脳梗塞予防に対する心臓カテーテル治療 金澤英明 先生
2019-10-28 08:33
川村内科診療所
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2019年10月15日 
演題「脳梗塞予防に対する新しい心臓カテーテル治療 〜経皮的卵円孔開存閉鎖術の国内導入に向けて〜」
演者: 慶應義塾大学医学部循環器内科専任講師 金澤英明 先生
場所: ローズホテル横浜
内容及び補足「
心臓カテーテルインターベンションは現在虚血性心疾患だけでなく以下の疾患にも対応することができるようになってきた。脳梗塞の予防と片頭痛に対して詳述する。
虚血性冠動脈疾患
心弁膜疾患
先天性心疾患(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存)

日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会が2019年5月に潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の手引きを出版した。
http://www.jsts.gr.jp/img/tebiki_seninsei_noukousoku.pdf
脳梗塞の約25%は原因不明とされていて、その内卵円孔開存などの右左シャントを介して右神経の血栓が左心系へ流入して発症すると考えられているものを奇異性脳塞栓症という。しかしながら、卵円孔開存を有する脳梗塞例で右心系の血栓が検出されないことも多く、このような症例に対する再発予防について、明確な有効性を示す治療法はこれまで確立されておらず、一般的にはアスピリンが用いられてきた。

潜因性脳梗塞(Cryptogenic Stroke)
動脈硬化に起因する脳梗塞、もしくは心疾患に起因する塞栓症など既知の機序では説明がつかず、更なる原因検索を勧めた後にもその発症機序が明らかでない、あるいは原因が特定できない脳梗塞の分類。
アメリカで69000人も年間虚血性脳卒中が発症しており、身体障害のもっとも大きな原因となっている。
潜因性脳梗塞は虚血性脳卒中の1/4を占めている。これらの潜因性脳梗塞患者のほとんどは二次予防として抗血小板剤の治療を受けているが、長期経過を見ていると30%に心房細動がみられる。

https://www.stroke.org/-/media/stroke-files/cryptogenic-professional-resource-files/cryptogenic-stroke-education-deck-ucm_477054.pdf?la=en&hash=2845F38E0683BF8B40E358FD3F71863731AFA968
潜因性脳梗塞における重要な塞栓源として、潜在性心房細動、卵円孔開存(Patent Foramen Obale:PFO)、遺伝性血栓症(Inherited Thrombophilia)、大動脈弓アテローム(Aortic Arch Atheroma)が挙げられる。
PFOは健常者の約25%に存在し、潜因性脳梗塞の約50%に併存すると言われている。
以前報告では、PFOを含む右左シャント疾患と静脈血栓を併発する確実な奇異性脳塞栓症は、急性期脳梗塞例の5%に過ぎないとされていたが、PFOの診断精度が不確定であること、静脈血栓の検索が困難であるため過小評価されていると考えられる。

PFOはもっともよくみられる胎児起源の先天心臓異常である。卵円孔は、胎児期においては右心房から左心房に血液が直接流れ込むための正常な構造であり、これにより肺循環を迂回しているが、出産後に閉鎖不全が起きるとPFOになる。


https://www.natureasia.com/ja-jp/reviews/highlight/71756


:岡山大学循環器内科のHPにて潜因性脳梗塞の発症経過やカテーテル治療が動画で提示されている。
アンプラッツアPFO閉鎖栓はニチノールという特殊な形状記憶合金の細い線から作られたメッシュ状の閉鎖栓で下図のような形をしており、真ん中の部分がくびれた形をしている。両側の広がった部分とくびれた部分には特殊なダクロンという布が縫い付けられていて、心臓の卵円孔の部分に合わせるように入れて、左右の広がった部分で穴の両側から挟み込んで穴を閉じる。

卵円孔を通過させ、左心房内で閉鎖栓を広げる。

広げた閉鎖栓を左房の壁に合わせ、右房側の閉鎖栓を広げる。
  
安全を確認してカテーテルから閉鎖栓を切り離す。

http://okayama-u-cvm.jp/patient/disease/patent_foramen_ovale.html

Kentらは、Risk of Paradoxical Embolism:RoPEスコアで加点評価した際に、9〜10点の患者は、卵円孔開存が脳梗塞発症に居していたと報告している。心房中隔、瘤胎生期の右房内遺残物などの併存、右左シャント量が多い症例では再発が多い。

Neurology 81(7):619-25、2013

経皮的卵円孔開存閉鎖術が2019年5月に国内で新しい治療として承認された。
この方法は、ラクナなどが原因の脳梗塞には予防効果はないが、Large Shuntの有る症例、心房中隔流を合併する卵円孔開存症例において有用である。
PFOを有する潜因性脳梗塞を対象としたカテーテルによる治療の有効性を研究したRESPECT研究(NEJM 2017;377:1022-32)、REDUCE研究(NEJM 2017;377:1033-42)、CLOSE研究の結果(NEJM 2017;377:1011-21)が2017年に発表された。
RESPECT 研究は、潜因性脳梗塞を発症した卵円孔開存を有する 18〜60 歳の患者を、本治療施行群と薬物療法(アスピリン、ワルファリン、クロピドグレル、アスピリン+ジピリダモール徐放剤)のみを行う群(対照群)に1対1で割り付けた。非致死的脳梗塞の再発、致死的脳梗塞、無作為化後の早期死亡の複合を有効性エンドポイントとし、980 例(平均年齢 45.9 歳:追跡期間中央値 5.9 年)を登録した。本治療施行群の 18 例と対照群の 28例で脳梗塞が再発した。
REDUCE 研究は、潜因性脳梗塞を発症した卵円孔開存を有する 18〜59 歳の患者を、本治療施行群と薬物療法(アスピリン、クロピドグレル、アスピリン+ジピリダモール徐放剤)のみを行う群(対照群)に、2 対 1 で割り付けた。無作為化後 24 ヵ月間の脳梗塞無再発を有効性エンドポイントとし、664 例(平均年齢 45.2 歳)を登録した。本治療施行群 441 例中 6 例(1.4%)、対照群 223 例中 12 例(5.4%)で臨床的脳梗塞の再発を認めた。
CLOSE 研究は、潜因性脳梗塞を発症し卵円孔開存以外に原因を特定できない 16〜60 歳の患者を、本治療施行群、抗血小板薬群(アスピリン、クロピドグレル、アスピリン+ジピリダモール徐放剤)、抗凝固薬群の 3 群に1対1 対1で割り付けた。無作為化後 24 ヵ月間の脳卒中発症を有効性エンドポイントとし、663 例を登録した。そのうち、本治療施行群 238 例中 0 例と抗血小板薬単独群 235 例中 14 例で脳卒中の発症を認めた。
AMPLATZER PFO Occluder を用いた RESPECT 研究では,治療後の心房細動発生率は対象群と比較し増加しなかったものの,静脈血栓症が増加した。REDUCE 研究、CLOSE 研究では,治療後の心房細動発生率が対象群と比較し増加していた。2017 年に公表された 3 研究を含むメタ解析では、各研究成果と同様に本治療の有効性を明らかにする一方で、術後心房細動発生率のリスク増加が課題となった。
アメリカ食品医薬品局は、RESPECT 研究(長期経過観察調査)をもとに 2016 年 10 月に AMPLATZER PFO Occluder,REDUCE 試験をもとに 2018 年 3 月に Gore Cardioform Septal Occluder を認可し、潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術を承認している。


Respect研究
潜因性虚血性脳卒中を発症した卵円孔開存を有する患者980例を対象にしたRESPECT試験では薬物療法単独とした中央値5.9年の追跡期間における虚血性脳卒中再発率は閉鎖術群が0.58/100人・年で対照群の1.07/100人・年に比べて有意に低値だった。

NEJM 2017 377 1022-1032

Reduce研究
PFO閉鎖術と抗血小板療法を併用する群と抗血小板療法のみを行う群に2:1の割合で無作為に割り付け24か月時点での脳画像検査で脳梗塞の臨床所見を無作為過誤24か月以内に新しい所見を認めないことと新規脳梗塞の24か月発症率を複合主要エンドポイントとした。644例(平均年齢45.2歳)を追跡期間中央値3.2年でPFO閉鎖術群441例中6例(1.4%)と抗血小板療法単独群223例中12例(5.4%)が臨床的脳梗塞を発症した。重篤な有害事象はPFO閉鎖術群の23.1%、抗血小板療法単独群で27.8%に発現した。PFO閉鎖術群では、デバイス関連有害事象が6例(1.4%)、心房細動が29例(6.6%:抗血小板療法単独群1例:0.4%)発現した。




NEJM 2017 377 1033-42


Close研究
PFOとの関連が考えらえる脳卒中を発症した663例を平均5.3年間にわたり追跡調査した。血小板療法単独群235例中14例に脳梗塞が発症し、PFO閉鎖術に抗血小板療法を併用した238例では再発例はなかった。手技に関連する合併症は14例に、心房細動発症率は、抗血小板療法単独群で0.9%であったのに対してPFO閉鎖術群では4.6%で有意な差がみられたが、重篤有害事象の発現率について有意差はなかった。



NEJM 2017 377 1011-1021

診断:
この治療を行うためには、まず対象者を診断する必要がある。
日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会は2019年5月に潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の手引きの中で、診断基準を次のように定めた。

卵円孔開存閉鎖術が理論上有効である疾患は、PAOを介した奇異性脳塞栓症であり、PAOを偶発的に有する(PAOが原因ではない)潜因性脳梗塞を除外するための十分な検討が必要である。すなわち、カテーテルによるPAO閉鎖術は、脳卒中専門医と循環器専門医により慎重に診断された、奇異性脳塞栓症の確定診断例、およびその疑い例(静脈血栓を認めないが、その発症機序が推測される卵円孔開存を有する潜因性脳梗塞例等)に対して施行が検討されるべきである。

脳梗塞再発予防を目的とした経皮的卵円孔開存閉鎖術の適応基準を下に示す。卵円孔開存の関与があり得る潜因性脳梗塞の診断基準に合致することが必須条件であるが、その他、閉鎖術の化学的根拠を示した上述の三つの臨床研究における対象症例の条件を踏襲し、閉鎖術後の抗血栓療法施行、年齢制限、妊娠に関する項目を必須条件として設定されている。また、本閉鎖術は脳梗塞を発症した症例での再発予防である二次予防を目的として施行されるものであり、一次予防には科学的根拠が無いので勧められない。
先行研究では、シャント量の多い卵円孔開存、心房中隔瘤、下大静脈弁、キアリ網を合併した卵円孔開存、安静時(非バルサルバ負荷)でも右左シャントを有する卵円孔開存、長いトンネルを有する卵円孔開存は解剖学的に塞栓症の高リスクとされており、閉鎖術施行による塞栓予防効果がより期待されるため、推奨基準として列挙されている。また、抗凝固療法施行中に潜因性脳梗塞を発症した場合にも本治療が推奨される。抗血小板療法中に潜因性脳梗塞を発症した場合には、抗凝固療法への変更または本治療思考の双方が検討されるべきである。


検査法:
この治療法を検討する際に必要な検査法を以下の表に示す。
脳梗塞の病院・病型を診断し、卵円孔開存の有無を調べることになる。
経食道エコー図に関しては、卵円孔開存の有無のほかに、閉鎖術の術前検査として卵円孔の解剖学的評価を行うためにも必須である。
経食道心エコー図を行う前に、右左シャント検出のスクリーニング検査としてマイクロバブルを注入して行うコントラスト経頭蓋超音波ドプラ法またはコントラスト経胸壁心エコー図を行うことも推奨される。シャントは安静時に確認されることは稀であり、鎮静をかけた経食道心エコー図ではバルサルバ負荷が十分とならず、卵円孔の開存が検出できない可能性があり、景況心エコー図の検査の際に十分なバルサルバ負荷をかけたり、咳をしてもらい右房圧を左房圧よりも高くする(通常左房圧は右房圧よりも数mmHg高い)と検出率が上がる。


診断アルゴリズムとしては下図のようになる。


経頭蓋超音波ドプラ法でのマイクロバブルテストの施行と判定法は以下のようになる。

本検査の欠点は、頭蓋内血管の描出が困難な症例があること、心房中隔瘤などの心臓内構造の評価ができないこと、右左シャントの部位が心臓内か心臓外(肺動静脈瘻など)か区別できないことである。
経胸壁心エコー図は外来で容易に実施可能であるが、一般的に右左シャントの瞼出力が弱いと言われている。経食道エコーでは鎮静をかけるため、十分な負荷をかけることは困難であるが、経胸壁心エコーの際には十分なバルサルバ負荷を行うことが可能であり、コントラスト剤注入法を行うことで、卵円孔開存検出のスクリーニングとしては有用な方法である。バルサルバ負荷時に、被験者の上腹部の右側を用手的若しくはトランスデューサで圧迫することにより、確実なバルサルバ負荷をかけることができる。コントラスト剤は、用手的に一気に注入した後に右心系全体が均一にコントラスト剤に染まる量を注入することが重要である。バルサルバ負荷時、あるいはバルサルバ負荷を解除した直後に左心系で確認されるマイクロバブル数でシャント量を判定する。バルサルバ負荷解除後3心拍以内に左心系にマイクロバブルが確認される場合、卵円孔開存の可能性が高い。
左心系で確認されるマイクロバブル数により以下のように分類する。


卵円孔開存の診断は、経食道心エコー図が必須である。卵円孔開存の有無のみではなく、卵円孔の形態や心臓内構造物の観察も必要であり、下表の観察が必要である。

カラードプラ法による診断:経食道心エコー図で安静時に明らかな卵円孔開存を認める、又はカラードップラ法で卵円孔開存のスリット内に、右左または左右シャント血流を確認できる場合は、コントラストエコー、マイクロバブルテストを行わずに卵円孔開存と診断できる。卵円孔開存のスリット内の血流を確認するうえで、低流速血流(35〜40?/秒)での信号硬度を上げることがポイントである。カラードップラ法でシャント血流を確認できない場合はマイクロバブルテストを行う。

シャント量の定義
右正中静脈に点滴ラインを確保し、バルサルバ負荷をかけ、コントラスト剤注入後に右心房内に粒状エコー(マイクロバブル)が充満した後に、バルサルバ負荷解除後3心拍以内に左心系にマイクロバブルが確認される場合、卵円孔開存の可能性が高い。4心拍以降に連続してマイクロバブルが出現する場合は肺動静脈瘻などの心臓外の右左シャントを疑う。
右心系で確認されるマイクロバブル数により以下のように分類される。
 

心エコー図評価のポイントは以下のようになる。

下大静脈弁(Eustachian valve:EV右下大静脈動弁に由来し、下大静脈口の前縁に位置する弁状の突起物で、胎生期の遺残構造物で、卵円孔開存を合併していると右左シャントを助長することが示唆されている)、キアリ網(Chiari network:出生後、下大静脈弁や肝静脈動弁は退縮するが、その過程で多数の穴が開き網目状に遺残したもの。右房内で下大静脈弁に付着または右房の壁に付着した可能性のある線状で線維状の構造汚物である)と呼ばれる、右心房内の弁状の組織が描出されることがある。この組織を持つ卵円孔開存では脳梗塞の発生頻度が高いと言われている。多くの場合、これら2つの構造物の明確な区別は困難である。
 
参:潜在性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術の手引き 2019年5月
Addressing Patients with Cryptogenic Stroke

長期経過に関しては201例の平均12年間の追跡調査において、3.3%にシャントがエコーで観察され、13例が心血管疾患以外の原因で死亡した。非致死性脳梗塞が2例(0.08/100人・年)、TIAが6例(0.26/100人・年)においてみられた。出血性イベントは13例、頭蓋内出血は4例(アスピリン投与下で)に見られた。42例で抗血小板療法が中止された。

JACC 2019 73 278-287

PFO閉鎖術による脳梗塞の二次予防についてEuropean Heart Journal 2019年Vol.40に掲載された。

Eur Heart J 2019 21 40 2339-2350

片頭痛:通常5〜20分にわたり徐々に進展し、かつ持続時間が60分未満の可逆性局在神経症状からなる発作を繰り返す疾患で、前兆のない片頭痛の特徴を有する頭痛が前兆後に生じることが多い。
典型的には、約1/3に前兆:陽性徴候(キラキラした光・点・線などの視覚症状、チクチク感など)、陰性徴候(感覚鈍麻)、完全可逆性の失語性言語障害などがある。
ズキズキとした拍動性の痛みが特徴の強い頭痛。動くと悪化し、吐き気、光・音に敏感になる。15歳以上の8.4%、30〜40代の女性の18%に認められる。

前兆のある片頭痛患者の約50%に卵円孔開存がある
卵円孔開存のある患者では、前兆のある片頭痛の有業率は3.21倍と有意に高い
20の観察研究、総計1194例のPFOを有する片頭痛患者でPFO閉鎖術の有用性を検討した2016年のレビューでは、3-50か月の経過観察期間中に片頭痛治癒が10〜83%、改善が14〜83%、不変が1〜54%、悪化が4〜8%で、大半の研究で治癒と改善を合わせた割合が8割を超えていた。(Headache 2016; 56(3): 462-78)
本法で行われた虚血性脳卒中の既往のあるPFO、心房中隔欠損症を有する片頭痛患者19例を対象にしたAmplatzer閉鎖栓を用いた閉鎖術の検討では、術後3か月の時点で、片頭痛治癒と改善を合わせた割合が9割を超えていた。(Cardiovasc Interv Ther. 2016;31(4):263-8

MIST試験
2種類以上の予防薬で治療効果が得られなかった中等度以上の右左シャントのあるPFOを有する片頭痛患者を経皮的デバイスSTARFlexによる閉鎖術群74例とsham処置群73例を6ヶ月追跡し、頭痛日数の50%以上の減少者の割合が検討されたが、有意な差は無かった。
Circulation 2008; 117(11): 1397-404

PRIMA試験
片頭痛患者をAmplatzer PFO閉鎖栓を用いた閉鎖術群40例と薬物治療群43例を9〜12か月後の頭痛日数の減少を見た。閉鎖術群8.0→2.9日、薬物治療群8.3→1.7日と有意差はなかったが、二次エンドポイントの中で頭痛日数50%以上の減少者の割合は、閉鎖術群38%、薬物治療群15%で有意差を認めた。

Eur Heart J 2016; 37(26): 2029-36

PREMIUM試験
片頭痛発作が月に6-14日かつ少なくとも3つの片頭痛予防薬が奏功しなかった片頭痛患者に対してAmplatzer PFO閉鎖栓を用いた閉鎖術群107例とsham処置群123例で、10〜12ヶ月の頭痛日数の50%以上の減少は、閉鎖術群38%、対象群32%で有意差を認めなかったが、二次エンドポイントの頭痛日数の減少では、閉鎖術群で3.4日、対照群で2.0日と有意な差を認めた。
Headache 2015; 55(S5): 251

Amplatzer PFO閉鎖栓のFDA認可時の重篤な有害事象は合併症については心穿孔0.8%、穿刺部出血0.6%、右房内血栓0.2%、深部静脈血栓0.2%、心房細動0.2%とされている。
AMPLATZER? PFO Occluder for the Prevention of Recurrent Ischemic Stroke

片頭痛の機序として以下のように考えられている。

http://www.okayama-u-cvm.jp/patient/disease/migraine_precursor.html

参:
循環器系カテーテル治療の疾患
虚血性心疾患:
経橈骨動脈的冠動脈形成術:Trans-Radial coronary Intervention TRI

検査・治療後すぐに動けるので活動制限がほとんどなく、出血性合併症も少ない。

慢性完全閉塞病変:Chronic Total Occlusion CTO
3ヶ月以上にわたり、冠動脈が閉塞している病変に対して、経皮的冠動脈形成術を行う手技で、冠動脈造影では血管走行を完全に把握することが困難であり、熟練した主義および適切な判断力が必要になる。


左冠動脈主管部:Left Main Trunk LMT
左前下行枝と回旋枝に分岐する部分の狭窄病変であり、突然死の原因となる疾患であり、以前は外科的にCABGを行うことが第一選択とされていた。SYNTAX trial(NEJM 2009; 360: 961-72)で1800例のCABG適応とされたLMT病変及び多枝病変に対するPCI vs CABGの無作為割り付け臨床研究で、3年経過時において心血管イベント発生率、死亡率に差は無く、再血行再検率がPCI群で有意に高く、脳血管事故発生率がCABG群において高率であった。

この結果を受けて、欧米でのガイドラインがLMT治療としてPCIの適応がClass3からClass 2bにランクアップした。


弁膜症
経カテーテル大動脈弁留置術:Transcatheter Aortic ValveImplantation TAVI
大動脈弁狭窄症:ASは、症状が現れにくく、重症になってから発見されることが多い疾患で、治療を行わないと世簿不良な疾患である。一般的な生命予後は、狭心症が現れると5年、失神、心不全症状が現れると3年、心不全を発症すると2年といわれており、突然死の危険を伴う疾患である。


下図のように、カテーテルのアプローチ場所は4か所ある。

弁も、バルーン拡張型と自己拡張型がある。
  

経皮的僧帽弁裂開術 : Percutaneous Transvenous Mitral Commissurotomy  PTMC
僧房弁狭窄症の治療として外科的な直視下交連切開術と僧房弁置換術があり、カテーテルによるPTMCがある。適応としては、心臓内に血栓が無いこと、僧房弁逆流が重度でないことが前提となる。


経皮的僧房弁接合不全修復システム:Mitra Clip
器質的あるいは二次性僧房弁閉鎖不全を有する心不全患者のなかで、僧房弁閉鎖不全に対する治療介入が自覚症状の軽減、QOL改善をもたらすと期待されるものの手術リスクが高い患者において、経皮的僧房弁形成術が有効である。我が国でも、経カテーテル的に心房中隔を経由して、僧房弁にデバイスを勧め、僧房弁前尖と後尖をクリッピングするMitraClipが使用可能となった。施術早期の離床が可能であり、施術後30日時点での患者の自覚症状の改善度は開心術に比べ優れているが、長期効果や臨床イベントのデータはない。


http://sk-kumamoto.jp/shi/mr_clip/assets/image/common/flow_step_pict4.jpg

Mitral Clip治療手技の動画:済生会熊本病院


http://www.shin-tokyohospital.or.jp/mitraclip/html/index.html

バルーン肺動脈形成術 : balloon pulmonary angioplasty  BPA
慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は器質化した血栓が肺動脈を慢性的に狭窄・閉塞しているために、マイ動脈圧が上昇し、右心不全を発症する。早期に診断し適切な治療を行わなければ予後不良となる疾患である。
BPAは、頚部からシースを挿入し、カテーテルを入れて閉塞部にまでカテーテルを勧め血管造影、血管内皮超音波(IVUS)、光干渉断層法(OCT)などで肺動脈病変の状態や血管の太さを確認し、バルーンで狭窄部位を拡張する治療法である。
 

心房中隔欠損症:Atrial Septal Defect ASD
心房中隔に穴が開いている状態で100人に1人の割合であり、先天性心疾患の中の7%占めている。胎生期の時にはこの穴を血液が通り
 

動脈管開存 PDA:Patent Ductus Arteriosus
胎生期には肺に血液を流さないで全身に新鮮な血液を流すために動脈管が開存しているが、出生後は、肺が働き始め、動脈管はいらなくなり、生後48時間以内に動脈管は縮んでほとんど血液が流れなくなり、数週間もすると完全に閉じる。生後に動脈管が開いたまま残ってしまう状態がPDAで、2000人に一人の頻度でみられる。治療法としては、開胸手術を行い動脈管を糸で縛って結んで縛る方法と、カテーテル治療法では、コイルやアンプラッツア閉鎖栓を入れて閉鎖する。


参考サイト:
慢性頭痛の診療ガイドライン 2013

慶應義塾大学医学部循環器内科心臓カテーテル室 HP
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