メニエール病の画像診断  山根英雄 名誉教授
2015-04-20 08:36
川村内科診療所
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2015年4月16日 ホテルキャメロットジャパン
演題「メニエール病の画像診断 〜メニエール病は画像診断できる〜」
演者:大阪市立大学大学院医学研究科耳鼻咽喉病態学 名誉教授 山根英雄 先生
内容及び補足「
基本的な情報:
1861年にフランス医師Prosper Meniereがめまいの原因の一つに内示性のものがあることを報告してから名前が付いた。
厚生省特定疾患研究班調査の報告によると、女性に多く、発症年齢は30歳代後半から40歳代前半にピークを持つ。有病率は人口10万人当たり15〜18人であるが、地域差もあり、多いところでは25〜38人に上っている。
肥満者の割合が少なく、性格では几帳面、神経質な人が多く、精神的、肉体的疲労、ストレス、睡眠不足などの状況下において起こりやすいといわれている。

病因:
なんら誘引なく突発的に生じ、回転性の激しい眩暈が30分から数時間にわたり起こり、めまい発作中に、悪心、嘔吐、冷汗、顔面蒼白、頻脈などの自律神経症状を伴うことが多い。
めまい発作時に難聴や耳閉感、耳鳴りなどの蝸牛症状を随伴することが特徴的である。
蝸牛症状は、めまい発作と同時に出現・悪化しめまいの寛解とともに正常化したり、軽快したりすることが多い。
めまい発作よりも先に蝸牛症状が出現することもしばしばある。
難聴の程度は、病初期においては軽度の低音障害型であるが、発作を繰り返すうちに高度となり、全周波数にわたり障害される。自覚的には、難聴があるにもかかわらず、少し大きな音や高い音が響いて大きく聞こえるようになる補充現象がみられることがある。

診断:
メニエール病診断基準(前庭機能異常に関する調査研究班2008年度作成、 2009年度修正)
? メニエール病確実例
難聴、耳鳴、耳閉塞感などの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する。
(解説)
メニエール病の病態は内リンパ水腫と考えられており、下記のような症状、所見の特徴を示す。
○めまいの特徴
1)めまいは一般に特別の誘因なく発生し、嘔気・嘔吐を伴うことが多く、持続時間は10分程度から数時間程度である。なお、めまいの持続時間は症例により様々であり、 必ずしも一元的に規定はできないが、 数秒?数十秒程度の極めて短いめまいが主徴である場合、 メニエール病は否定的である。
2)めまいの性状は回転性が多数であるが、 浮動性の場合もある。
3)めまい発作時には水平回旋混合性眼振が観察されることが多い。
4)めまい・難聴以外の意識障害、複視、構音障害、嚥下障害、感覚障害、小脳症状、その他の中枢神経症状を伴うことはない。
5)めまい発作の回数は週数回の高頻度から年数回程度まで多様である。また、家庭、職場環境の変化、ストレスなどが発作回数に影響することが多い。
聴覚症状の特徴
1)聴覚症状は、 おもにめまい発作前または発作と同時に発現・増強し、めまいの軽減とともに軽快することが多い。
2)聴覚症状は難聴、 耳鳴、 耳閉塞感が主徴で、 これらが単独、 あるいは合併してめまいに随伴、消長する。 また、強い音に対する過敏性を訴える例が少なくない。
3)難聴は感音難聴で、病期により閾値が変動する。また、補充現象陽性を示すことが多い。発症初期には低音域を中心とし可逆性であるが、 経過年数の長期化とともに次第に中、高音域に及び、不可逆性となることが多い。
4)難聴は初期には一側性であるが、 経過中に両側性(メニエール病の両側化)となる症例がある。この場合、両側化は発症後1?2年程度から始まり、 経過年数の長期化とともに症例数が増加する。
○診断に当たっての注意事項
1)メニエール病の初回発作時には、 めまいを伴う突発性難聴と鑑別ができない場合が多く、 上記の特徴を示す発作の反復を確認後にメニエール病確実例と診断する。
2)メニエール病に類似した症状を呈する外リンパ瘻、内耳梅毒、聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性疾患、 小脳、 脳幹を中心とした中枢性疾患など原因既知の疾患を除外する必要がある。
これらの疾患を除外するためには、 十分な問診、 神経学的検査、平衡機能検査、聴力検査、CT、MRIなどの画像検査などを含む専門的な臨床検査を行い、 症例によっては経過観察が必要である。
3)難聴の評価はメニエール病の診断、 経過観察に重要である。 感音難聴の確認、 聴力変動の評価のために頻回の聴力検査が必要である。
4)グリセロール検査、蝸電図検査、フロセミド検査などの内リンパ水腫推定検査を行うことが推奨される。

? メニエール病非定型例
下記の症候を示す症例は、 内リンパ水腫の存在が強く疑われるのでメニエール病非定型例と診断する。
1.メニエール病非定型例(蝸牛型):難聴、耳鳴、耳閉塞感などの聴覚症状の増悪、軽快を反復するがめまい発作を伴わない。
(解説)
1)聴覚症状の特徴は、 メニエール病確実例と同様である。2)グリセロール検査、蝸電図検査などの内リンパ水腫推定検査を行うことが推奨される。
3)除外診断に関する事項は、 メニエール病確実例と同様である。
4)メニエール病非定型例(蝸牛型)は、病態の進行とともに確実例に移行する例が少なくないので、経過観察を慎重に行う必要がある。
2. メ ニエール病非定型例(前庭型):メニエール病確実例に類似しためまい発作を反復する。一側または両側の難聴などの聴覚症状を合併している場合があるが、 この聴覚症状は固定性でめまい発作に関連して変動することはない。
(解説)
1)この病型は内リンパ水腫以外の病態による反復性めまい症との鑑別が困難な場合が多い。 めまい発作の反復の状況、 めまいに関連して変動しない難聴などの聴覚症状を合併する症例ではその状態などを慎重に評価し、内リンパ水腫による反復性めまいの可能性が高いと判断された場合にメニエール病非定型例(前庭型) と診断すべきである。
2)前項において難聴が高度化している場合に、 めまいに随伴した聴覚症状の変化を患者が自覚しない場合がある。 十分な問診と、 必要であれば前庭系内リンパ水腫推定検査であるフロセミド検査を行うなどして診断を確実にする必要がある。
3)除外診断に関する事項は、 メニエール病確実例と同様である。
4)メニエール病非定型例(前庭型)の確実例に移行する症例は、 蝸牛型と異なって少ないとされている。 この点からも、 この型の診断は慎重に行うべきである。

原因既知の疾患の除外
メニエール病確実例、 非定型例の診断に当たっては、 メニエール病と類似の症状を呈する外リ ンパ瘻、 内耳梅毒、聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患など原因既知の疾患を除外する必要がある。

http://www.secand.jp/work/img/pdf/099-1.pdf

内耳および蝸牛の構造:

三半規管後蝸牛を拡大してみると下図のようになる。

http://blogs.yahoo.co.jp/crazy_tombo/46169637.html

検査:
? 聴覚検査:純音聴力検査と内耳性難聴の特徴である補充現象を検出する検査を行う。
? 平衡機能検査:
(ア) 発作時の検査:直視・フィレンツェル眼鏡、簡易神経検査以外はほとんど発作時には困難。
(イ) 発作後の検査:平衡障害評価、前庭障害評価
? 内リンパ水腫推定検査
(ア) グリセロール検査
(イ) 蝸電図検査
(ウ) フロセミ度検査
(エ) グリセロール負荷VEMP検査

治療:
? 発作期の治療:7%重層水点滴静注、鎮吐薬、抗不安・催眠薬、抗眩暈薬、血管拡張薬、ビタミンB薬、難聴対策としての副腎皮質ステロイド
? 発作抑制対策:
(ア) 保存的治療:ストレス軽減、過労防止、適度な運動、心理的アプローチなどの生活指導と血管拡張薬、ビタミンB、抗不安・向精神薬、漢方薬、浸透圧利尿薬などの薬物治療
(イ) 中耳加圧療法:メニエット、鼓膜マッサージ機
(ウ) 機能保存的手術治療:内リンパ嚢解放術
(エ) 選択的前庭機能破壊術:内耳中毒物質(ゲンタマイシン、ストレプトマイシン)鼓室内注入、前庭神経切断術
http://www.secand.jp/work/img/pdf/099-1.pdf

講演内容:
メニエール病患者250人以上のCT画像を解析した結果内耳の球形嚢と蝸牛をつなぐ導管が拡張していることを見出した。

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=101856


球形嚢(直径約2ミリ、高さ約3ミリ)の中にある耳石(大きさ10〜20マイクロメートル)が複数はがれ、下にあるリンパ液の通り道(結合管、直径約0.1ミリ、長さ2〜3ミリ)に詰まり、その結果蝸牛(かぎゅう)が内リンパ水腫になって聴覚障害を起こしたり、球形嚢の機能不全で平衡感覚を乱したりしていると考えられる。
http://scienceplus2ch.blog108.fc2.com/blog-entry-696.html

内リンパ液のLongitudinal Flowの破綻説.(Eur Arch Otorhinolaryngol 1991 ; 248 : 209―217.)の底流にある病態として、剥がれ落ちた複数の耳石が?〜?の細くなっている所で詰まりかけ、内リンパ流を障害し、内圧を上げ、内リンパ管水腫となり内リンパ管や内リンパ嚢が変化して、病態を形成・完成させていると考えられる。

https://www.med.or.jp/cme/jjma/newmag/14010/pdf/140102077.pdf
を改変。

我々は側頭骨を3DCTで撮影・解析し導管の部分を内側から撮影することにより、閉塞機転をより可視化できることを見出した。

閉塞パターンは蝸牛管(BRD)では、?完全に閉塞、?開口部がV字状、?開口部の閉塞、?中央部での閉塞、?開口部と中央部の閉塞、?完全閉塞に分類でき、球形嚢管(BSD)と内リンパ洞(BES)では、?開存、?狭窄、?完全閉塞に分類でき、メニエール患者の患側耳は、3DCT画像上、BRD、BSD、BESは溝の連続性が消失していた。
http://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/infolib/user_contents/youshi/6022.pdf
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