2018-08-06 08:08
川村内科診療所
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2018年8月2日 
演題「口臭臨床の実際 〜口臭の診断、治療、予防について〜」
演者:東京医科歯科大学 大学院健康推進歯学分野 教授 川口陽子 先生
場所:神奈川県保険医協会
内容及び補足「
はじめに:近年、口臭測定機器が開発されたことで、口臭研究は著しく進歩し、口臭の90%以上は口腔内の疾患・異常が原因で発生することが明らかになった。
東京医科歯科大学歯学部付属病院では、「息さわやか外来」において年間約500〜700名の口臭患者の治療を行っている。口臭で悩んでいる人は多いが、歯科医師、歯科衛生士が適切に対応することで口臭は改善し、患者の不安は軽減する。
2003年2月に口臭の診断、治療、予防を行う専門外来として開設された。


「息さわやか外来」受診患者の年齢分布(男性762名、女性1419名)
一般的に大学病院の受診者は、女性が多く約二倍の数であるので、他の下の受診状況と変わらないと考える。


口臭に関する悩みがあるも人の割合
40-59の年齢の人に多いが、実際に口臭測定を行った際の異常としては、80歳代では30%に口臭が認められており、口臭があっても気にしないか、ヒトとの接触の機会が少ないので問題視していないため、受診者数が少ないのだと考えている。


口臭:Bad breath
「呼吸や会話時に口から出てくる息」が「第三者にとって不快に感じられるもの」
嗅覚は主観的なもので、同じ人間が同じ臭いを嗅いでも、体調や精神状態によって、受け止め方が異なる場合がある。また同じ臭いを長時間嗅いでいると、その臭いに慣れてしまう順応反応がある。

口臭の存在は、社会生活をしていくうえで一番重要な人間同士のコミュニケーション障害となる。口臭があれば、相手に不快感を与え、恥ずかしい思いをする。口臭があることで心理的に負担を感じ、行動が消極的になり、良好な人間関係を築くことができなくなる可能性がある。
口臭がものすごく強い人:Dragon breath、Dragon mouth

日本における口臭治療の問題点
1. 医科・歯科境界域の疾患→医師・歯科医師の連携
2. 以前は口臭の卒前教育がなかった→歯科医師の知識不足
3. 保険診療の算定項目なし→歯科医師の関心の低さ
4. 高価な口臭測定機器→機器購入に消極的
5. 原因疾患以外に口臭発生→健康人にも口臭はある
6. さまざまな民間療法の氾濫→治療効果のEBM?
7. 口臭で悩む人は多い→相談・受診先が不明

口臭の原因物質
揮発性硫黄化合物(硫化物) Volatile Sulfur Compounds(VSCs)
H2S 硫化水素:卵の腐ったようなにおい
CH3SH メチルメルカプタン:血生臭い、魚や野菜の腐ったようなにおい
(CH3)2S ジメチルサルファイド(硫化ジメチル):生ごみのようなにおい

揮発性硫化物(VSCs)の生成機序


硫化水素の毒性

http://www.amita-oshiete.jp/qa/entry/014888.php

その他の口臭成分の臭いの特徴
・揮発性窒素化合物
  アンモニア   し尿のようなにおい
  トリメチルアミン  腐った魚のようなにおい
  インドール  大便のようなにおい
  スカトール  おならや大便のようなにおい
・低級脂肪酸
  イソ吉草酸  むれた足や靴下のようなにおい
  酪酸   バターや乳の腐ったようなにおい
  プロピオン酸  刺激的な酸っぱい臭い
  カプロン酸  汗臭いようなにおい
・揮発性有機物
  アセトン  ツンとする甘ぐさい臭い
  アセトアルデヒド ツンとする酸っぱい臭い

口臭の日内変動
・生理的口臭は誰にでもある
・1日のうちで強くなる時と弱くなる時がある。
・口臭があっても、嗅覚認知閾値以下であればよい。
・口臭がいつ強くなるかをチェックすることが必要。
・口臭患者の治療経過を見る場合、測定時間に注意する必要がある。




口臭測定のための条件=起床時口臭を再現することが必要
・検査当日
1. 飲食の禁止
2. 歯口清掃の禁止
3. 禁煙(12時間前より)
4. 洗口の禁止
5. 口中清涼剤、ガム等の禁止
・前日以前
6. 香料入り化粧品使用の禁止(24時間前より)
7. ニンニクなどの摂取禁止(48時間前より)
8. 抗生剤などの投与禁止(3週間前より)

基準嗅覚検査
T&Tオルファクトメーター(第一薬品株式会社)
A:β-フェニルエチルアルコール、B:メチルシクロペンテノロン、C:イソ吉草酸、D:γ-ウンデカラクトン、E:スカトールの臭いをかいで嗅覚障害の程度を判断する
においの表現:A バラの花の匂い、軽くて甘い匂い、B 焦げた臭い、カラメルのにおい、C 腐敗臭、古靴下のにおい、汗臭い臭い、納豆のにおい、D 桃の缶詰、甘くて重いにおい、E 糞臭、野菜くずのにおい、口臭、いやなにおい

http://j-ichiyaku.com/t-t/#t-t-about


嗅覚障害の程度
正常:正常ににおうと思う
軽度:臭いが弱い
中等度:強いにおいはわかる
高度:ほとんどにおわない
脱失:まったくにおわない

口臭の検査法
1. 官能検査(術者の嗅覚による検査)
2. ガスクロマトグラフィーによる精密検査
3. ガスセンサー口臭測定器による検査
・オーラルクロマ(エフアイエス株式会社)
・ブレストロン(株式会社ヨシダ)
・ハリメーター(株式会社タイヨウ)

口臭官能検査:二種類の息を検査して臭いの質と強さを判定
1. お口の空気(口気)の検査:チューブをくわえて『はっ』と短く息を出す。
2. 肺の空気(呼気)の検査:チューブをくわえて『ふぅー』と長く息を出す。


官能検査の判定基準
0:臭いなし 嗅覚閾値以上の臭いを感知しない。ヒトの鼻では全くにおいを感知しない。
1:非常に軽度 嗅覚閾値以上の臭いを感知するが、悪臭と認識できない。ヒトの臭いを感知するが、悪臭とは認識できない。
2:軽度 かろうじて悪臭と認知できる。
3:中等度 悪臭と容易に判定できる
4:強度 我慢できる強い悪臭
5:非常に強度 我慢できない強烈な悪臭

ガスクロマトグラフィーによる口臭検査
装置が大きく、使用法が簡便でなく、高価である。
口臭の主成分である揮発性硫黄化合物(VSC)の特異的な濃度測定
嗅覚認知閾値
・硫化水素 H2S     1.5ng/10mL
・メチルメルカプタン CH3SH  0.5ng/10mL
・ジメチルサルファイド (CH3)2S  0.2ng/10mL
総VSC     2.2ng/10mL



官能検査スコアとVSC値との関係
相関係数 R=0.513(p<0.01)
下図のように官能検査の方が鋭敏である。


オーラルクロマ(エフアイエス株式会社)も揮発性化合物である硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドを測定できる。



http://www.fisinc.co.jp/common/pdf/pamphlet(chm_2)1302.pdf

ブレストロン(ヨシダ)
VSCを半導体ガスセンサーにより測定
歯磨き剤や洗口剤に含まれているアルコールや香料にも反応する場合がある。
足底時間:30〜45秒、口気を自動吸引、データが印刷される。

https://www.yoshida-dental.co.jp/products/%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%B3%E2%85%A1/

このブレストロンの測定値とガスクロマトグラフィーの測定値との相関はH2Sではr=0.73と高いが、CH3SHではr=0.63、(CH3)2Sではr=0.55とやや低くなる。


ガスセンサー口臭測定器:ハリメーター
お口のにおい成分(VSC)の測定、30秒間×3回お口のにおいを自動的に測定、歯磨き剤、洗口剤、アルコールなどの影響がある。

岩医大歯誌 30:235-243,2005
http://www.imu-dent-aa.com/kishi.pdf



口臭の種類は以下のように大きく分けて三種類ある。

http://www.kirishi.com/pamphlet/kousyu/kousyu1.htm

口臭の分類



治療の必要性


生理的口臭:
人間は生活している、以上いつも無臭というわけではない。毎日いろいろな食べ物が口の中を通過し、その一部は食べかすとして口の中に残り、最近によって分解され、においの元となる。起床直後に、口の中がネバネバして不快に感じるのは、夜寝ている間、唾液の分泌が減り、細菌が増殖して、口の中が汚れてしまったからである。また、空腹時や疲労時にも、口臭レベルが高まることがあるが、これは正常な反応である。緊張して口が渇いた時に感じる口臭、女性における生理時の口臭、加齢による老人性口臭も、生理的口臭である。

水分摂取によるVSCの変化
水分摂取によって、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化ジメチルともに有意差は認めないが逆に数値は増加している。


朝食摂取によるVSCの変化
朝食摂取により、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化ジメチルともに感度閾値以下になる。


食事や口腔清掃によって口臭が低下するが、その理由として以下のものが考えられている。
・口腔内の口臭発生原因菌の数が大きく減少する
・食事や口腔清掃の刺激により唾液量が増加する
・飲食することで口腔内のpHの低下

生理的口臭産生の環境は以下のように考えられている。
部位:主に舌背後方2/3
至適pH:中性からアルカリ性 酸性化では唾液ペプチドの酵素活性が億世されて、口臭は産生されない
口臭産生の基質(材料):舌苔中の脱落上皮細胞、血球、細菌

口臭の日内変動:
口臭は1日の中でも強さが変化し、日内変動がみられる。
起床直後が1日のうちで最も口臭が高く、食事や歯磨きによって低下する。同じような口腔保健状況の高齢者を4群に分けて9時、11時、14時、16時と時間を変えて、官能検査およびオーラルクロマで攻守検査を行った結果を見ると、11時が最も高く、14時の群が最も低い値を示した。一方、VSCの結果はガスにより異なる結果で、硫化水素のみ変化があった。硫化水素は舌苔付着と強く関連しているので、食事や口腔清掃などの影響を受けやすく、日内変動を引き起こす主原因となっていることを示している。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1741-2358.2011.00593.x

飲食物による口臭
ネギ、ニラ、ニンニクなどを食べた後の口臭は、口の中に残った食べカスが直接の原因である場合と食品が体内で消化されて、その放臭物質が血液中に移行し、肺におけるガス交換時に二酸化炭素とともに排出されて、息がにおう場合の両方が考えられる。

嗜好品による口臭
アルコールも体内で吸収され、肺から揮発性のアルコール成分が排出されるため、酔っぱらいの吐く息は臭くなる。ヘビースモーカーの口のニオイは、主にタールやニコチンである。

病的な口臭
90%以上は口腔疾患によるものであるが、10%程度は全身疾患による口臭である。


歯周病由来の口臭の特徴
1. 生理的口臭と同じく、舌苔が口臭発生の中心で口臭の約60%を産生、歯周病においても、歯周ポケットが口臭発生の中心ではない
2. メチルメルカプタンが硫化水素より多い
3. 口臭強度は歯周病重症度に比例
4. メチルメルカプタン/硫化水素比は歯周病重症度に比例

全身由来の口臭成分とその原因


口臭の発生機序の組織像
図5 糸状乳頭の角化上皮(E)は、エオジンに濃染している。
図6 糸状乳頭の角化上皮を拡大して観察すると、屋根瓦状に積層した角化上皮(E)とそれらの角化上皮間にヘマトキシリンに濃染する顆粒状構造物(細菌など)(→)が随所に観察される。

図17 細菌(B)が剥離角化上皮付近に認められる領域でも、その細菌が散在性に分布している場合には、角化上皮(E)は比較的正常な形態を示している。
図18 細菌が剥離角化上皮(E)の周囲に密に集積している領域では、角化上皮の電子密度は部分的に低くなっている。また、それらの細菌に接する角化上皮表面は、最近によって浸食され、陥凹が生じている。また、この部の細菌(B)は電子密度も高く、分裂隔壁(→)を有するものが多数認められる。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/koubyou1952/73/1/73_1_26/_pdf/-char/ja


心因性の口臭:
診察しても、特に医学的異常所見がなく、公衆の測定を行っても口臭レベルが高くない人。
口腔清掃状態は良好で、う蝕や歯周病はなく、全身状態も健康で、特に治療の必要はないが、本人は「どこかに原因があって、口臭がある」と考えている。口臭の存在を言葉で指摘されなくても、相手の態度、物腰、様子などから自分に口臭があると思い込み、対人恐怖や社会的不適応を生じている場合もある。

実際の患者の言葉:
私が生きていることは罪悪です。
口臭は生まれた時からありました。
家族には、私が口臭治療に通っていることは内緒です。
私が死んだら、解剖して原因を究明してください。
なぜ、こんな病気に罹ってしまったんだろう。
生きていくのがつらく、自殺してしまいたい。

仮性口臭症:
仮性口臭症とは、「患者は口臭を訴えるが、社会的容認限度を超える口臭は認められず、検査結果などの説明(カウンセリング)により、訴えの改善が期待できるもの」である。したがって、初診時に仮性口臭症ではないかと疑診はできるが、歯科治療やカウンセリングを実施していき、その結果、患者の訴えや症状が快方に向かった時、すなわち治療終了時に確定診断が下されることになる。仮性口臭症の場合診断と治療は同時進行で行われる。

仮性口臭症と口臭恐怖症の鑑別
・人間への関心の有無
・病識の有無
・日常生活での異常行動
・課題実施能力
・治療意欲の有無
・人間関係

カウンセリング:
カウンセリングの中では患者だけでなく、人間関係に関する情報(家族、友人、同僚など)を得ることも大切である。医師によるカウンセリングよりも身近な理解者の支援があることの方が患者にとっては励みにとなる。
周囲に理解者がいなかったり、口臭で悩み治療を受けていることを家族に打ち明けていない患者もいる。そのような場合、歯科医師だけでなく、歯科衛生士、歯科助手、受付等のスタッフの協力も必要である。患者は口臭があると思っているために話し合える相手が少なく、孤独感を感じている場合が多いので、「気にならない」ことを示すために、スタッフが診療室内で明るく患者に声をかけてあげるとよい。

注意事項:
・口臭に気付いたきっかけとその時の状況
・その後の口臭への本人の対応
・過去の医者の対応への不満
患者の訴えをまともに取り上げてくれない
「気のせいだ、神経質すぎる」と言われる
精神病扱いされた
・日記、生活リズム調査を毎日記入させる
医療者の情報収集、自己洞察のため

口臭患者への心理的配慮
・診察室の中で、口臭について患者に質問したり、説明する場合、他の患者やスタッフに聞こえるような大きな声では話さない。
・患者と対応する際に、マスクをしたままで話しかけたり、何気なく手を鼻の近くに持っていくような態度はとらない。
・患者は周囲の人の言動に対して極めて敏感になっているので、「自分の臭いのために先生はそのような態度を取るのでは?」と鮪行くし、十分に思いを話してくれない。

「息さわやか外来」における口臭診療
1. 口臭に関する質問票調査・医療面接
2. 口臭測定検査(機器及び官能検査)
3. 口腔内診査(歯・歯周組織・舌・唾液)
4. 診断・説明
5. 治療
6. 予後管理・予防

外来診療の流れ:


「息さわやか外来」受診患者の診断名(2108名)
生理的口臭が14%、病的口臭が70%であり、真性口臭が約85%であった。
病的口臭で、歯科と医科の両方での治療が必要であったものが10%あった。

年齢別にみると、仮性口臭や、口臭恐怖症の症例数はさほど変化しないが、口腔の病的口臭は30歳代から増加し、50歳代でピークとなっている。


口臭症分類別のVSC濃度


質問票を利用した口臭患者への対応:
面接の中で質問票の結果をもとに、まず各項目について術者が一つ一つ確認していき、不明な点があればさらに詳しく聴取する。
そして口臭があることでどのように悩んでいるのか、日常生活で何に困っているのかを、術者は具体的に把握し、患者に確かめる資料とする。

息さわやか外来で使用している口臭に関する質問票


口臭に気付いたきっかけ 2018名
人に言われたことが多いが、次いで多いのが人の態度であり、この多くが仮性口臭症や口臭恐怖症の人が該当する可能性が多い回答項目である。


口臭に関する治療経験(2018名、複数回答可)


口臭を強く感じるのは何時ですか(2018名、複数回答可)
起床直後や空腹時が多いが、一日中も多く、これも仮性口臭症や口臭恐怖症の人が該当する可能性が多い回答項目である。


口臭を意識するとき 2018名
人との対話中や相手の態度が多い


口臭による障害 (2018名、複数回答可)


口臭を減らすための対応(2018名、複数回答可)


患者が考えている口臭の原因(2018名、複数回答可)


治療の順序
病態によって、優先されるべき治療が異なることが示されている。
歯肉炎の患者において、先に歯周病の治療をした群G1と先に舌清掃をした群G2で比較してみると、官能検査においても、硫化水素においても、メチルメルカプタンいずれにおいてもG2群の方において改善が良かった。歯肉炎の患者の場合には舌清掃の治療を優先して、治療を行う方が良いといえる。

歯周炎の患者においては逆に、官能検査においても、硫化水素においても、メチルメルカプタンいずれにおいてもG1群の方において改善が良かった。歯肉炎の患者の場合には歯周病の治療を優先して、治療を行う方が良いといえる。


参: 
歯周病:細菌感染によって引き起こされる炎症性疾患。
歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が不十分な際、細菌が停滞し、繁殖することにより歯肉辺縁が赤く腫れ炎症を起こす。

口の中には300〜500種類の細菌が存在しており、歯磨きが不十分であったり、砂糖を過剰に摂取すると、これらの細菌がネバネバした物質を作り出し、歯の表面に付着する。これを歯垢(プラーク)といい、粘着性が強い為、ウガイをしても落ちない。
歯垢1?中には10億個の細菌がいるといわれており、虫歯や歯周病を引き起こす。

歯垢はそのうち硬くなり、歯石といわれる物質に変化し、歯の表面に強固に付着し、ブラッシングだけでは取り除くことができなくなり、ここに細菌が入り込み、歯周病を進行させる毒素を出し続けることになる。

歯周病を進行させる因子:
1. 歯ぎしり、くいしばり、かみしめ
2. 不適合な冠や義歯
3. 不規則な食習慣
4. 喫煙
5. ストレス
6. 全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
7. 薬の長期服用

歯周病の進行過程:
健康な歯肉
薄いピンク色の歯肉。
歯と歯の間に歯肉が入り込んで弾力がある。
歯肉が引き締まっている。
ブラッシングでは出血しない。

歯肉炎
赤色の歯肉。
歯と歯の間の歯肉が丸みを帯び膨らんでいる。
ブラッシングで出血する。
腫れた歯と歯肉との間に歯垢が溜まり悪化する。

歯周炎
赤紫色歯肉。
歯と接している歯肉が更に腫れる。
ブラッシングで出血や膿がでる。
歯と歯の間が広がり、食べ物もよく詰まる。
歯肉が退縮して歯が長く見える。
歯周ポケットが深くなり骨(歯槽骨)が溶ける。


歯周病の治療法の基本
1. 正しい歯ブラシの方法で毎日実行すること=歯の表面を歯垢のない清潔な状態にしておくこと
2. 歯肉の中まで入っている歯石を完全に取り除き、さらに根の表面を滑らかにして炎症を引き起こす細菌を徹底的に除去すること
3. 傷んだ歯肉、骨を治療して健康に近い歯肉にすること
4. 健康の保持のため歯科衛生士による専門的なクリーニングなどのメインテナンスを定期的に受けること
http://www.jacp.net/perio/about/

舌苔ができるメカニズム:まだ完全には解明されていない
1. 人は頻繁に唾液を飲み込む。その際に舌背を必ず通過する
2. 唾液中には粘膜から脱落した上皮細胞が存在する
3. 細菌によって脱落した上皮細胞の破壊が進む
4. 上皮細胞の破壊が進むと比重が増加し沈殿しやすくなる
5. 舌背には舌乳頭が多く、重くなった細胞は容易に舌乳頭に沈着する
 
細菌により破壊された上皮細胞は比重が増加し容易に舌乳頭に捉えられる
http://www.4618.tv/kousyu/furredtongue.html


舌ブラシによる舌苔の除去

舌ブラシ型 ワイヤー植毛:カワモト フレッシュメイト K ソフト
http://www.4618.tv/kousyu/furredtongue.html

手鏡で下を観察し、白〜淡黄色の舌苔が厚く付着している場合には、下の清掃も必要になる。上記のような舌ブラシや柔らかい歯ブラシをして舌苔を除去しよう。舌苔が一番溜まる起床時に行うことが効果的。

34歳男性で1回の舌ブラシによる清掃でVSCは下記のように変化した。


症例:6歳男児 小さい時から口臭があり、特に寝息がくさく、同じ部屋で母親は添い寝ができないという。小学校入学前に治したいと長野県から親子で来院。


 
上記のように1回の舌清掃、歯の清掃で下図のように改善した。


しかし、ときに不十分な効果となる例がある。
38歳女性で舌清掃を行っても(CH3)2Sの改善効果が見られない症例がいた。
調べてみると喘息の治療薬であるIPDを飲んでおり、この代謝物が(CH3)2Sの構造となる可能性がわかり、耳鼻科主治医に連絡し、処方内容を変更してもらうと下図のように改善した。
 

舌の構造:


舌の観察:
舌苔がほとんど形成されていない場合には、通常、糸状乳頭の先端部は角化が亢進し、白色を呈しているため、各々の糸状乳頭の先端を明瞭に識別することができる(1)。しかし、舌表面に黄白色を呈する舌苔が付着すると、舌乳頭は不明瞭となり(2)、更に厚く堆積するとした表面は舌苔により滑沢な状態になる(3)。舌苔の分布状態は主として舌背の中央部から後方部にかけて付着が見られ、舌背の前方部には少なく、その厚みは薄い。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/koubyou1952/73/1/73_1_26/_pdf/-char/ja



舌苔付着量(面積)と口臭強度は関連がある。


舌苔付着量(厚さ)と口臭強度も関連がある。


舌清掃時の?吐反射予防法:
1. 起床直後に行う
2. 歯を磨く前に行う
3. 水にぬらしただけのブラシで行う
4. 最大限に舌を突出させる
5. 呼吸を一時止めて磨く
6. ブラシが口蓋に触れないようにする
7. 食後や歯磨き後は?吐反射が出やすい

口腔乾燥症によっても口臭は悪化する。唾液の分泌量を測定する際に安静時唾液と刺激時唾液の検査がある。当院では安静時唾液検査を行っている。


服用薬剤の調査:
口臭は唾液分泌量とは逆比例すると考えられている。
シェーグレン症候群や放射線治療などの口腔乾燥症の既往歴を聴取する
口腔乾燥症を引き起こす薬剤:鎮静剤、抗コリン剤、抗うつ剤、降圧剤、向精神薬
抗生剤は、口腔内細菌層を抑制する働きがあり、抗製剤使用中の口臭診断は、治療終了後に行う(3週間程度開ける)


口臭予防製品:
香料、殺菌剤、消臭剤などを含む洗口剤、口中清涼剤、歯磨剤、ガムなどが市販されているが、直接口臭を防止する作用は弱く、香料で臭いを隠す遮蔽効果や精神的に安心させる心理的効果の方が大きいと考えられている。
口臭抑制効果のある洗口剤やスプレーを使用しても、口臭発生の原因を除去しなければ、その効果は一時的である。

口臭抑制効果のある成分
・口臭発生細菌に対する抗菌作用
クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、トリクロサン、エッセンシャルオイル
・揮発性硫黄化合物(VSC)の産生を抑える消臭作用
 塩化亜鉛、二酸化塩素、ハーブ、茶エキスなどの植物ポリフェノール
・嫌な臭いを覆い隠すマスキング作用
 鼻やフルーツ、ハーブなどの香料

塩化亜鉛による口臭予防機序:肺ザック、Dr. Bee hi-ZAC、口臭カットリンス、スプレー
・VSCを不揮発化:塩化亜鉛がVSCと結合して不揮発化し、臭いの発生を阻害する
・VSCの産生阻害:塩化亜鉛が含硫アミノ酸やペプチドと結合すると、細菌は含硫アミノ酸やペプチドを分解してVSCを産生できない
・細菌の働きを阻害:塩化亜鉛は、細菌の含硫アミノ酸やペプチドを分解する働き(蛋白分解酵素活性)を阻害する


二酸化塩素による口臭予防機序:ClO2Fresh、パインメディカル
・安定化二塩化塩素は硫化化合物(VSC)と反応し、S2-をSO42-に酸化する
・安定化二塩化塩素は嫌気性細菌への殺菌、増殖抑制作用がある


洗口剤で洗う際には、口の中で10回ほど、右頬と歯の間に液を移して10回ほど、左ほほと歯の間に液を移して10回ほどグチュグチュとやってもらうと効果が高い。
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