2017年5月30日
演題「糖尿病診療のピットフォール:内分泌からみた視点」
演者:福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科教授 柳瀬 俊彦 先生
場所: 横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ
内容及び補足「
糖尿病治療のトレンドは
1. 血糖変動が少ない=食後高血糖、低血糖を起こさない
2. インスリンをあまり出させない
3. 太らせない
である。これらの要求を満たす薬剤としてDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬がある。
テネリアの投与で最高血糖値が206→191、最低血糖値88→101、平均血糖値141→135と変化しており、上記条件1を満たしている。
カナグルの投与で体重減少し、内臓脂肪も減少している。
作用機序的に見て近位尿細管近位部のSGLT2に作用するだけでなく、効果は弱いが近位尿細管遠位部のSGLT1にも阻害作用を有する。
https://medical.mt-pharma.co.jp/intro/can/action.shtml
小腸におけるグルコースの吸収は以下のステップがある。
1. 小腸上皮細胞の基底膜に存在するNaK-ATPaseが働き、一時的に小腸上皮細胞内のNa+濃度が低下する。
2. 小腸上皮細胞内のNa+濃度の不足を補うために非撹拌水層に存在するNa+が細胞内に入る。Na+が細胞内に入ると同時にグルコースが一緒に細胞内に入る(Na+/グルコース共輸送体)。この刷子縁膜側で働くトランスポーターSGLT1である。
3. 細胞内に入ったグルコースは基底膜側を促進拡散で透過する。ここで働くトランスポーターがGLUT1、GLUT2である。
http://www.yakushinkai.co.jp/member/wp-content/uploads/Y%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E2%91%A1SGLT%EF%BC%91%E3%83%BB%EF%BC%92.pdf#search=%27SGLT1%E3%81%AE%E5%88%86%E5%B8%83+%E8%85%B8%E7%AE%A1%27
カナグルのSGLT1阻害作用により、小腸における糖の吸収が遅くなり、小腸末端まで糖が吸収されずに運ばれると商業下部にあるL細胞からGLP-1が分泌され血糖値の低下に一役買うことになると考えられる。
実際人においてカナグルの投与により血中のGLP-1濃度の上昇を認めている。
http://images.biomedsearch.com/23412078/2154.pdf?AWSAccessKeyId=AKIAIBOKHYOLP4MBMRGQ&Expires=1496361600&Signature=TZiYh2QvfQvc3Ql5Yx%2Bi5XLWRZo%3D#search=%27Diabetes+Care+36+215461+2013%27
テネリアとカナグルの併用でどうなるかを見た研究もある。
テネリア0.3mg/kgとカナグル3?/?、10?/kgの併用において著明にGLP-1の上昇を認めているが、カナグルの量による変化は見られていない。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1347861315000687
自験例でも平均血糖値150→134、最高血糖値230→180、最低血糖値67→87と理想的な変化をきたしている。
テネリアとカナグルの合剤であるカナリアの発売後のデータに注目したい。
希少疾患は必ずしも希少疾患に非ず!?
17α-水酸化酵素欠損症:第10染色体にあるステロイド合成酵素のP450c17の先天的な障害により、ミネラルコルチコイド過剰による高血圧と性ステロイドの欠乏による性腺機能不全をきたす常染色体劣性遺伝性疾患。症例報告数としては世界中で約120余例。先天性副腎過形成の中で占める頻度は国内で2.6%(講演でのスライド:ステロイド産生異常症の推定患者数1.9%)と報告されている。
臨床症状
主症状:
1. 高血圧:低レニンACTH高値
デオキシコルチコステロンやコルチコステロンの過剰産生による若年性高血圧(まれに高血圧が認められない症例もある)
2. 性腺機能低下症(軽症例46XY症例で外性器の男性化を認める症例や軽症46XX症例で月経を認める例もある)
外陰部は女性型。原発性無月経、乳房発育不全などの二次性徴の欠落。男女とも性毛(腋毛、恥毛)の欠如。
副症状:ミネラルコルチコイド過剰による低K血症に伴い、筋力低下を認めることがある。
高血圧があり不妊症に悩んでいる人に軽症の17α-水酸化酵素欠損症の患者が紛れ込んでいる可能性がある。
症例:38歳女性 低レニン活性の精査
生理はほぼ順調で、血圧130/84、156/80-90程度の白衣高血圧があり血清レニンを測定したところ0.1?/ml/hと低値であり精査依頼され来院。不妊も認めていたが、陰毛や乳房の発達は良好であった。
17α-水酸化酵素活性が30%程度しかなかった。
http://www.nanbyou.or.jp/entry/185
軽度の高血圧があり、体毛が薄かったり、不妊や生理不順の有る症例においては17α-水酸化酵素欠損症の軽症例が紛れ込んでいる可能性があるので、一度この疾患の可能性について考えてみよう。
糖尿病症例の40-60%に高血圧合併がある。機序としては、高インスリン血症によりNa貯留が起こること、腎症の進行や動脈硬化の進行が血圧上昇に関与しているとされている。
アルドステロンは骨格筋におけるインスリンシグナルやグルコースの取り込みを阻害し、インスリン抵抗性を惹起する。一方、高インスリン血症はアルドステロン合成を刺激する。
したがって、アルドステロン過剰は糖尿病における治療抵抗性高血圧の原因となる。Reinckeらは23%の糖尿病患者にPAを認めたとする報告や
https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/abstract/10.1055/s-0029-1246189
非糖尿行患者との間に差は認めなかったとする報告などがあるが、少なくとも原発性アルドステロン症(PA)の患者は糖尿病患者において少ないものではないことがいえる。
http://hyper.ahajournals.org/content/53/4/605
自験例で調べてみると糖尿病合併高血圧124例中14例でPAと確定でき11%の頻度であり、同様の結果であった。原発性アルドステロン症患者とそうでない人たちの違いは、糖尿病歴はPA群で5.21±6.51年、非PA群で13.73±11.42年、高血圧歴はPA群で12.29±11.51年、非PA群で10.15±11.90年と糖尿病歴に差が認められた。
PA例43例において糖尿病がある患者とそうでない患者の比較をしてみると、年齢はDM例で66.45歳、非DM例で55.07歳、高血圧の治療期間はDM例で17.44年に対して、非DM例では7.55年と糖尿病患者においてPAの診断が遅くなっている可能性が示唆される結果となった。
高血圧合併例の糖尿病患者で治療抵抗性の場合にはPAの可能性を考え、血液検査を行ってみよう。
サブクリニカルクッシング症候群
副腎性クッシング症候群は、副腎皮質から糖質コルチコイドが過剰に分泌される病態で特徴的な身体所見を有し、糖尿病、高血圧、骨粗鬆症などの重篤な疾患を併存する。サブクリニカルクッシング症候群は、クッシング症候群特有の身体的特徴はないが、クッシング症候群同様の併存疾患を有する。
クッシング症候群の身体的特徴としては、中心性肥満、満月様顔貌、皮膚線状、バッファロー様型、細い四肢などがある。
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/nyusen/sick/adrenal/a_sick_kind1.html
オステオカルシン:骨の非コラーゲン性蛋白質として25%を占める49個のアミノ酸からなる分子量約5500の蛋白質である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%B3
骨芽細胞で合成された後、分子中に含まれる3個のグルタミン酸残基がビタミンK依存的にγ-カルボキシル化され、Ca2+に対する親和性が大きく亢進して、ヒドロキシアパタイトと強固に結合し骨に埋め込まれるが、僅かな量は血中を循環する。血中オステオカルシンは、非あるいは低カルボキシル化状態のオステオカルシン(GluOC)と三つのグルタミン酸残基すべてがカルボキシル化されたGlaOCの二つの形態で存在している。ホルモン活性を持つのはGluOCである。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/145/4/145_201/_pdf
2007年に、Karsentyらのグループにより、オステオカルシンノックアウトマウスでは糖負荷の際のインスリン分泌低下、血糖値の上昇、インスリン投与時の血糖値の低下の減少がみられ、インスリン感受性の低下も認められ、糖代謝異常を呈することが示された。
また、ラットβ細胞由来細胞株INS-1やマウス単離ラ氏島、あるいは脂肪細胞をGluOCで刺激すると、インスリンあるいはアディポネクチンの発現が誘導されることも示され、GluOCによる直接作用であること、GlaOCにはそのような効果が認められないことが示され、GluOCが活性型であると考えられている。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17693256
骨芽細胞におけるインスリンシグナリングは、1.骨芽細胞の分化を阻害する転写因子twist2の発現を抑制し、骨芽細胞の分化を促進させ、その結果オステオカルシンの合成が促進される。2.転写因子FoxO1の活性を抑制して、破骨細胞の分化を抑制するオステオプロテジェリンの発現を抑制する。その結果破骨細胞が活性化して骨吸収が亢進する。骨吸収窩の産生環境(pH4.5程度)はGlaOCを脱カルボキシル化し、ホルモン活性を持つGluOCへと変換させる。すなわち、インスリンは骨に作用して骨形成・骨吸収の両面からGluOCの産生を促し、そのGluOCは膵臓に働きかけてさらにインスリンの合成・分泌を促進する。その一方で、GluOCじゃ脂肪細胞のインスリン感受性を高め、エネルギー源の利用効率を亢進するため「骨の代謝回転→インスリンシグナリングの活性化→エネルギー代謝活性化→骨代謝活性化」というポジティブサイクルが成立する。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/145/4/145_201/_pdf
糖質コルチコイドによる耐糖能低下の機序としては、1.肝臓での糖新生、亢進2.骨格筋における糖取り込みの低下、3.高グルカゴン血症(ラ氏島過形成、グルカゴン産生細胞の増加と増大)が関与している。
現在サブクリニカルクッシング症候群の厚生省の診断基準は以下のものが採用されている。
1.副腎腫瘍の存在(副腎偶発腫)
2.臨床症状:クッシング症候群の特徴的な身体徴候の欠如(注 1)
3.検査所見
1)血中コルチゾールの基礎値(早朝時)が正常範囲内(注 2)
2)コルチゾール分泌の自律性:
オーバーナイト・デキサメサゾン抑制試験の場合、スクリーニング
に 1mg の抑制試験を行い、血中コルチゾール値 3μg/dl 以上の時、本疾患の可能性が考えられる。
ついで 8mg の抑制試験を行いその時の血中コルチゾール値が 1μg/dl以上の時、本疾患を考える。
3)ACTH分泌の抑制:
ACTH 基礎値が正常以下(<10pg/ml)あるいは ACTH 分泌刺激試験の低反応。
4)副腎シンチグラフィーでの患側の取り込みと健側の抑制
5)日内リズムの消失
6)血中 DHEA-S 値の低値(注 5)
7)副腎腫瘍摘出後、一過性の副腎不全症状があった場合、あるいは付着皮質組織の萎縮を 認めた場合
検査所見の判定:1)2)は必須、さらに 3) - 6)のうち 1 つ以上の所見、あるいは7)がある時、陽性と判定する。
1、2 および 3 の検査結果陽性をもって本症と診断する。
ホルモン濃度が高い場合、組織の正常のfeedback機構から逸脱した結果によるものかを判定するため、DEX負荷試験はACTH分泌を抑制した際のcortisol分泌抑制を見るものである。
デキサメサゾンは糖質コルチコイド活性が極めて強い合成ステロイドホルモンである。
デキサメサゾンの投与によって糖質コルチコイドが過剰だと誤解した脳下垂体系は、正常ならばCRHやACTHの分泌を抑制して、糖質コルチコイドの合成は抑制されて、その代謝産物である尿中17-OHCSも減る。
抑制されない場合はfeedback経路のどこかに異常があると考えられる。大半の健常者ではこの薬物が朝の血漿コルチゾールを1.8μg/mL以下に抑制するが,対するクッシング症候群患者では事実上常にこれよりも高値となる。
したがって下垂体腺腫に基づくクッシング病ではACTHおよびコルチゾールの分泌が抑制されるが、 異所性ACTH症候群と副腎腫瘍の場合にはこれらの分泌が抑制されない。
就寝時にデキサメサゾンを服用し、翌朝に血漿中のコルチゾールが3μg/dL以下まで抑制されていれば 抑制試験陽性とされる。
32歳女性でデキサメサゾン(1?)の抑制試験で5.2→1.0μgと抑制された患者さんで、0.5?で抑制されなかった人がいた。静脈サンプリングを行うと右副腎でACTHが244.4(左5.8)と明らかな左右差があり、右副腎摘出を行った。手術により、血圧は140/100が130/80と改善し、耐糖能障害も消失した。
内臓脂肪が多い人と少ない人でコルチゾールの日内変動を見た研究がある。日内変動はほぼ同じような変化ではあるが、内臓脂肪が多い人の方がほぼ一日通してコルチゾールが高値である。
Mean ± SE plasma total cortisol levels sampled every 30 min over 24 h in the subjects with the least amount of IAF (1st tertile, ○; n = 7) and the subjects with the greatest amount of IAF (3rd tertile, ●; n = 7).(IAF:intra-abdominal fat)
http://ajpendo.physiology.org/content/296/2/E351
副腎疾患を予想せずに施行された腹部CT検査で副腎に腫瘍が発見される確率は0.35〜4.36%とされ、剖検での発見率はその4倍と言われている。全国200勝以上の医療機関1014施設を対象に行われた疫学調査で、平成11年度から14年度までの4年間で3239例の検討した報告がある。男性1662例51.3%、女性1512例1512例46.7%(性別記載ない症例65例2%)、平均年齢は58.0±13.0(男性58.2±12.5、女性57.8±13.5)で、50歳代後半が多く、右44.4%、左48.7%、両側6.9%で左右差は認めなかった。腫瘍径は平均で3.0±2.2?で1.1〜2.0cmが34.9%、2.1〜3.0cmが26.5%であった。
発見の契機は、健康診断が31.5%、腹部症状の精査が17.1%、高血圧精査が12.0%であった。
副腎偶発腫における病院別頻度は、ホルモン非産生腫瘍が51.0%、サブクリニカルクッシング症候群を含むコルチゾール産生腫が11.7%、褐色細胞腫8.7%、アルドステロン産生腺腫4.3%、副腎癌は1.4%であった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/95/4/95_4_629/_pdf
参:1994年〜2008年までの15年間の東北大学泌尿器科で腹腔鏡手術を行った副腎性クッシング症候群114例(男性29例、女性85例、クッシング症候群59例、サブクリニカルクッシング症候群55例)のデータを表にした。
酢部クリニカルクッシング症候群は、発見が困難なためか、クッシング症候群よりも高齢である。また、男性が多い傾向にあるが、発見腫瘍径には大きな差がなかった。
併存疾患は、両者とも高血圧、糖尿病が多いが、骨粗鬆症や骨折はクッシング症候群で圧倒的に多くみられた。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/31/3/31_171/_pdf
クッシング症候群とサブクリニカルクッシング症候群を区別するためには、1?のデキサメサゾン抑制試験でコルチゾール濃度が1.8μg/dLが必須である。ACTH基礎値が10pg/ml未満、CRTでのACTH低反応、深夜血中のコルチゾール濃度が5μg/dL以上(通常は15μg/dL以下)も有用である。
まとめると、以下のような診断基準が推奨される。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj/60/7/60_EJ12-0458/_pdf
治療として手術が選択されたときに合併症がどうなるかを見てみると、糖尿病:改善36例、不変27例、悪化1例、IGT:改善40例、不変31例、悪化4例、肥満:改善29例、不変36例、悪化4例、高血圧:改善48例、不変31例、悪化2例であった。
副腎癌の症例はおおむね腫瘍径が3?以上であった。
参考までに副腎皮質腫瘍(原発性アルドステロン症、クッシング症候群/サブクリニカルクッシング症候群、非機能性腺腫)の外科的治療の長期予後は以下の表のように報告されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjsts/29/1/29_26/_pdf
手術により必ずしも前例がよくなるわけではないと言える。
ターナー症候群:女性のうち4000人に一人の頻度で生じる染色体異常(45XO)で、低身長、性腺機能低下、翼状頚、外反肘などの身体的特徴を示す疾患で自然流産の原因の一つである。成人後の平均身長は139?と低い。女性ホルモンが正常に分泌されないので、二次性徴が起こらず、胸の発達や恥毛、わき毛の発育がなく、卵巣が発達しないので、卵子が産生されず、月経の発来もない。まれに卵子が産生されて排卵があり、受精しても(妊娠率1%程度)、妊娠維持のために必要なホルモンが不足するので、ほとんどが流産され
顎が小さく、耳介が尖っている。
http://plaza.umin.ac.jp/p-genet/atlas/06-2.html
翼状頚:首の周りの皮膚がたるんで、首から肩にかけてひだができている状態。
http://plaza.umin.ac.jp/p-genet/atlas/03-4.html
外反肘:手のひらを上に向けて手を伸ばした時、5〜15度ほどやや外側に曲がって緩やかな「く」の字を呈するのが正常であるが、この角度を越えて極端に外側に曲がっている状態。
http://blog.livedoor.jp/cheers2010/archives/65416997.html
aromatase欠損マウスにおいて認められるエストロゲン欠乏状態は肝臓にSteatohepatitisを起こすが、エストロゲンの投与により肝機能が改善する。
https://www.jci.org/articles/view/9575/pdf
テストステロン
テストステロンの疫学
2型糖尿病患者におけるテストステロン値を測定したメタ解析結果を見てみると健常人よりも低値を示している。
JAMA 2006;295:1288-1299
テストステロンは、女性ホルモンのように動脈硬化の予防には働かず、むしろ悪化させるという考えがあったが、近年の疫学調査では、低テストステロンの方がむしろ有害であるという報告が出てきている。
J Clin Endocrinol Metab, January 2008, 93(1):32-33
IDDMの少なくとも25%においては低ゴナドトロピンのため、4%においては、高ゴナドトロピンのためにFree Teststeronが低値であった。
J Clin Endocrinol Metab. 2011 Sep;96(9):2643-51
Multivariate-adjusted survival by quartile group of endogenous testosterone concentrations (1 is lowest, 4 is highest) in 2314 men 42 to 78 years old in EPIC-Norfolk 1993 to 2003.
Circulation. 2007;116:2694-2701
アンドロゲン受容体ノックアウトマウスは、エネルギー代謝の低下により晩発性肥満をきたす。Diabetes 54,1000-8,2005
CT-based body composition analysis of 40-week-old ARL−/Y and ARX/Y mice. A: CT-estimated amounts of visceral fat, subcutaneous fat, and muscle in the abdominal area of L2-L4. B: Representative CT images of ARX/Y (left) and ARL−/Y (right) mice at the L3 level. The pink and yellow areas represent the visceral and subcutaneous fat, respectively. *P < 0.01 compared with ARL−/Y, n = 4.
http://diabetes.diabetesjournals.org/content/54/4/1000
アンドロゲン受容体ノックアウトマウスでは、レプチンの血中濃度は増加しているが、食事摂取量は正常であったことから、レプチン抵抗性が存在する。
睾丸摘出による内因性アンドロゲンの供給遮断により、レプチンの脳室内投与による食事摂取抑制効果と体重減少効果の減少を認め、動脈硬化の促進と内臓脂肪の増加を認めた。
702例の中年男性を11年間追いかけると147例がメタボリックシンドロームに、57例が糖尿病に移行した。Total testosterone、Free testosterone、sex hormone-binding globulin(SHBG)の濃度で比較検討するとTotal testosterone(<15.6nmol/L)とSHBGが低値であることがメタボリックシンドロームや糖尿病になる独立した危険因子であった。
Diabetes Care 27 1036 2004
20人のAndrogen-deprivation therapy(ADT)を行った前立腺がん患者でを含む58名の男性で検討したところ、ADT群で明らかにBMIが上昇し、Total testosteroneとfree testosterone濃度が低下し、メタボリックシンドロームと内臓脂肪、高血糖がADT群で多く認められた。
http://ascopubs.org/doi/full/10.1200/jco.2006.05.9741
みちのく泌尿器癌研究グループによる103例の前立腺癌に対する一年間の内分泌治療により、体重は平均で3.8%、腹囲は4.1%、BMIは3.8%増加し、総コレステロールは9%、中性脂肪は21%、LDLコレステロールは10.8%、HDLコレステロールは5%、空腹時血糖値は4.6%、HbA1cは1.7%増加した。CTで調べた内臓脂肪は32.4%、皮下脂肪は35.4%増加し、筋肉量は臍レベルで腸腰筋の面積が7.9%(40例のデータ)減少していた。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/gakkai/sp/jua2014/201404/536167.html
メタボリックシンドロームになるマーカーとして、free testosterone よりもTotal testosteroneと相関が高い理由は、SHBGの値がTotal testosteroneの数値に反映されるからである。
Women's Health Studyの参加者のうち、ホルモン諜報を受けていない閉経後女性を対象にコホート調査を行った(新規2型糖尿病患者359例、対359例)SHBGが高値であれば2型糖尿病になるリスクは女性においては、1:0.16:0.04: 0.09とであった。Physicians' Health Study 2に参加した男性のコホート研究(新規2型糖尿病患者170例、対170例)では、0.10:0.03と減少した。
脂肪肝が改善すると、SHBGは増加し,LipogenesisはSHBGを低下させ、インスリン抵抗性の原因となる可能性がある。
また、インスリンは、肝臓のSHBG産生を抑制するので、インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症がSHBG低値の原因である可能性もある。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0804381#t=articleResults
Myostatin:骨格筋形成抑制因子
1997年に新しいTGFβファミリーに属するペプチド性増殖因子の一つとしてGDF8(Grouth and differentiation factor 8)が発見され、遺伝子破壊マウスが作成された。その表現型は全身の骨格筋が著しく肥大する今までにないものであった。GDF8はMyostationと呼ばれるようになった。
ロンドン大学のBullough博士は、特定の組織から産生され、その組織の大きさを制御する物質の存在を想定し、「カローン」と名付けたが、マイオスタチンは「骨格筋カローン」と言えるホルモンである。農学的には健康志向に即した高品質肉の創生への応用が、医学的には、筋ジストロフィーの治療への応用が期待される。
活性型マイオスタチンが体内にない動物や人が存在し、Belgian Blue種では牛マイオスタチン遺伝子の937番目から947番目までの11塩基の欠失によるフレームシフトで、成熟体領域の欠損が生じ、Piedmontese種では、牛マイオスタチン遺伝子の1056番目のグアニンがアデニンに点突然変異した結果、成熟体領域内の313番目のシステインがチロシンに置換されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/45/3/45_3_186/_pdf
人においてもドイツで報告された。この男児は、申請時のころより、手足の筋肉が発達しており、5歳にして3?のダンベルを軽々と持ち上げた。マイオスタチン遺伝子のイントロン部の点変異のため、素早い対応、丁寧な梱包ありがとうございました。プライシング以上によって、体内で成熟型マイオスタチンが作られないことがわかっている。現在までにこの男児には精神発達遅滞や心筋の異常はみられていない。母親はヘテロ変異とされ、運動選手として活躍していた。
Myostatin Mutation Associated with Gross Muscle Hypertrophy in a Child
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa040933