GERDの鑑別診断 島根大学 木下芳一教授
2013-05-27 13:23
川村内科診療所
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2013年5月22日ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル
演題「PPI抵抗性GERDの鑑別診断」
演者:島根大学医学部 内科第二教授 木下芳一先生
内容「胃食道逆流症(GERD)は内視鏡で食道炎が認められた逆流性食道炎と食道にびらんや潰瘍が見当たらない「非びらん性胃食道逆流症NERD:non-erosive reflux disease」に分けられる。GERDの診療ガイドラインのフローチャートに従うと
http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/GERD/gerd_gl.pdf
検査してもしなくてもPPI(プロトン・ポンプ・インヒビター)を投与することになっている。実際、逆流性食道炎に対してPPIは80%、NERDは50%、両者を合わせると薬60%に効果がある。このGERDと鑑別が必要な疾患にZollinger-Ellison症候群、アカラシア、好酸球性食道炎がある。
? Zollinger-Ellison症候群はガストリンが異常高値となる疾患で胃酸の過剰分泌などに伴う変化として、胃粘膜過形成、胃潰瘍、十二指腸球部〜下行脚の広範なびらんや潰瘍などを認め、H2 BlockerやPPIの治療に抵抗性の疾患である。しかも、この疾患の80%が悪性であるため、PPI投与でも、改善ない場合には、この疾患を疑い、早期診断・治療が必要である。注意点としては、病変が小さいため、CTなどの画像診断で40%しか部位を特定できないとの報告もあり、ガストリンが異常高値の場合には、専門家の元での精査・経過観察が必要である。Zollinger-Ellison症候群の原因疾患であるガストリノーマに特異的な検査としてセクレチンを刺激物質として用いる選択的動脈内刺激物質注入試験(selective arterial secretagogue injection test by secretin) SASIテストがある。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suizo/24/2/24_2_184/_pdf
? アカラシアは食道内圧検査を行えば診断は簡単であるが、上部消化管内視鏡検査では30%、食道造影検査でも60%ぐらいの診断率であるので、食道内食物残差を認めたたり、PPI投与でも食道下部の炎症が持続している場合には、専門医を紹介して一度食道内圧を測定する必要がある。
? 好酸球性食道炎は食道粘膜に好酸球が著明に浸潤し、食道の機能障害が生じる疾患で、食道の炎症により、食物の消化・吸収が低下し、長期の経過で食道の狭窄が生じうる疾患である。内視鏡の所見としては、食道に縦方向に走る溝、さざ波のような輪状に見える粘膜変化、粘膜の白斑が見られ、生検で好酸球の浸潤を認め、血液中のIgEの増多や白血球の好酸球の増加がみられる。欧米で0.4〜0.5%に見られると言われているが、日本では0.02%程度と頻度も少なく重症例も少ないようである。治療はステロイドの投与と食物アレルゲンの回避(小児では効果が弱い)。
 
? 「胸やけ:heartburn」を患者さんがどのように表現するかを調べたことがあり、頻度が多い順にいかに並べる。ムカムカ(55%)、胃が重い、「分からない」、胸が熱い、胃が痛い、食欲がない(約10%)、などである。
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