認知症の理解と援助 杉山 孝博 先生
2015-09-07 14:18
川村内科診療所
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2015年9月5日 はまぎんホール ヴィアマーレ
演題「認知症の理解と援助」
演者: 川崎幸クリニック院長 杉山 孝博 先生
内容及び補足「
公益社団法人『認知症の人と家族の会』を1980年に設立し手から35年たちました。
2002年に実施した「家族を通じてぼけの人の思いを知る調査」でいろいろなことが分かりました。
特に強く思ったのは認知症の人は、もうダメになっているのではなく「ぼけても心は生きている」ということです。
以下にいくつかのコメントを載せます。
キリスト教会の牧師と付属幼稚園の園長をしており、音楽が好きでオルガンやピアノを弾いたり、コーラスの指導をするのが好きだった岩切健さんは1987年認知症と診断され、13年後68歳で天に召されました。診断されて2年後に書かれたのが下の詩です。
『僕にはメロディがない 和音がない 響鳴がない
頭の中に いろいろな音が 秩序を失って 騒音を立てる
メロディがほしい 愛のハーモニーがほしい
この音に響音するものはもう僕から去ってしまったのか
力がなくなってしまった僕はもう再び立ち上がれないのか
帰ってくれ僕の心よ 全ての思いの源よ
再び帰ってきてくれ あの美しい心の高鳴りはもう永遠に与えられないのだろうか
いろんなメロディがごっちゃになって気が狂いそうだ
苦しい 頭が痛い』
認知症の患者さんの苦悩が適切に表現されている詩です。
http://www.ceres.dti.ne.jp/~makotu/taikenki.htm

『夕方になるといつも泣き出していた。なぜ悲しいのかと聞くと、「こんなにバカになってしまって ・・・」という言葉が返ってきた。また、近所に一緒に出かけると、人が通りかかると物陰に隠れようとしていた。「こんなにバカになった姿を人に見られたくない」、そんな言葉が返ってきた。』
いろいろな刺激を与えたほうが良いと考え、つい外に連れ出そうとしがちであるが、認知症患者さんにとっては、自分の変わった姿を知り合いに見られたくないという気持ちがあるので、抵抗するのはこういった気持ちがわかると、当然の反応だと、理解できます。

『「母さん、3月になったら、レコードでも買うて、きれいな服を着いや」。夫はまじめな顔で、じっと私を見つめていった。呆けても失わない夫の優しさがうれしかった。』
物忘れがひどい状況でも、ふとよい状況になることがあり、優しい言葉が言えるんです。

『「お父さん、本当にありがとう。よく世話をしてくれてありがとう。本当にやさしいんだから。いろいろ心配かけてごめんなさいね。いつまでも元気でいてね。」と。前後、支離滅裂な内容を言い続けていたのに、これが妻が私に言った最初で最後の正気の言葉となりました。(略)私は、この時、最後まで、妻をやさしく介護してやろうと決心しました。』
突然的な試行に戻って発現されることがあり、この感謝の言葉が、家族の支え・癒しになっています。

『デイサービスに行ってきて、「今日はどんなことをしていましたか」と聞くと、「変な年寄りがいるで」と言う。時には「工場に行ってきた」とか言う。若い時、割り箸工場で働いていたころを思い出しているのかと思った。
最近の記憶が思い出せずに過去の自分の状況に戻っているのです。この時に、「そうじゃないでしょう。デイサービスで○○してきたじゃない」と訂正しようと繰り返すと、「この人は自分に現実にやっていないことをしたかのように思い込ませようとしている」と思い込んで拒否反応を示すようになることもあるので、昔にタイムスリップしてその時の話をしていると考え、話を合わせる方がよい。

『痛いリハビリに抗議して「イヤ、イヤといったらイヤ!しないというたらしない。人がこれほどイヤと言うものを、皆は、何の権利があって無理強いするのか、その理由を。言え人権無視じゃあ」
身体が固くなるのを予防するために行っている痛いリハビリは、本人がその目的を理解できて初めて意味のあるものになるのに、現状の体が硬くなっている理由も、これから行おうとする痛いリハビリの意味が分からなければ、それこと人権無視の行動と思われても仕方がありません。

しかし、実際介護する家族の負担は、大変なものです。
介護家族のたどる四つの心理ステップがあります。
第一ステップ:戸惑い・否定
認知症の人の異常な言動に戸惑い、否定しようとします。悩みを他の肉親にすら打ち明けられないで一人で悩む時期です。
第二ステップ:混乱・怒り・拒絶
認知症の理解が不十分なため、どう対応してよいいか分からず混乱し、些細なことに腹を立てたり、叱ったりします。精神的・身体的に疲労困憊して認知症の人を拒絶しようとします。一番つらい時期です。医療・福祉サービスなどを積極的に利用することで乗りやすくなります。
第三ステップ:割り切り、または諦め
怒ったり、イライラするのは自分に損になると思い始め、割り切るようになります。諦めの境地に至ります。同じ認知症の症状でも問題性は軽く感じるようになります。
第四ステップ:受容
認知症に対する理解が深まって、認知症の人の心理を自分自身に投影できるようになり、あるがままのその人を家族の一員として受け入れることができるようになります。

認知症の介護において最大の問題は、認知症の症状の理解が困難なことにある。
今言ったことも忘れてしまう酷い物忘れ、家族の顔すら忘れてしまう失認、金銭・物に対する酷い執着、徘徊、失禁など多彩な症状を、介護者は理解できずに、振り回されてしまいます。認知症の症状を理解し、上手な対応が可能になるように工夫したのが『認知症を良く理解するための9大法則・1原則』です。最初は5大法則として発表しましたがその後改訂を重ね2009年8月以降現在の9大法則・1原則になりました。

第1法則 : 記憶障害に関する法則
*記銘力低下:話したことも見たことも行ったことも直後には忘れてしまうほどのひどい物忘れ。同じことを繰り返すのは毎回忘れてしまうため。
通常の物忘れは3回目に言っているとき、先に言ったことを思い出すので、4回目には言わなくなりますが、認知症があると4回目以上繰り返して言います。ここに差があると思います。
訂正してもまた繰り返されるので、今度は違った対応をしようとして、疲れていくのです。最初の対応も忘れているので、同じ返事を繰り返す対応で構いません。そう思うと少し疲れる程度が減ります。

*全体記憶の障害:食べたことなど体験したこと全体を忘れてしまう。
認知症の経過の中で食欲が亢進している時期があります。不思議とそういった時期は余分に食べても太りません。活動も亢進しているので、消費エネルギーが多くなっているからと思われます。その時には、『さっき食べたじゃない』と注意するのではなく、「今から作るので、それまでは、バナナ(おにぎり)を食べてできるまで待っていてください」といった対応をしましょう。この時期はお腹が空いているので、夜中におきだして、食べ物を探し回ることも起きます。その対応としては、軽食を寝る前に用意して、テーブルにおいておくのです。食べて食欲が満たされれば、寝てくれます。

*記憶の逆行性喪失:現在から過去にさかのぼって忘れていくのが特徴で、昔の世界に戻っています。
現在から記憶が遡って消失しているので、理解できません。その時は、年を取った伴侶のことも理解できません。
夕方になるとソワソワして落ち着かなくなったり、少しのことに声を荒げたり、「そろそろ家に帰らせていただきます」と徘徊を始めたりする『夕暮れ症候群』も、このために生じています。若いころの自分の記憶には、新しく家を建てたり、引っ越しをしたりした、記憶がないので、他人の家に行っている状況であり、この時間になると家に帰らなければいけないという考えになり、帰るためにそわそわしたり落ち着かなくなってくるのです。
そういう時には、一緒に一回りして帰ってくるのがよいでしょう。
鏡を見せて、現在の自分を認識させようとしても、若い自分が念頭にあるので認められません。暗くなって窓に映った年老いた自分を見て、「知らない年配の人がこちらを覗き見している。」と認識したり、注視していると「睨んでいる」と思い騒ぐことにもなります。窓を開けて人がいないことを示しても、また閉じると見えるので、不安収まりません。そうならないために、暗くなる前にカーテンを引きましょう。

第2法則 : 症状の出現強度に関する法則
より身近な者に対して認知症の症状がより強く出ます
幼児はいつも世話をしてくれる母親に対しては甘えたり、わがままと言ったりして困らせますが、他の人に対してはもっとしっかりした態度をとるものです。母親を絶対的に信頼しているから、わがままが出るのです。認知症の人も介護者を最も頼りにしているから認知症の症状を強く出すと考えるのは、類推のしすぎでしょうか?
そしてまた、私たち自身も、自分の家の中と他人の前とでは違った対応の仕方をするものです。よその人に対しては体裁を整えます。ですから、認知症の人が他人の前でしっかりした対応をするのを異常だと思うほうが、異常だと思いませんか。自分も相手も同じ立場だと理解できた時に初めて、相手にやさしくなれるのではないでしょうか。

第3法則 : 自己有利の法則
自分にとって不利なことは絶対に認めないというものです。ものがなくなっていつもと違うところから見つかった際に、「ほらごらんなさい、ここにしまっておいたのを忘れたのよ。ここにしまうのはおじいちゃんしかいないんだから」といわれても、「いや自分はそんなところへしまった覚えはない。誰かがそこにしまったんだ。」と必ず言い返します。その際に、難しいことわざなどを交えて行ったりすると、周囲の人はおじいちゃんを認知症になっているとはとても思えません。しかし、詳細を知っている人からすると言い訳の内容に明らかな誤りや矛盾が含まれているので、「都合の良いことばかり言う勝手な人」「嘘つきだ」と本人を低い人格の持ち主と考え、介護意欲が低下します。
こうした認知症の人の言動には自己保存のメカニズムが本能的に働いているに違いありません。つまり、人は誰でも自分の能力低下や生存に必要なものの喪失を認めようとしない傾向があり、その発現なのです。認知症がなければ、推理力や判断力などの知的機能により、相手がいっていることがより正しそうだと思えば、自分の記憶違いの可能性を考え、考えを修正しますが、認知症の人はこの知的機能が低下するため、本能的な行動が表面に出てしまうのです。

第4」法則 : まだら症状の法則
正常な部分と認知症として理解すべき部分とが混在する。初期から末期まで通してみられます。常識的な人だったらしないような言動を、お年寄りがしているため周囲が混乱しているときには「認知症問題」が発生しているのだから、その原因になった言動は「認知症の症状」であるととらえましょう。
大事な着物がみあたらなくて隠したでしょう。と身に覚えのないことを、毎日責められると、誰でもパニックになるに違いありません。同じことを寝たきり全面介助が必要なおばあちゃんがいった場合には、「またおばあちゃんがおかしなことを言っている。どうせ本気で言っているわけではないので、聞き流しておこう。」と思えるはずです。一見元気な状況下で言われるので、辛いのです。実は、こういった些細な思い違い考え違いは、認知症のない普通の人でも、時に見られることなのです。会社で非常に有能で素晴らしい判断力や企画力を発揮する人が家に帰ると「粗大ごみ」扱いされるのですから。
普通の人にも見られるまだら症状が、認知症の人ではより強く高頻度に見られているだけなのだと理解すれば、広い気持ちで認知症の人と接することができるようになるのではないでしょうか。

第5法則 : 感情残像の法則
言ったり、聞いたり、行ったことはすぐ忘れます(記銘力低下の特徴)が、感情は残像のように残ります。理性の世界から感情の世界へ移行しているのです。
弱肉強食の世界に住む動物たちは、相手が敵か味方か、安心して気を許せる対象化、否かを速やかに判断し、感情として表現します。認知症の人も同じような存在であり、安全で友好的な世界から抜け出てしまったような状況にある認知症の人は、感情を研ぎ澄まして生きざるを得ない世界の中におかれているのです。
感情が残ると言っても、悪い感情ばかりが残るわけではないので、良い感情が本人に残るように接することが大切です。「本人の言うことを受け入れて、穏やかに対応するのが良いと先生は言われますが、介護をする身にもなってください。いうことを聞かず、迷惑なことばかりする人にいい顔はできませんよ」と介護の人は訴えられます。そいった人に対して、私は「毎日慣れない介護をし続けなければならないあなたの気持ちはよくわかります。しかし、この時期は介護者にとっても本人にとっても一番つらい時期なのです。良い感情を与えるようにした方が、結局あなたにとっても楽になるはずです。」と答えています。そのためには、四つのコツがあります。
1. ほめる、感謝する:「上手ね」「ありがとう。助かったわ」などの言葉を言い続けます。
2.同情(相槌をうつ):「ああ、そう」「そういうことがあったのですか」「大変ですね」のように相槌を打つことです。

3.共感:「よかったね」を話の終わりに付け加えます。「ご飯美味しかった?よかったね」「その着物よく似合いますよ。良かったね」「雨が上がって晴れましたよ。よかったね」というようにします。なぜか、「よかったね」を話し続けると本人は介護者との間に共感を持つようになり、穏やかな表情になってくるのは間違いありません。混乱の真っただ中にある介護者の方は「よかったね」から話してみてください。

4.謝る、事実でなくても認める、演技をする。認知症の人は『忘れたことは本人にとって事実ではない』『本人の思ったことは絶対的な事実である』という原則があります。食べたことを忘れてしまえば「食べていない」というのが本人にとっての事実になりますし、「お金を貸した」と思い込んでいれば、「借りた金を返さないのはけしからん。返してくれ」となります。この思いに対して「ご飯は食べたばかりでしょう」「借りてもいないのに変なことを言わないで」と言っても、通用しないばかりか、ますますこだわりが強くなって悪感情のみが残ってしまいます。そういった場合には、「今夕飯の支度をしているのでもう少し待っていてください」「今は手元にお金がないので、明日銀行で下してお返しします」と、本人の思い込みをいったん受け入れて、別の方向に結論を持っていく方が本人の納得を得やすいのです。本人の世界に合わせてセリフを考え、演技をする俳優になったつもりで対応するのが良いのです。
 「ごまかしたり、嘘をつくことは、良心がとがめて、とてもできません」と介護に慣れていない介護者は言います。そのような人に対して、私は、「ドラマで悪役を演じている俳優は、悪役を演じることを悩んでいないでしょう。あなたも認知症の世界で悪役を演じているつもりで割り切ってください」と話すことにしています。

第6法則 : こだわりの法則
ある一つのことに集中すると、そこから抜け出せなくなり、周囲が説明したり、説得したり、否定したりすればするほど、逆にこだわり続けるというのが特徴です。本人が安心できるようにもってゆくことが大切です。そのための方法として、
1.そのままにしておく:箪笥から着物を出して並べる人に対して、そのままにしておくのです。大事な着物がなくなったかもと不安になりだしているのであれば、見えなくなるとまた心配になり、出して広げることになります。落ち着くまで、そのままにしておけばよいのです。
2. 第三者に登場してもらう:「身近な人に激しい症状を指名、他人にはしっかりした言動をする」という特徴を応用するのです。家にこもりっきりで、数か月間入浴や洗髪をしない女性がいました。家族が「お風呂に入らないと病気になるよ」とお風呂を勧めても入らず、家人から相談を受けました。私が訪問診療をするようになると、私の訪問を心待ちにされるようになり、訪問の前日には、入浴して清潔な下着に着替え、さらには美容院にもいくようになりました。
3. 場面転換をする:関心を別に向けることです。夜中に大きな声を出す人に対して、「真夜中だし、近所迷惑になるので静かにしてください」と説得しても効果がありません。それよりも「お父さんの大好きなおまんじゅうがあるので食べませんか」とすすめ、「美味しいものを食べると眠くなるわね。私は休みますから、お父さんも寝てくださいね」という風に話を持っていくと寝てくれることもあります。
 昔の思い出の場面に切り替えることも有効です。趣味や興味があることを話してもらうのも手ですが、話が止まらなくなることもあるのは了解しておきましょう。
4.地域の協力理解を得る:夜間の騒音、ごみだし、隣人への被害妄想など、地域社会とかかわりを持つ認知症の症状は少なくないので、「明日は我が身」「お互い様」という理解が地域に根付いていれば、「認知症になっても安心して暮らせる地域づくり」が可能になると確信しています。
5.一手だけ先手を打つ:失禁が始まると介護者の負担が極端に増えます。「タイミングを合わせてトイレに誘導することは、介護の視点ではよいことですが、24時間一人で実行することは大変です。それでも失敗が起こることがあります。畳の上に水を通さない上敷きを強いたらどうでしょう。始末が楽になり、イライラが軽くなりますよ」と話しています。失禁を抑え込むことができなくても、後始末が簡単だと思えるだけで精神的なストレスは軽くなるものです。
 手に付いた大便をトイレの壁やタオルなどに塗り付けて汚すことを弄便(ろうべん)といいます。わざと便を塗り付けているのではなく、手に付いたべっとりしたものをぬぐってしまおうとして行動しているのです。しかもやったことを覚えていないので、叱ったり責めても行動は変わりませんし、介護者の怒りが増すだけです。トイレの壁に紙を貼っておき汚れたら取り替えるようにし、汚れてもよい布やタオルをかけておき、家族が使うタオルは別においておくようにする方が良いでしょう。
6.お年寄りの過去を知る:かつての体験が背景にある問題行動もあるので、強烈な体験やこだわりを理解し、不安感を解消するような対応をしてみましょう。例えばハイキングに行って子供を見失って必死に探し回った体験があり、歩き続けなければ気持ちがおさまらない人がいました。「心配でしたね。でも子供さんが見つかっておかったですね」と繰り返し話しかけることによって、徘徊がおさまった場合がありました。
7.長期間は続かないと割り切る:金銭やモノに対する執着のように生存に直結する症状は何年も続くことがありますが、ほとんどの症状は、半年から一年程で別の症状に変わっていきます。「1〜2年前に困っていた症状は何ですか」と聞きますと、現在悩まれている症状とは別の答えが返ってきます。「1〜2年前に困っていた症状は、今は消えているでしょう。同じように、現在の症状も、半年から一年程で消えると思います。何年も続くものと決めつけないで、気楽に考えませんか」と話すようにしています。

第7法則 : 作用・反作用の法則
認知症の人に対して強く対応すると、強い反応が返ってきます。認知症の人と介護者の間に鏡を置いて、鏡に映った介護者の気持ちや状態が、認知症の人の状態です。そのままにしても差し支えないものであればそのままにしてみましょう。

第8法則 :認知症症状の了解可能性に関する法則
第1〜7法則でまとめたような認知症の特徴を考えれば、認知症の症状のほとんどは、認知症の人の立場に立ってみれば十分理解できるものであるという内容の法則です。
 夜中に目を覚まして家族の名前を呼んで起こすことは時に見られます。私たちが旅館に泊まって夜中に目を覚ました時を考えてみてください。自分の寝ている所がいつもの部屋と様子が違うので、誰でも一瞬不安を感じます。次の瞬間に旅館に泊まっていることを思い出して安心し、再び何事もなかったかのように眠ることができますが、診指自分がいくら考えても、なぜここにいるのかがわからなかったとしたらどうでしょう。「いったいなぜこんな知らないところにいるのだろう」「家族は自分を置き去りにして、どこかへ行ってしまったのではないか」「眠っている間に誘拐されて、ここに閉じ込められているのではないか」などと様々なことが頭に浮かんできて、数分後にはひどい恐怖に襲われることになるでしょう。そうなったとき誰もいなければ一番頼りになる人の名前を呼んでその人が来てくれるまで呼び続ける気持ちになることは理解できると思います。
 大切なことは、夜中に目が覚めた時に、今いる場所が自分の部屋だとわかるようにしてあげることです。部屋や廊下を明るくしておき、いつも使っている洋服やたんすなどがすぐにわかるようにしておくことや家族の声や好きな音楽を録音したテープを流すなど、いろいろな音が聞こえるようにしておくのも一つの方法です。

第9法則 :衰弱の進行に関する法則
認知症の人の老化の速度は非常に速く、認知症になっていない人の約3倍のスピードです。正常の高齢者の4年後の死亡率が28.4%であるのに、認知症高齢者の4年後の死亡率は83.2%と聖マリアンナ医大長谷川名誉教授が報告されています。


介護に関する原則:認知症の人の形成している世界を理解し、大切にし、その世界と現実とのギャップを感じさせないようにすることが原則です。

参:公益社団法人:認知症の人と家族の会
「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条
があります。参考に上げておきます。
1.見逃すな「あれ、何かおかしい?」は、大事なサイン
2.早めに受診を。治る認知症もある。
3.知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。
4.介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。
5.サービスの質を見分ける目を持とう。
6.経験者は知恵の宝庫。いつでも気軽に相談を。
7.今できることを知り、それを大切に。
8.恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう
9.自分も大切に、介護以外の時間を持とう。
10.往年のその人らしい日々を。

参考サイト:
認知症の理解と援助〜行動・心理症状(BPSD)の理解と対応〜
認知症をよく理解するための9大法則・1原則」工夫と発展の経緯f
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