肩こりは、日本人の多くが悩まされている病気の1つです。特に女性に多くみられ、平成25年の国民生活基礎調査によると、8人に1人に肩こりの症状があるとされています
(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/04.pdf)。
「肩こり」について、夏目漱石は小説「門」の中で、「頸と肩の継目の少し背中へ寄った局部が、石のように凝っていた」と表現しています。それ以前は、「肩が張る」「打ち肩」と表現されることが多かったようです。かなり以前から、日本人は肩こりに悩まされていたようですね。
「外国人は肩がこらない」と聞かれたことがあるかも知れませんが、実際に肩がこらないのではなく、「肩こり」という表現の仕方やモノのとらえ方 (概念)がないのです。英語で「肩こり」を翻訳ソフトで調べてみるとStiff Shoulder(硬い肩)となりますが、実際にこの表現でうまく伝わる ことは少なく、Stiff Neck(硬い頸)、Stiff Back(硬い背中)と言うと問題なく伝わります。
そうはいっても、肩の症状を訴える頻度は圧倒的に日本人の方が多いようです。厚生労働省の調査では、生活のなかで不快に感じている症状のなかで、肩こりは、男性が腰痛に次いで2番目、女性はトップです。
五十肩といわれるような肩関節周囲炎や頸椎症などのように原因がある場合もあれば、いろいろと調べてみても、原因がわからない肩こりもあります。
肩こりを悪くする要因としては、精神的ストレス、姿勢の悪さ、運動不足、寝不足、過労、眼精疲労などがあげられています。
それにしても、なぜ日本人に肩こりが多いのでしょうか。
畳に直接座る文化から猫背が多いことのほか、欧米人に比べ、筋肉量が少ないこと、なで肩の人が多いことなども影響していると考えられます。
頭の重さは結構あるので、前かがみになると首から肩への負担がかなり増えます。
ある程度の筋肉量があると、首が比較的まっすぐになるので、前かがみの程度が少なくて済むことと、同じ重量を支える際に個々の筋肉の細胞にかかる 負担分が少ないことも肩こりが少ないことと関係しています。逆に首から肩にかけての筋肉量が少ないと、肩こりが生じやすいといえます。
なで肩の人は、指先の位置がイカリ肩の人よりも下に位置していることになり、その分、腕と手の重みが肩にかかっていると考えられます。なで肩の人は、両肩の位置を高めにする姿勢を意識すると肩こりの予防になるでしょう。
イラスト kasimo
高血圧がその原因と考えられていた時期もありましたが、低血圧の方にも肩こりは多くいます。現在では、同じ姿勢を取り続けること、眼精疲労、運動不足(筋力低下)、ストレスが原因として挙げられています。
今は特に、街中でも良くみられる、スマホをやっている時の姿勢が、この肩こりを作り、増やし、悪化させていることは間違いありません。
頭はかなり重量があり、前傾姿勢では、肩から首の後ろ側の部分にある筋肉(僧帽筋、板状筋、半棘筋や後頭筋群)で引っ張る形になり、長時間その姿勢を杖受けると、これらの筋肉が凝ってきて、硬く収縮したままになります。
酷くなると、頭痛や吐き気、めまいなどの症状が出てきますし、長時間これらの筋肉が硬直していると首の骨の状態が変化してストレートネックになってしまいます。
凝り固まった筋肉を、圧迫やマッサージでほぐしたり、湿布などを張ることにより症状は改善しますが、何よりも予防が第一です。
頭を背骨の真上に来るように姿勢を矯正することで、この負担がかなり軽くなります。
そこで、下のイラストにある「脇締め体操」をお勧めしています。30分に1回ぐらい一瞬でもよいのでこの姿勢を取っていただくことで、この首から肩にかけての負担が軽減します。
両手を後ろに回し、反対の手の肘を持って、脇を締めるようにして、両方の肩甲骨を寄せるようにしましょう(この際、おなかを引っ込めると、お腹のダイエットにも役に立ちます。
イラスト kasimo
身体が硬くて、手が後ろに回りにくい人や、肩の関節が痛くなる人は、手を背中側に回して、脇に物を挟む感じで、脇を締めるだけでよいです。その際には、肩を開いて胸を張ること、顎を少し引き気味にすることを忘れないでください。
また、寝るときに、首を圧迫して寝ると気持ちよいため、高い枕になりがちなのですが、高い枕だと、首の周りの筋肉を引っ張ってしまうことになり、寝ている間の筋肉の緊張が取れにくくなるため、肩こりの改善にならず、肩こりが持続する原因の一つにもなります。
寝返りを打つつもりで体を横向きにする際に、スムーズに体が動かせる枕の高さに調節してみてください(高すぎたり、低すぎたりした際には、寝返りを打つ際に反動を使います)。