要となることもある。
とはいってもエコー検査にも弱点はある。
エコーでは、見落としやすい場所=描出しづらい場所がある。
いくつかの方法でその欠点を最小限にすることができる。
一つは呼吸による調節で、呼吸運動によりそれぞれの臓器の位置が変動することを利用する。
体位変換も有効な方法である。臓器が移動すること、消化管ガスが移動すること、病変の可動性がわかる利点がある。
* 肝臓では、右葉、左葉の端っこが描出しづらい→仰臥位で心窩部の水平断、左季肋部操作、心窩部の矢状断、右季肋部操作、肋間操作を行い、左下側臥位にして、右季肋部操作、肋間操作を行うと、死角の範囲が減るとともに、描出しづらい病変が、はっきり映ることも少なくない。
* 胆嚢では、深部にある頚部だけでなく浅部にある胆嚢底部も皮下脂肪が多いと多重反射エコーのように見えて病変が見づらくなる。胆嚢を長軸像で観察するだけでなく、短軸増で観察することにより、病変がよりはっきり描出できることが少なくない。また、胆石でもAcoustic shadowを伴わないものが少なくなく、体位変換を行い、移動するかどうかの確認はするべきである。
* 膵臓は体部のみしか描出できないと考えられがちであるが、尾部に関しては右下側臥位にし、脾臓を通して観察することも有用である。
早期がんを発見するためには、腎臓では2?以下、胆嚢は2?以下の隆起型、膵臓は1?以下で病変を描出する必要がある。
胃内ガスを移動させて、膵臓体部や鈎部を描出させるためには、身体の移動の仕方も重要である。仰臥位から左下側臥位にし、右下側臥位にすると良い。

在宅エコー検査も有用な検査である。
心嚢液貯留、胸水貯留、腹水貯留があっても高齢者の場合、身体をあまり動かさないので無症状であることが少なくない。
その際問題とすべき基礎疾患としては、以下のような病態がある。
汎発性腹膜炎
がん性腹膜炎
腹腔内出血
内部エコーのある腹水(点状エコーがあれば腹腔内出血の可能性大)
腸管癒着のある腹水(がん性腹膜炎)

急性胆のう炎の場合は、胆嚢の腫大があり、プローベで押すと痛がることが参考になる。

両側性水腎症は前立腺肥大がひどくなるとしばしば見かけるが、がん性腹膜炎も念頭に置く必要がある。

腸閉塞の場合には、小腸のみか、大腸も拡張しているかどうか、絞扼性か非絞扼性かの鑑別が重要である。
絞扼性イレウスの場合には、内容物は移動せず、大量の腹水を伴うことが多く、腸管壁が、崩れた像などのが危険信号である。

腹腔内遊離ガスは、左下側臥位にして、腹壁と間の間にガスをためると描出しやすくなるが、空気の量が多くなると、エコーでは画像として描出しづらくなるので、肝臓の像がきれいに映らない時には、単純写真で腹腔内ガスを確認する方が良い。
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