2014年7月22日 横浜市健康福祉総合センター
演題「高血圧UPDATE-JSH2014から尿細管レニンまで」
演者:横浜市立大学附属病院循環器内科准教授 石上友章 先生
内容及び補足「
今回の講演内容は、いくつかのテーマが盛り込まれていて、情報を追加しないとうわべだけのものになるため、かなりの部分石上先生の意向に沿うように勝手に判断して補っています。内容が膨大になったので、いくつかのパートに分けて掲載します。
Part 2 新しいRAA系の話
人が陸上の生活をするようになり、身体からNaをできるだけ喪失しないシステム:レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が発達してきた。
食塩摂取量が減少し、体液量が減少してくると、原尿のNa+、Cl−濃度が減少し、マクラデンサ細胞がこの変化を感知すると、レニン分泌が増加し、AT?を介して、アルドステロンが分泌され、遠位尿細管や集合管で、原尿からNa+再吸収が増加し、受動的に水やCl−の再吸収も増加する。
そしてレニン・アンジオテンシン系で産生されるAT?は、糸球体の輸出細動脈を輸入細動脈より強く収縮させるため、糸球体内圧が上昇し、糸球体濾過率(GFR)が保たれる。
腎臓からレニンの分泌が亢進し続けていると高血圧となる。腎動脈に狭窄があると、傍糸球体装置の輸入細動脈の圧受容体で感知する圧が低く、レニン分泌が亢進し、高血圧が発症する。また、高血圧は、糸球体内圧を上昇させ、腎機能障害を進行させるため、悪循環に陥ることになる。
腎臓は血圧が上昇すると、尿中へのNa+排泄量を増やして体液量を減らし、血圧を下げようとする。腎臓は、『正常人』では、過剰に食塩を接種しても血圧を上げずに排泄している。
つまり以下の機構により、傍糸球体装置は、糸球体濾過率(GFR)を一定に保ち、水・電解質の調節と血圧の調節を行っている。
http://hobab.fc2web.com/sub4-RA.htm
この機能のレニン・アンジオテンシン系を図示してみると、下図のようになる。
アンジオテンシノーゲンがレニンでアンジオテンシン(1〜10)に切断され、アンギオテンシンコンバーテイングエンザイム(ACE)によりアンジオテンシン?(1〜8)に変換され、AT1受容体やAT2受容体に作用する。AT1受容体に作用するところをブロックする薬剤がARBである。
ACE=angiotensin-converting enzyme 1, ACE2= angiotensin-converting enzyme 2, AT1=angiotensine? type 1 receptor, AT2=angiotensine? type 2 receptor, AT4=angiotensine? type 4 receptor, AP=aminopeptidase (-A, -B, -M, -N), B1/B2=bradykinin receptor type 1 and 2, CAGE=chymostatin-snesitive ANG ?-generating enzyme, DPA?=dipeptidylamoinopeptidase ?, Mas-receptor=ANG(1-7)-binding receptor, NEP=neprilysin, PEP=polyl endopeptidase, POP=prolyl oligopeptidase, TOP=thimet oligopeptidase, tPA=tissue-type plasminogen activator. Vaajanenらの図表を改変 2008
アンジオテンシン(1-7)【Ang-(1-7)】は、強力な昇圧物質であるアンジオテンシン?の分解産物の一つであるが、さようはその逆で、血管拡張、血圧低下、Na利尿、血管平滑筋の増殖抑制、心機能保護作用である。その合成酵素が2000年に同定されたアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)である。また2003年にプロトオンコジーンのMas受容体が、Ang-(1-7)の受容体であることも同定された。
ACE2ノックアウトマウスが心不全や腎障害を呈すること,Mas受容体ノックアウトマウスが血圧変動や心拍変動の変化を呈すること,ACE2過剰発現マウス,ACE2の遺伝子治療は降圧や血管内皮機能の改善作用などを有することが明らかになった。
これ以降、ACE2/Ang-(1-7)/Mas受容体系は、従来のAng変換酵素/AngII/AT1R系の昇圧系に拮抗するシステムであるという新しい概念が確立された。
http://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiArticleDetail.aspx?BC=924305&AC=11953
この新しいレニンアンジオテンシン系は脳内にも存在しており、神経性循環調節において重要な役割のになっている。
https://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiArticleDetail.aspx?BC=286200&AC=7888
異常の関係を簡単にまとめると以下の図のようになる。