一過性てんかん性健忘 金塚 陽一 先生
2017-12-11 08:05
川村内科診療所
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2017年11月28日 
演題「当院における一過性てんかん性健忘の治療例」
演者:横浜市立市民病院神経内科医長 金塚陽一先生
場所:HOTEL PLUMN
内容及び補足「
てんかん発作は、全年齢で1年間人口10万人当たり25〜70人で、欧米諸国の統計では70歳以上の発症率は、10歳以下よりも高く、70歳以上で100人以上、80歳以上では150人以上となる。
60歳以上のてんかんの有病率は1.5%で年齢とともに増加する。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2696249/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16168935

原因疾患は、脳卒中35.8%、神経変性疾患12.0%、外傷6.9%、脳腫瘍2.7%であるが、原因不明の症例が20%以上も見られる。

Epilepsia 34:453-468, 1993

てんかん発作と鑑別すべき疾患
てんかん発作と鑑別が必要なものとして以下の様な疾患群がある。


一過性全健忘(Transient Global Amnesia:TGA)
中高年期に発症し、数時間〜24時間にわたる前向性健忘を生じ、エピソード中は不安・困惑・混乱を示す。逆攻勢健忘も生じることがあるが、エピソード後も徐々に回復することが多い。ストレス状況が前駆したり、片頭痛がきっかけとなったりする。エピソードの再発は10%程度と少なく、3回以上再発するのは3%程度と稀である。エピソード中のMRI拡散強調画像で海馬の高信号を一過性に認めることがある。

一過性てんかん性健忘症(Transient Epileptic Amnesia)
1992年にPalminiらは、てんかん発作時に意識障害が明らかでなく、健忘のみを呈する純粋健忘発作(Pure Amnestic Seizure)を報告した。これらの症例は、健忘症状のほかに、意識減損や自動症などの側頭葉発作を持つことが多く、若年で発症し、二次性全般化発作がまれでなく、ときに治療抵抗性もある為、内側側頭葉てんかんの亜型と考えられている。
1993年にKapurらは、中高年に好発する発作性健忘症を一過性てんかん性健忘症(TEA)として報告した。
TEAは寝起きに多く、その持続が数分から1時間にも及び、抗てんかん薬への反応性は良好である。
MosbahらはTEAを一過性てんかん性健忘症候群(Transients Epileptic Amnesia Syndrome)と呼んで、連続30例の臨床特徴を以下のように報告している。
平均年齢は59歳で、発作頻度や持続時間は多彩で、健忘を自覚していた症例は約半分で、てんかんを疑われて紹介された症例は1/4に過ぎなかった。

TEAはTGAと異なり、平均30〜60分程度にとどまる発作が、1回/月程度の頻度で繰り返され、朝の気性後に起きやすい。TGAとは異なり前向性記憶が完全に障害されることは少ないが、多くの患者が発作間欠期にも自伝的エピソード記憶が障害されたと訴え、言わる油物覚えが悪くなる(Accelerated long-term forgetting:ALF)ことも報告されており、長期記憶の固定化(consolidation)の神経ネットワークがてんかん性放電により障害されている可能性が指摘されている。
頭蓋内深部電極を用いた研究などから内側側頭葉の発作性発射による部分発作が原因と考えられ、症候としては50%に嗅覚・味覚性幻覚、口部自動症を伴う。
頭皮上脳波でてんかん性放電を側頭部に認める症例は1/3程度。
治療は抗てんかん薬単剤、少量で奏功するが、ALFなど慢性の記憶障害に環指の効果は不明である。


TEA(一過性てんかん性健忘症)の診断
1)目撃者によって反復して生じる一過性健忘エピソードが確認されている
2)健忘エピソード中の認知機能は正常
3)脳波異常、他のてんかん発作を伴う、抗てんかん薬に反応するなど、てんかん診断の確定

純粋健忘発作(内側側頭葉てんかん)とTEAには共通点が幾つかある。
1)発作頻度は、月〜年単位と多い
2)側頭葉発作(意識減損、幻臭、既視感、上腹部違和感、口部自動症、行動自動症など)を伴う
3)脳波検査で側頭葉棘波が出現


診断の鑑別の手順は以下のようになる。

参考サイト
http://www.kksmile.com/neuro/shikkan/epilepsy_qa/qa_shojo_05.html#q5
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_article_52_2_102.pdf

症例1 73弾性 週に2-3日程度1時間程度ひどくなる。『どうしよう。最悪だ、最悪だ』と言う。
既往歴:高血圧があるも特に服薬する程度ではなく経過観察中であった。
HDS-R 28/30、カルマバゼピンン100?で改善。

症例2 80歳女性。物忘れが出てきて仕事への不安が強くなり来院。
『会社の経理で急に、今までできてたことが出来なくなった。覚えられなくなり、時々おかしなことを言う。ちりがわからなくなりバスに乗れない』との訴えあり。
既往歴:高血圧、糖尿病(HbA1c 7.2)、ラクナ梗塞、甲状腺がんの術後
MMSE 28/30 カルマバゼピン 100?で元に戻った。

症例3 85歳男性 忘れっぽくなり服薬を忘れる。
既往歴:高血圧、高尿酸血症、脂質異常症、CKDで治療中。
MMSE 25/30 イーケプラ 500?で改善。
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