SLE:全身性エリテマトーデス 佐藤慎二教授
2018-06-25 08:17
川村内科診療所
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2018年6月17日 
演題「指定難病 SLE」
演者:東海大学医学部内科学系リウマチ内科教授 佐藤慎二先生
場所:
内容及び補足「
全身性エリテマトーデスSystemic Lupus Eryhermatousus:SLE
疫学:
2013年にSLEとして難病の申請をしている人が61528人おりこの2倍の人がSELと推定されている。1:10と女性に圧倒的に多く、10代後半から30歳代に好発しますが、近年高齢で発症する人が多く見られている。人種差があり、有色人種に多い。
50以上の遺伝子が関与していると考えられており、一卵性双生児での頻度は25(〜60)%と報告されており(二卵性双生児では10%未満)、遺伝疾患ではないが、SLEの母親からの子供には一般の人の発症頻度よりも高いと考えられている。

誘因・悪化要因:紫外線、風邪などのウイルス感染、怪我、外科手術、妊娠・出産、ある種の薬剤(10%程度)。
診断基準:

上記4項目以上でSLEと分類する。

皮膚病変:80〜90%に見られる。急性型30〜60%、慢性型15〜30%
蝶形紅斑・頬部紅斑:急性期の皮疹 鼻根部から両側頬部にかけて広がる浮腫状の紅斑で日光により誘発される。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E8%BA%AB%E6%80%A7%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%86%E3%83%9E%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%B9
円板状皮疹:慢性期の皮疹。紅斑で始まり、硬結、角化、瘢痕、萎縮、色素沈着に陥る。頭皮にできると脱毛をきたす。

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q05.html
脱毛:全体、特に前頭部がびまん性に抜けてくる。毛髪はもろく通夜がなくなってくる。一般に治療に反応して生えてくるが、円盤状皮疹が頭皮にできた部分では、不可逆的な脱毛となる。
口腔内潰瘍:口腔内や鼻咽頭内に紅斑および無痛性の浅い潰瘍が出現。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/10/102_2591/_pdf


凍瘡様皮疹:慢性型皮疹。指背面、手掌足底外側、耳介などに好発し、寒冷により増悪する。夏にシモヤケが見られたらSLEを疑う。血管炎合併例に多い。

皮膚所見の発現頻度は以下のような報告がある。


病理所見:多彩な皮膚症状を対する、ため皮疹の時期により異なるが、共通してみられる所見として、液状変性、血管周囲や付属器周囲への単核球浸潤、ムチン沈着などがある。慢性病変では、角栓形成なども見られる。健常皮膚でも基底膜にIgG、IgM、C3などの沈着を蛍光抗体直説法で認める(ループスバンド)。
ループスバンドテスト:患者非露光部の健常皮膚を蛍光抗体直説法で観察するとIgG(緑色蛍光)が表皮基底膜に線状に沈着している。


骨格筋系病変:
関節炎:60-70%
急〜亜急性の移動背板関節炎:自覚症状が強く、一過性、非びらん性で骨破壊がなく、治療に反応する。
Jaccord様関節症:整復可能な手指関節変形で関節包・靭帯・腱の変形で、他動的に動かしてもとの位置関係に直せる。

肺病変:
胸膜炎(胸水貯留):肺病変でもっとも頻度が多い
ループス肺臓炎:発熱、呼吸困難、乾燥性咳嗽、びまん性網状影
間質性肺炎
肺胞出血
肺高血圧症
肺梗塞
縮小肺

心血管病変:
心外膜炎(心嚢液貯留)
心筋炎:抗U1-RNP抗体陽性例での出現率が高い
冠動脈病変
弁膜症:Libman-Sacks 免疫複合体の関与により弁膜付着部で心筋壁に移行する部位に疣贅を生ずる。僧房弁が最も多いが、ときに大動脈弁、三尖弁も侵される。数mm以下の疣贅が複数個集簇して発生する。
ECG異常
心筋梗塞
血栓性静脈炎
抗リン脂質抗体症候群

ループス腎炎
約50%に出現。30%が腎不全に移行する。
紫色に染まる顆粒成分を含む顆粒円柱、ロウ様円柱などのいろいろな所見があるテレスコープ沈渣が見られ、糸球体腎炎の像が多い。以下の6型に分類される。

?:微小メサンギウムループス腎炎
組織はほぼ正常であるが、蛍光抗体法でメサンギウムに免疫沈着物が認められる。

?:メサンギウム増殖性ループス腎炎
メサンギウムに限局した細胞増多もしくはメサンギウム基質の拡大が認められ、メサンギ ウムに免疫沈着物がある。

?:巣状ループス腎炎
全糸球体の50%未満に病変が存在

?:びまん性ループス腎炎
全糸球体の50%以上に病変が存在
病変を有する糸球体の50%以上が分節性秒異変を示すびまん性分節性(?-S)ループス腎炎と、病変を有する糸球体の50%以上が全節性病変を示すびまん性全節性(?-G)ループス腎炎に分けられる。分節性とは糸球体病変が糸球体係蹄の半分未満を侵すものと定義される。

?:膜性ループス腎炎
上皮下免疫沈着物を認める。

?:進行した硬化性ループス腎炎
90%以上の糸球体が全節性硬化を示し、すでに活動性はない。

CNSループス
20〜50%に見られる。
器質性の神経症状と機能性の精神症状に分類できる。
器質性:無菌性髄膜炎、脳血管障害、脱髄性症候群、頭痛、不随運動、脊椎症、痙攣など
機能性:急性混迷、不安神経症、認知障害、感情障害、症候性精神病など
また、末梢神経系として急性全身性脱髄性多発根症がみられる。

SLE患者の主な臓器障害とその頻度

https://www.healthgsk.jp/disease-info/sle/disease-activity.html#

診断の手順

血液学的異常:溶血性貧血、白血球数の減少、リンパ球数の減少、血小板数の減少、貧血、ESR上昇、補体の低下、免疫グロブリン高値
自己抗体:dsDNA抗体(ループス腎炎)、抗ヒストン抗体(ループス腎炎)、抗Sm抗体(疾患活動期に相関、神経症状、ループス腎炎)、抗SS-A抗体(乾燥症状、高γグロブリン血症)、抗SS-B抗体、抗U1RNP抗体(レイノー現象、心筋炎、肺高血圧症)、抗PCNA抗体(血小板減少)、抗リボソームP抗体(CNSループス)、抗リン脂質抗体、LE細胞(拡散に対する抗体が壊れた細胞と反応し、それに補体が結合したLE小体を好中球が貪食したもの)


疾患の活動性:
Safety of Estrogens in Lupus Erythematosus National Assessment SLE Diesease Activity Indes : SELENA ALEDAI 2005年ジョンズ・ホプキンス大学のグループにより提唱されたSLEの疾患活動性の評価方法。8の臓器系に関する臨床所見24項目を点数化し、10日以内に認められた所見項目により合計0〜105のスコアが算出される。

NEJM 353:2550-2558, 2005

治療:ステロイド、免疫抑制剤、血液浄化療法、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)
予後:10年生存率80〜90%
死因:感染症、腎不全

参考文献:
全身性自己免疫疾患における難病清病帯の診療ガイドライン
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