神経障害性痛 日本大学医学部 加藤実教授
2013-07-16 13:47
川村内科診療所
記事に戻るコメント(0)を読む・書く
2013年7月10日 ホテルキャメロットジャパン
演題「神経障害性痛に対する薬物療法を効果的に進めるために―目標設定・薬物療法の終了を目指して―」
演者:日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野診療教授 加藤実先生
内容及び補足(含質疑応答)「1985年の国際疼痛学会が疼痛を『An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage(実際に何らかの組織損傷が起こったとき、または組織損傷を起こす可能性があるとき、あるいはそのような損傷の際に表現される、不快な感覚や不快な情動体験)』と定義した。
2010年に日本神経治療学会が標準的神経治療:慢性疼痛のガイドラインを「神経治療学」2010年27巻4号に掲載した。
日本緩和医学会が癌疼痛の薬物療法に関するガイドライン2010年版を出している。
神経障害性痛の薬物療法ガイドラインがある。
今回の講演で紹介されたのは日本ペイン
診断に対しては、痛みの部位、時期、誘因やきっかけ、痛みの性状、持続痛か間欠痛(突発痛、体動時痛など)、痛みを言葉で表現してもらうこと、痛みの強さの評価、痛み以外の随伴症状について尋ねる。
現在原因によって位以下の三種類に分けられている。

? 傷害受容性疼痛 :骨折やケガで、体の組織が損傷を受けたときに起こる痛み。 痛みを受けとる傷害受容器は、皮膚、次いで内臓に多く分布。 体に異常が発生したときに警告信号を発する役割を担っている (→NSAIDsやオピオイドが有効)
? 神経因性疼痛(神経性疼痛):中枢あるいは末梢神経の神経組織そのものに障害が起きたときに生じる痛み。 ヘルペスウイルスによる帯状疱疹後の神経痛、三叉神経痛、坐骨神経痛 、幻視痛、脊髄損傷後の痛みなどがある。組織障害の警告ではなく、疼痛自体が障害となる。 日常生活ではあまり経験しない痛み方 (ヒリヒリ、チクチク、灼けつくような灼熱感 )。(NSAIDsが無効)
? 心因性疼痛(慢性痛):痛みの原因になる疾患が見つからないもの。過去に何らかの肉体的な外傷や孵化を受けた経験がある上に、心理社会的ストレス、筋肉の過緊張、撃縮が起こった場合に起こる。 神経伝達物質(カテコールアミン、サブスタンスP・・)の異常が契機となり、さらに内分泌系や免疫系も関与して痛みが増強する。
診察所見としては、視診、触診、打診、神経学的所見、皮膚の知覚異常の有無(知覚低下、知覚過敏、異痛症(アロデイニア:allodyniaとは、通常では疼痛をもたらさない微小刺激が、すべて疼痛としてとても痛く認識される感覚異常のこと。)に注意し、皮膚や筋肉の異常(皮膚の色調変化、左右差、患部と健常部での温感差、浮腫の有無、筋肉萎縮)に注意する。
薬物療法としては、NSAIDs、オピオイド、鎮痛補助薬がある。
治療の最終目標は疼痛の消失ではあるが、概して慢性の疼痛に関しては、困難であることが多く、治療の目標を段階的にせってしているのが現状である。

患者さんとこのことについてよく話し合い、段階的に目標を達成していくことを提唱する。現実的には、まず睡眠が快適にできること、次いで痛みが和らいでいることが実感できること、そして痛みの程度が半減することを目標としている。
採血時の末梢神経障害が時に起こるCRPS(Complex Regional Pain Syndrome)も神経障害性痛のひとつである。
採血時に神経を損傷し、その損傷した神経の影響が周りの神経におよび(ワーラー変性)採血で穿刺した場所とは別のところに痛みを感じる病態である。尺側にある尺側正中皮静脈は、その真下に正中神経本幹がそうこうしていることが多く避けるべきであり、手関節部の橈骨茎状突起より中枢側12?以内の前腕にある橈側皮静脈には橈骨神経の皮脂が密に絡まっているので採血においては避けるべき血管である。
日本医科大学において587551回の採血において神経損傷は約4500回に一回、神経障害性痛が生じたのは3万回に一回の割合であった。治療により全例6か月以内に痛みは消失した。(参:日赤の平成19年度の献血時の神経損傷の割合は0.5%、神経障害の割合は0.3%)。
治療としてはアミトリプチン、リリカ、ステロイドの投与が有効と考えられる。
臨床的特徴としては?外傷から予想される程度を超える疼痛、?皮膚の変化、?腫脹、?運動障害があげられる。
最近問題になっている、サーバリックスなどの子宮頸がんワクチン投与後の神経障害もこの概念の病態である。


金沢大学の看護科の研究で「肘窩における皮静脈と皮神経の走行関係」という論文や、聖マリアンナ医科大学の院内緊急対応マニュアルに採血時の末梢神経障害というものがあるので興味がある方は参照されたい。
記事に戻るコメント(0)を読む・書く
検索
キーワード

カテゴリ
その他 (8)
健康川柳 (17)
呼吸器系 (5)
川村内科診療所スタッフブログ (12)
川村所長のプライベート日記 (77)
川村所長の勉強会参加記録 (94)
循環器系 (16)
書籍紹介 (28)
消化器系 (5)
病気の豆知識 (8)
糖尿病系 (12)
脳神経系 (12)
腹凹ウォーキング実践中 (16)
血液系 (1)
診療情報・休診日などのお知らせ (2)
骨格筋 (2)
月別アーカイブ
2014年8月 (21)
2014年7月 (21)
2014年6月 (16)
2014年5月 (11)
2014年4月 (11)
2014年3月 (7)
2014年2月 (9)
2014年1月 (3)
2013年12月 (12)
2013年11月 (7)
2013年10月 (22)
2013年9月 (21)
2013年8月 (6)
2013年7月 (23)
2013年6月 (16)
2013年5月 (9)
2013年4月 (24)
2013年3月 (31)
2013年2月 (34)
2013年1月 (1)

友人に教える
お問い合わせ

ホーム
上へ
川村内科診療所

川村内科診療所
このサイトは携帯電話向けサイトです。
携帯電話でご覧ください。